第六十一話:「思い立ち」
白い空間。
ここには何もなく、
ただ広い空間が広がっている。
「んっ」
目を開くと、
目の前には懐かしい光景が広がっていた。
「やぁ、随分久しぶりだねぇ」
目の前には、
真っ白な光に包まれた何者がいた。
「どうだい?
少しは僕の事を信用できるようにはなったかい?」
何者かは、
ある方向を見てそう言った。
「そんな時が来ると思うか……フィリックス」
そう言ったのは、
腕を組む白髪の青年。
「まぁまぁ、そう言うなよ。
二年前だって助けてあげたじゃないか……ルイネス君」
フィリックスと呼ばれた何者は、
青年をルイネスと呼んだ。
フィリックスの目の前にいるのは、
ルイネス・アルストレアだった。
「僕を名前で呼ぶと言うことは、
どうやら記憶が戻ったようだね」
そう言うと、
辺りの雰囲気が少し重くなった。
「ああ、おかげさまでな」
「おかげさま?何のことだい?」
「お前の信者に襲われたことで記憶を戻すことが出来たよ」
俺がそう言うと、
「何のことだか?
ボクは何にもしてないけどねぇ」
とぼけたように、
そう言った。
「とぼけるな。
奴は聖典を持っていた。
つまり、お前の信者だろ?」
「前にも言ったけど、
僕は君が思っているような存在じゃないんだよ」
「さぁ、どうだか」
こいつの言うことはまるで信じられない。
あの時も、こいつのおかげで……いや、やめよう。
「やめないでいいって。ほら言ってごらん?
僕のおかげで君は何を得た?」
こいつ、人の頭の中を勝手に覗きやがって……。
まぁいい。
そんな事よりも俺は早く目覚めたい。
さっさと呼んだ理由を言って欲しいんだが……。
「そんなつれないことを言うなよ。
僕と君の中だろ?」
お前との間にそんな関係があったとは驚きだ。
「全く、君はつれないなぁ」
早く本題に入れよ。
「……ふん。良いだろう。いつか痛い目見せてやる」
何もないんだな?
それじゃあ、早く俺を戻せ!
「分かった。分かりましたよ。
今回君を呼んだのは、頼み事があったからなんだ」
頼み事?断る。
「まぁそう言うなって。
これは君にとってもいい話なんだよ?」
……?どういうことだ?
「ふん。教えな~い」
……は?
「そんな口の利き方じゃ教えないよ」
相変わらず気に食わない奴だ。
子供の頃の俺は良く苛つかなかったな。
「そうだね。子供の頃の君はとても素直で良かったよ」
それは残念だったな。
俺も成長したんだよ。
「そうだね。悪い方向に成長してる」
ふん。
勝手に言ってろ。
「前にも言ったと思うが、
僕にはある程度先の未来が見えるんだよ」
未来?
俺の魔眼と似たような能力か?
「君の魔眼なんかとは比べものにもならないよ。
僕には、君のこの先の姿が見えている」
ならいってみろよ。
俺は今後どうなってるんだ。
「それは秘密だよ。
未来を知って生きるのはつまらないだろう?」
胡散臭い奴だ。
それじゃあ結局お前を信じることも出来ないし、
お前の頼みを聞くことも出来ない。
「それは困るな……それじゃあ、一つだけ教えてあげるよ」
フィリックスはそう言って、
俺の方へ手を伸ばした。
すると、
「うっ、」
俺の右目を激しい痛みが襲った。
「ほら、手で押さえてちゃ見えないだろう?」
こいつ何言って……。
「良いから試しに手を放してみなよ」
くすくすと笑いながらそう言うフィリックスに内心イラッとしたが、
俺は言われたとおり手を放した。
「何も見えな……」
俺の目に入ってきたのは、
どこかは分からないが、
どこかの家の扉を叩く、
金髪と、ボルドー色の髪色をした二人の女の子の姿だった。
「見えたかい?」
これは、誰……っ!
「どうやら分かったようだね」
フィリックスはそう言って、
地面に座った。
「じゃあこうしよう。
僕の頼み事は今見た未来が実現したら聞いて貰うことにする。
それでどうだい?」
……今のは本当に未来の事なんだよな。
「ああ、そうだ」
俺はフィリックスの発言を聞いて少しほっとした。
今さっき見た二人。
あれは恐らく……。
「それじゃあ答えを聞こうか」
……良いだろう。
今回だけ聞いてやる。
頼み事って……何だ?
「やっと聞く気になったか。
なぁに、簡単なことだよ」
フィリックスはそう言って指を立てた。
「三年後にアノスに向かって貰いたい」
……アノスって言うと、
アスト王国の王都の名前だよな……?
「そう。アスト王国王都アノス」
そこに行って何をしろと?
お前のことだ。
行くだけじゃないんだろ?
「まあね。だけど、それはまた今度言うことにするよ」
また今度って、
どういう……。
俺がそう言った瞬間、
俺が立っている場所に亀裂が入り始めた。
「そろそろ時間なんだ。
だから、また今度」
そういうことか。
「君が頼み事を聞いてくれそうで助かったよ」
不本意だがな。
しかし、
俺はここでの記憶はお前の助けがないと忘れてしまうから、
今ここでの事も忘れてしまうぞ?
「そうだね……それじゃあ、忘れないようにしよう」
っ?どうやって?
「実はね。
ここでの記憶を忘れないようにする魔道具があるんだ。
君にはそれを取ってきて貰う。
前のように、一時的に残してね」
なるほどな。
「その道具は、セフィス神聖王国のフィアロ遺跡にあるからよろしく頼むよ」
よりによって……。
まぁ、気が向いたら取りに行くよ。
「ああ、なるべく早く頼むよ。
僕の力も永遠ではないんだ」
はいはい。
俺は適当に返事をした。
すると、
亀裂が完全に割れ、俺はそのまま落ちた。
落ちると、俺の意識は、徐々に薄れていった。
――ー
目が覚めると、
知らない天井があった。
「何か……フィアロ?」
俺はよく分からない言葉が頭から離れないでいた。
「んっ?」
左足に重みを感じ、
身体を起こしてみると、
白髪の女性が眠っていた。
「……」
俺は彼女の頭を撫でた。
すると、
起こしてしまったのか、
彼女は目を覚ました。
「っ!良かった。また離ればなれになるかと……」
彼女は大粒の涙を流した。
懐かしい光景。
今まで忘れていた……幼い頃の記憶。
俺はいつの間にか彼女を抱いていた。
「えっ?ちょ……」
俺はこの十数年ぶりに会う家族に、
感傷深くなり、
今にも泣きそうだった。
「おはよう。久しぶりだね……アスフィ」
俺は彼女の名前を呼んだ。
名前を呼ばれた彼女は、
目を見開いていた。
「る、ルイ」
「うん」
「思い出したの……?」
「ああ、全部思い出したよ」
俺がそう言うと、
彼女は、
「良かった……本当に良かった」
彼女は涙を流しながら俺を抱きしめる手に力が入った。
「ボク本当に悲しかったんだよ。
久しぶりに会ったのにルイは……ボクの事忘れて」
「……ごめん」
「ルイが家からいなくなって、
帰ってくるの待っていたのに、
意味の分からない現象に巻き込まれて、
死にかけて、襲われて……。
やっと再開できたのに、
ボクのこと知らない他人みたいに接してくるし」
「……」
彼女が大変だったことは、
旅をしている時に耳にした。
そんな時に一緒にいられなかった。
彼女は一人で大変だった。
そんな家族を、俺は忘れていた……。
「ごめん。アスフィを一人にして……一緒にいるって約束してたのに」
幼い頃の約束。
俺はそれを守れなかった。
「もう……ボクを……一人にしないで……」
彼女はそう言って泣いた。
俺の胸の中で泣き続けた。
彼女の苦労。
今までの彼女の苦難を見に刻むため、
俺は彼女が泣き止むまで彼女を受け入れた……。
少しすると、彼女は落ち着きを取り戻した。すると、急に恥ずかしくなったのか、
彼女はベッドに敷かれた布で自分の顔を隠した。
「……」
「……」
なんとも言えない空気が流れ、
お互い言葉を交わせないでいた。
そんな時。
「ルイネス様入りますよ」
女性の声がすると、
部屋の扉が開いた。
扉の先には、
レイナ・エスロア・アストとヒュースの姿があった。
「身体の具合はどうですか……あらっ」
彼女は自信の腹心であるアスフィが泣かされたと思ったのか、
作り笑顔を見せながらこちらに近づいてくる。
「あら、あら、私の可愛い可愛いフィードを泣かせるとは、
どういうつもりですか?ルイネス様?」
笑顔の顔からは考えられない冷たい声でそう言ってくる彼女を見て、
俺は背筋が凍った。
「ち、違うよレイナ様!これは」
「アスフィ、今は彼に聞いているのですよ?
一度彼にはしっかりと言わなければ!」
「ま、まって!」
彼女らの会話を聞いていると、
シエラ村での出来事が鮮明に頭に思い起こされる。
「それは、すみませんでした」
「謝って許される問題ではありません。
女の子を泣かせる行為は紳士の風上にもおけません!」
彼女はそう言って、
俺に指をさしながら顔を強く見た。
「そうでしたね。
立派になっても、
昔と変わらないですね。姉さん」
俺がそう言うと、
彼女は数秒間停止した。
「ルイ……君?あれ?貴方忘れてたんじゃ……」
「先程記憶が戻りました。
お久しぶりです。レイナ姉さん」
俺がそう言うと、
彼女は、
「よかった!!」
と言いながら俺を強く抱きしめた。
「っ!!」
「ああ!!」
アスフィの声を横目に、
俺の顔は、彼女の、
十年前にはなかった謎の膨らみの感触に包み込まれた。
「良かった!なんで忘れてたの!」
「お控えください!レイナ様!」
俺を抱きながらぴょんぴょんと跳ねる彼女に、
ヒュースは落ち着くように声を掛けた。
彼女はヒュースに抑えられる形でようやく止まった。
「ふぅ、少々取り乱しました。
お久しぶりですね。ルイ君」
彼女は何事もなかったかのように、
いつもの様子でそう言った。
「……ルイの変態……」
彼女はジトッと俺を睨み付けながらそう言った。
俺は簡単に記憶をなくした経緯を話した。
彼女達は静かに俺の話を聞いた。
「なるほど、そんな事があったのですか。
魔界提督アルレシア……かの伝説の御仁が、
どうして貴方を……」
「分かりません。
彼は俺が適性者だと言って襲ってきました」
姉さんは、
適性者と呟きながら考えていた。
「その適性者とは何か分かりませんが、
とにかく、貴方が無事に記憶を取り戻してくれて安心しました。
ね?アスフィ?」
彼女はニヤッとしながらアスフィにそう言った。
「そうだね。本当によかったよ!」
アスフィは昔のように元気にそう言った。
「はぁ~」
姉さんとヒュースは同時にため息をついた。
「全く貴方は……」
「全くお前は……」
「え?なんだよ二人して!」
アスフィはいじられたのを感じ取ったのか、
頬を膨らましながらそう言った。
その後、しばらく談笑した後、
姉さんとヒュースの二人は部屋を後にした。
「それじゃあ、俺も部屋に戻るよ」
特に大きなケガをしたわけではないから、
これ以上ここで休む必要は無いだろう。
「大丈夫?一人で戻れる?」
アスフィは心配そうな顔で俺を見つめながらそう言った。
「大丈夫だよ。ケガをしてるわけじゃ……っ!?」
俺はベッドから起ち上がろうとすると、
足に力が入らず、前に倒れかけた。
「危ない!」
アスフィは、
倒れる俺を抱きかかえた。
「ほら、まだ休んでなきゃだめだよ」
もう一度ベッドに入った。
「それじゃあ、また明日も来るから、
抜け出しちゃダメだよ!」
アスフィは念を押しながら、
部屋を後にした。
「しっかりしたな……」
幼い頃と今とで、
アスフィの成長がすごい。
昔はずっと後ろについてくるだけだった彼女が、
今は自分から動けるようになっている。
「嬉しいような……寂しいような……」
俺はそんな事を思いつつ、
ベッドから起ち上がった。
「っと」
俺はベッドの脇に掛けられていた杖を手に取り、
杖を支えにしながら部屋から出た。
部屋からで倒れは真っ直ぐ量の自分の部屋に向かった。
自室に戻り、
机の引き出しを開けた。
「やっと読む決心がついたよ……フィラ」
俺は手紙を手に取り、
封を開いた。
『ルイ君へ、
まずは日頃から私と一緒にいてくれてありがとう。
貴方といると、私はとっても安心するの。
これからも、一緒にいてくれると嬉しいです。
このお手紙を書いているのは、実は一つ隠し事をしていたからです。
それは、
私が災害に巻き込まれたのは、
実は、ルイ君に会いに行っていたからなんです。
第一王女様の勧めでルイ君と繋がりを作りに。
結果として会うことは出来なかったけど、
あの森で出会うことが出来た。
出会うことが出来て、ルイ君に好きだと言われたとき、
私は運命だと思いました。
貴方とずっと一緒にいたい、けど、もしかしたらこの先、
離ればなれになってしまうかも知れません。
ジェドさんの件や、ナタリーちゃんの件でそれを強く感じました。
だから、
もし私がルイ君と離ればなれになってしまったら、
新しい出会いを探してください。
ルイ君は、私が独り占めするにはあまりにもすごい人です。
貴方は優しいから、きっと考えすぎてしまうと思います。
ですが、
この先、貴方のことが好きな人が必ず現れます。
その時はその人を見てあげてください。
貴方はこれまで色々なことで沢山傷つきました。
だから、
貴方は必ず幸せになってください。
色々言ってきましたが、
一緒にいられる間は私を好きでいてくれると嬉しいです。
最後に、
私の足の上にいたいからって、
酔いを治さないのはダメだよ?』
俺は手紙を読みながらいつの間にか涙を流していた。
彼女の気持ちと、
あの時、彼女が言っていたこと。
それが全て自分の中に入ってくる。
「……いく、か……」
俺は寮をでた。
町に出て、ある場所に立ち寄り、
町外れにあるある場所まで歩いた。
「ここか……」
俺が向かった場所は、
この町にある集合墓地。
ここは、教会の人が管理している場所。
「はぁはぁ……あった」
俺の視線の先には、
【フィラ・ニードル】と書かれた墓石があった。
俺はその目の前に座った。
「……やぁ、久しぶりだね。フィラ。
手紙ようやく読んだよ。
ごめん。こんなに遅くなって……。
君がこんなことを考えていたとは思いもしなかったよ……。
船のあれバレてたんだね。
……フィラ。俺記憶を取り戻すことが出来たんだ。
今なら、君が聞きたがってたことにも答えられるのに……。
目から涙が流れた。
彼女との思い出がどんどん呼び起こされてきて、
彼女を無くしたときの喪失感が再び襲ってきた。
「……でも、
これ以上は君の期待を裏切ることになるよな。
俺も頑張って乗り越えるよ。
君が思っててくれたことを裏切らないように。
だから、
俺を見ていてくれ」
俺は起ち上がった。
そして、立ち寄った店で買った花を手向けた。
「また来るよ」
俺は墓地を後にした。
「ふぅ……」
一度深呼吸をした。
俺は彼女のことを忘れることは出来ない。
だけど、
それをずっと抱え込むのは成長することは出来ない。
だから、俺は必ず乗り越える。
空の向こうで見守ってくれる彼女が失望しないように。
俺は改めてこれからを生きていこうと、
心に決めた。
―――
寮に戻る途中、
町のある店の前で、
見知った白髪の女性を見かけた。
「これ……」
「何をお探しですかお嬢さん?」
「きゃ!」
俺は、何かを手に取る彼女に声を掛けた。
「えっ!なんでここにいるのさ!ルイ!」
アスフィはこっちを向いて、
驚いた様子だった。
すると、
何を手に持っていたのか分かった。
「えっと、アスフィさん?」
「っ?何かな、ルイネスさん?」
「……言いにくいのですが、その手に持っている物……」
「持っている物……っ!」
自分が何を持っているのか思い出して、
さっと後ろに隠した。
彼女が持っていたのは、
ピンク色の下着のような物だった。
「こ、これは違うくて……」
彼女は顔を真っ赤にして慌てていた。
下着を買うくらい普通だとは思うが、
町に着いたとき、フィラとナタリーも仲良く買ってたし。
「うっ……」
彼女は相当恥ずかしいようだ。
そっか、
普通の女の子はこういうことで恥ずかしいのか……。
「そんな事よりも!」
彼女は話を変えようとしていた。
「ルイは何でこんな所にいるのかな?」
彼女はニコッとした顔でそう言った。
それとは裏腹に、
その声はまるで笑っていなかった。
この起こり方は女性特有の魔術か何かなのだろうか。
幼い頃に、母さんが父さんを起こっているときもこんな感じだったし、
さっき姉さんが来たときもこんな感じだった。
そういえば、フィラに一度怒られたことがあったけど、
彼女もこんな感じだったな……。
正直、
この怒り方は怖い。
「身体は、大丈夫なの……?」
彼女はさっきまでとは別人のように、
心配そうな顔をしていた。
「ごめん。心配させて。
もう大丈夫みたいだから安心して」
「……それなら、まぁ」
ちょっと不服そうに呟いた彼女を見ると、
昔と同じでちょっと安心する。
んー、どうするか。
彼女の機嫌を損ねてしまった。
久しぶりに再会したのに……。
どうにか期限を戻せないだろうか……。
「んー……」
「ねえ、ルイ」
俺が考えていると、
彼女は頬を少し赤らめながらこちらを見ていた。
「この後さ、時間ある?」
「この後?」
この後は寮に戻るだけだから何もないか。
「あるよ。いっぱい」
「それ、じゃあさ。
ルイの部屋お邪魔して……いい?」
「部屋に?」
「うん。久しぶりに再会?したからさ、
一緒に話したいんだよね」
なるほど、
確かに俺と別れてからのアスフィのことを何も知らないし、
良い機会かも知れないな。
「うんいいよ」
「ホント!?やった!」
彼女は嬉しそうに、
その場で、
ぴょんぴょんと小さく跳ねた。
「俺は今から寮に戻るけど、一緒に行く?」
俺がそう言うと、
彼女は何かを思い出したように、
「ぼ、ボク今レイナ様を待ってるから、
先に行っててよ。すぐ行くから」
姉さん達と一緒だったのか。
なら、
あとで来てもうか。
「分かった。それじゃあまた後で」
「うん、また」
俺はアスフィと別れて、
寮に戻った。
「ただいま」
俺は自分の部屋に帰った。
すると、
『お帰り!』
「ぐっ!!」
入って早々、
腹部に突撃してくる生物がいた。
「いってて、こらルーシィ!」
『身体大丈夫?』
ルーシィは心配そうに、
俺を見ながらそう言った。
そうか、
ルーシィが俺たちをここまで運んでくれたんだっけ。
この子にも、心配を掛けたな……。
「……ああ、大丈夫だよ」
そう言って、ルーシィの頭を撫でてやると、
尻尾を横に振った。可愛い奴め。
その後、
外も暗くなり、
適当に時間を潰していると、
部屋の扉をノックする音がした。
「る、ルイ。入って良い?」
「いいよ、今開ける」
扉を開けると、
「こんばんは」
そこには、
何か瓶を持ったアスフィが立っていた。
彼女は、普段とは違う部屋着のような物を見に纏っていた。
彼女を部屋に向かい入れた。
「それ、お酒?」
「うん。せっかく大人になったんだし、
家族の再会記念って事でね!」
「……そうだな」
酒は冒険者をやってるときにも結構飲んだことがある。
酔いも解毒魔術で醒ますことが出来るしたまには良いか。
彼女は持ってきた瓶の蓋を開けた。
「あ、ルイ」
「ん?」
「飲む物ってある?」
なるほど、
酒を持ってきたけど、
飲む器を忘れたのか。
「ちょっと待ってて」
俺は魔術で器を作った。
「わっ!すごいね」
「ん?何が?」
「こんな精密に作るのって難しいんだよ」
「そう……なの?」
精密って言っても、
魔術を使うときも色々な形に作るし、
これくらい誰でも出来ると思うけど。
「これって、どうやって飲むんだろう」
俺が考えていると、
彼女は酒を見ながらそう呟いた。
「ちょっと貸して」
「うん!」
俺は瓶を受け取り、
匂いを嗅いだ。
この匂いの酒は、
「この酒は水で割って飲むんだよ」
「水で……?」
俺はそう言って、
器に酒をついで、そこに水を入れた。
「ほら飲んでみな」
俺はそう言って、
酒が入った器を渡した。
彼女はそれを受け取ると、
グイッと飲んだ。
「わっ、美味しい!」
この酒は彼女の口に合ったようだ。
俺も自分の分を入れて、
飲み始めた。
その後、
俺たちは簡単に雑談をした。
最近にあったこととか、
姉さんの異性の好みの話とか……。
「ねぇ~ルイ~」
かなり酔いが回ったようで、
机に顔を付けながら、
甘い声を出していた。
それを見る俺も、
かなり酒が回ってきていた。
「ルイはさぁ~。
あの出来事の後、どうやって過ごしてたの~?」
「気になる?」
「うん!すっごく!」
彼女は顔を上げて力強くそう言った。
「それじゃあ、教えてあげるよ」
「やったぁ!」
俺はアルレシア大陸に飛ばされてからの事を話し始めた。
荒れの森や、リングルであったことや。
スィーヴズの件。
そして、
セフィス神聖王国での事や、
彼女を失ってからの事を……。
第6章:再会編【完】→第7章:追憶編




