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ネトゲの嫁は通い妻に進化(?)した

ネトゲの"嫁"で、なんで通い"妻"なんだと思ったアナタの感性は正しい。

そもそも「嫁」というのは、息子の妻という意味だ。

だから言葉を正しく認識している人にとっては違和感があるだろう。


しかし、ネトゲの奥さんは嫁なのである。

これは昨今のオタク文化において、自分の推しキャラを嫁というのに似た感覚かもしれない。

細かいことはわからないが、ともかくそういうものだと思って欲しい。


それで本題だが、男だと思っていたネトゲの嫁が、実は女だった。

そして、現在通い妻状態になっている。

一体、何故こんなことになったのか……



※この作品は『ネトゲの嫁とリアルで会うことになった』の続編にあたる作品になります。

詳しくはページ下のリンクをご確認ください。

 


 ピーンポーン♪



(……またか)



 俺はインターホンの受話器を取る。



「はい」


魍魎(もうりょう)の、武丸だよぅ……』



(やはりか)



 玄関に向かい、ドアを開けると、そこには煌びやかな星の髪飾りをを沢山付けた少女――春成麗(はるなりうらら)が立っていた。



「チッス先輩♪ また来ちゃいました!」



 来ちゃった♪ みたいな感じで人差し指と小指を立ててポージングする白ギャル。

 彼女はネトゲ(Life Online)における、俺の嫁である。

 ついこの前、結婚4年目にして初めてリアルで会うことになったのだが、それ以来ウチに入り浸るようになっていた。



「……もうそれはいいが、何故いきなり来るんだ。せめて連絡くらい入れてくれ。入れ違いになったら面倒だろ?」



 いわゆるサプライズ的なヤツらしいのだが、俺だってバイト等で不在の場合がある。



「大丈夫っス! 夫のスケジュールくらい妻として把握してるっスから!」



 確かに、基本的に家にいるときはLO(Life Online)に接続しているため、いない時間帯については把握されているかもしれない。



「でも、急にバイトが入ることだってあるからな? もし俺がいなかったら、どうするつもりだったんだ?」


「それは……、ネカフェとか?」


「そんなものは奥多摩にない」


「じゃあ、コンビニとか……」


「麗のイメージしているコンビニと、奥多摩のコンビニはかなり違っていると思うぞ。何せセブンもなければ、ファミマもローソンもミニストップもない。ついでに21時半に閉店する」



 厳密にはセブンはあるのだが、奥多摩駅からはかなり離れた位置にある。



「なん……、だと……。ここは本当に東京っスか!?」


「残念ながら、東京だ」



 そんじょそこらの地方よりもよっぽど田舎だが、正真正銘東京都である。



「じゃあ……、ドアの前に座ってスマホ弄ってるっス」


「それはやめてくれ……」



 我が家は何の変哲もない民家だ。

 2年程前に、祖父と祖母が亡くなって空き家になったところを、俺が引き継ぐカタチで住むことになった。

 ご近所付き合いはないが、近所の人はウチの事情を知っているため、そんなところを目撃されると非常にマズイことになる。

 田舎は人が少ないが、噂に関してはすぐに広まるのだ。

 そして、あらぬ噂が広まるとバイト先の店長の耳に入る可能性があり、そうなると俺の立場が危うくなる。



「……これ、渡しておく」


「……え? これ、は?」


「合鍵だ。俺がいなくても自由に入っていいから、ウチの前で待つのはやめてくれ」



 俺がそう言うと、麗はしばし固まっていた。

 しかし数秒後、ポロポロと涙を流し始める。



「嬉しい……」


「っ!」



 くしゃりと歪む表情に、俺の方がドキリとさせられる。



(おい、っスはどうした! キャラがブレてるぞ! いきなり素に戻るな! ……どんな反応すればいいかわからなくなるだろ!?)



「と、とりあえず中入れ!」



 こんな状況を誰かに目撃されたら非常にマズイ。

 家の中に招き入れると、麗は振り返って俺の胸に飛び込んできた。



「ぐすっ……、先輩に、泣かされたっス」


「す、すまん……」



 当然泣かせるつもりなどなかったが、謝るしかない。



「この鍵、どうしたんスか?」


「え~っと……、こんなこともあろうかと、作っておいた」


「じゃあ、なんで、俺がいなかったらどうするなんて聞いたんスか」


「それは、いきなり渡すのは悔しいというか……。あれだ、サプライズというヤツだ」



 俺も最初は麗のサプライズにドキリとさせられたのだ。

 このくらいの仕返しは許されるだろう。



「ぐすっ……、やられたっス……」



 麗は鼻をすすりながらも、笑顔を向ける。

 可愛いが……メイクが乱れて酷い顔になっていた。



「やられたのは、俺の方だよ。これ、洗って落ちるよな?」



 麗が顔を押し付けていた箇所が、メイクやらなにやらで酷いことになっている。



「あ、すいません……っス。大丈夫っス。水で落ちるんで。多分」



 まあ、メイクなのだから落ちないことはないだろう。

 とりあえず、シャツは洗濯籠に放り込んでおく。



「きゃ♪」


「きゃ、ってこの前も見ただろう」



 何せ麗は、既に何度か家に泊まっている。

 裸くらい何度も見られた。


 ……無論、シャワーを覗かれただけで、やましいことはしていない。



「それで、今日もLOするのか?」



 替えのシャツに着替えながら、今日の予定を確認する。



「LOももちろんするっスよ。でも、今日は別のゲームも持ってきたっス」



 麗は鏡の前で簡単にメイクを整えている。

 そんなにベタベタにメイクをしている様子はないが、おめめパッチリ的なメイクはしているようだ。

 ササっとメイクを整えた麗は、ポーチから一枚のCDケースを取り出した。



「こ、これは……」


「はい!GUILTY(ギルティ) GEAR(ギア) X(ゼクス)っス!」



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― 新着の感想 ―
[一言] 連載決定!! 待ってました!! そして今気付きました!!(ぇ 奥多摩……ウチの作品の1つの舞台って設定だから、いずれは現地に行きたいものです(ぇ
[良い点] コンビニ閉まるとこありますね! 昔、夜閉まるカラオケがあるのにも衝撃受けましたけど。 バイト終わりとかに、カラオケでオールとかたまにあったので。 急に素に戻るのかわいい! [一言] ギル…
[一言] こんな嫁が欲しいだけの人生だった( ˘ω˘ )
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