表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
へんな子たち  作者: 楠羽毛
鏡写し
11/103

鏡写し(5月26日 塚本舞) ⑥

 予鈴よれいが鳴る──、


「ねえ、」

 振り返る。いやな匂いのする汗で、顔がべとべとする。脇汗わきあせも。

 ペンケースを握りしめた左拳が、開けない。

「……うっかり、割っちゃったみたい」

 ぎりりと、歯を噛み締めながら、いう。いいながら、長く細い息をつく。肺の奥から。

「センセイに、言っといてくれない? ごめんねえ」

「いいよぉ。片付けとく」

 少女は、にこにこと笑って、うなずいた。

「けが、ない? なんか、ごめんね」

「だいじょうぶ」

「あたしが、割ったことにしとくからさあ。……授業、いきなよ。ね」

「ありがと」

 まだ、指が開かない。

 ぎりりと、もう一度、歯をかみしめて──、

 まいは、トイレを出ていった。



 それから、少女が、床から一番大きな破片をひろって、

「ごめんね。……いやあ、無理だったわ」

 そう、つぶやくと、


 鏡の破片から、ぽたりと、涙のしずくが落ちた。


(鏡写し 了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ