第四話:「無詠唱」
うっ…‥なんだ?眩しい。
目覚めると強い光が目に差し込んできた。
何をしてたんだっけ…‥。
俺は確か…‥自分の部屋で教本を読んでて、書いてあった魔術を使えるかどうか試してたんだ。一度目は成功したけど、二度目の魔術を使おうと思って詠唱したときに倒れたのか。
体を起こして周りを確認しようとすると横の方から声が聞こえた。
「ルイ大丈夫?部屋に行ったら大汗かいて倒れていたけど?」
声の方に振り返ると、そこには、心配そうに俺を見つめるセリスと桶のような物を持っている二ーナの姿があった。
「いえ、大丈夫です。部屋にいたらなんだか急に眠くなってきて」
「だったらちゃんと、ベットにはいらないとだめよ!心配するんだから」
「はい…‥分かりました」
「うん、お願いね。私ったらてっきり私の教えた治癒魔術を練習してて魔力切れを起こしたのかと思ったわ。魔力切れを起こすと気を失ってしまうから治癒魔術の練習もほどほどにね!」
「は、はい!分かりました」
この反応を見るからに魔力切れを起こすのは危ないのかどうか判断しにくいがおそらくは危険なことなのだろう。しかし、自分の魔力量があんなに少ないとは思わなかったな…‥とりあえず、一発は撃てるから『 水弾 』ちゃんと打てるように練習しようかな。
俺は、そう思い次の日から魔術の練習を始めた。一度『 水弾 』を発動した後俺は異変に気がついた.
ん?なんだか昨日と違うぞ…‥昨日は、一発『 水弾 』を使った後は疲れた感覚があったけど、今日は、疲れがあまりない感じない。
「まあいいか、まだ使えるなら練習しよう」
そう考え、もう一度詠唱を開始した。
今回は念のために、ベットの上で窓の外に向けてやる。もし、魔力切れを起こしてもベットで倒れれば心配されないだろう。
「”偉大なる水の王子よ 大いなる恵みをこの身に与え 堂々たる存在に力を見せつけろ さすれば この身を持って仇敵に力を示さん”
『 水弾 』」
昨日はこれで意識を失ったよな…‥って、あれ?今日は意識が遠くならないぞ?どういうことだ…‥試しにもう一度やってみるか。
再び詠唱を唱え、魔力が足から腕へと吸い上げられる感覚がしたとき、意識が遠くなるのを感じた。
昨日と同じ感覚だ。やっぱり、昨日より一発分増えてる、消費した魔力分次の日には増えているのか?
そう考えながら俺の意識は消えていった。
ーーー
半年後
魔術の練習を始めてから半年が経った。今現在俺は、神聖魔術以外の初級魔術を仕えるようになった。神聖魔術は詠唱が載っておらず、習得することができなかった。その他の初級魔術の中でも特に、『水弾』は、多く回数を重ねたこともあって最初に使ったときに比べて、段違いの威力を出せるようになった。あのとき、俺が作った『水弾』がちゃんと飛んでいかなかったのは、どうやら詠唱中に射程範囲を調整することに魔力を通していなかったから飛んでいかなかったらしい。
それと、あの日、気絶する瞬間に俺が考えたことは当たっていた。この世界の魔力というものは、魔術を使えば使うだけ魔力量が多くなる。だけど、魔術教本には、魔力量は生涯を通して変化しないと書かれていた。
魔術教本に書かれていたことと現在俺の身に起きていることにかなり違いがあるな…‥成長期といったことが関係してくるのか?実際、魔術の練習を始めるのはある程度成長をしてものの判断が付くようになってからだろう。その場合、成長期は終わっていることだろう。魔力量が成長期に何をするかによって違いが生まれるのなら教本に書いてあったことにも合点がいく。また今度、セリスにでも聞いてみようか…‥
もし、今考えていることが事実なら今の俺は絶賛成長期だ。今のうちにできることはすべてしておこう。
俺はそう思い、魔力が切れる寸前まで魔術を使った。
ーーー
次の日の午前から、ヘルス看守の元、剣の稽古が始まった。
最初こそ魔術を練習する時間が減ると考えて乗り気ではなかったが、いざやってみると思いのほか楽しかった。前世では、剣を振り回すことがなかったから新鮮な感じがした。
もっとも、教えるヘルスが感覚派なのか俺の理解力だ足りないだけなのか…‥きっと前者だな。とにかく教えを理解するのが難しかった。
「いいか、ルイ、素振りをするときは自分が一番振りやすい位置に剣を持ってきて勢いよく剣を振り下ろしてから振り切る前に止めるんだ。ビュン、パシッって感じだ。やってみろ」
「こ、こうですか?」
「違う違う。
それだと、シュン、スタッって感じだろ、そうじゃなくて、こんな風に、ビュン、バシッて感じにやるんだ」
「あ、あの、コツとかないんですか?」
「コツも何も、上から普通に振り下ろせばできるぞ?」
まいったな、この説明方法じゃよく分からないぞ。ヘルスは感覚派なのか…‥そもそも振り方がよく分からないからまずは基礎的なことからやった方がいいんじゃないか?
「ルイ、もしかして…‥剣は嫌か?」
俺がそんなことを考えているとヘルスが不安そうな顔をして言ってきた。
考えことをしながらやっていたから、ヘルスは俺が不満を持っていると思ったんだろうな。
「いえ、剣自体は前々からやってみたいと思っていたので嫌じゃないですよ」
俺がそう返答するとヘルスはうれしそうな顔をした。
「そうか!それはよかった」
「ただ、父様の説明が感覚的なことで少し分かりにくいところがあります。なので、まずは、素振りをする前の基礎的なところから始めたいのですがいいですか?」
「ああ、今日は剣を持つことになれてもらおうと思っていただけだから明日からは、そのつもりだぞ」
「そうなんですね…‥分かりました。今日は剣を持つことになれたいと思います」
意外にもヘルスは考えていたんだな。明日もあるとなると魔術の練習は午前にでもやった方がいいか。
俺はそう考え、今日の剣術の授業を終えた。
「よし、今日はここまでだ」
「ありがとうございました!」
「明日からは、基礎練習と共に剣を振るための体作りをするからな!練習後のストレッチを忘れるなよ?」
「はい!分かりました」
その後、セリスとニーナが作った昼食を食べた後、魔術の特訓に取り組んだ。
「さて…‥今日はどうしようか」
神聖魔術以外の初級魔術を使えるようになった俺は、中級にいかず、初級魔術の精度を上げることを中心にやってきた。
「そろそろ他のこともやってみるか…‥だけど、中級をやっても詠唱が長くなって全部覚えきれる自信もないし…‥やっぱり、前に教本を読んだときに考えたことをやってみるか」
初めて魔術教本を読んだとき俺は、詠唱しながら威力や射出速度を設定するよりも頭の中で設定をしてから詠唱をすると短縮できるのではないかと考えた。
「よし、試してみるか」
俺は、手を前にかざし、目を閉じ想像した。
まずは、頭の中で魔力の流れを感じ、どこに魔力を多く通せば威力や射程距離が伸びるのかを想像する。そして、魔力の性質を変化させ水を作り球形を形成し、それを強くなるべく遠くに飛ばすイメージをする。
イメージをした瞬間、手の前に形成されていた『水弾』が勢いよく飛んでいった。
「え!?な、なんで?」
俺はまだ詠唱をしてないよな?もしかして…‥魔術の性質や行程を頭の中でイメージできていれば魔術の詠唱をしないでも発動できるのか?
「よし、もう一度やってみるか」
俺は、もう一度頭の中でイメージした。さっきにやったことと同じことを、そうすると、かざした手から『水弾』が発動した。
やっぱりだ、詠唱の短縮くらいできるだろうと思っていたけどまさか、詠唱をせずに発動できるなんて…‥でも、何で出来たんだ?魔術の性質を理解しないと使えないとかかな?それに、無詠唱なんてあの教本に書いてなかったよな?ひょっとして、俺が最初に無詠唱を完成させたのか!?いや、さすがにないか…‥今までもできる人はいたけどたまたま、この教本を書いた人物の周りにいなかっただけか。
一応、他の魔術でもできるかどうか試してみようかな。
俺はそこから、初級風魔術『 風刃 』や初級火魔術『 火弾 』、初級土魔術『 岩射 』などでも試したが、問題なく無詠唱で発動することができた。
「よし!問題なく他の属性でも発動できるな。この、無詠唱魔術があればいろいろ戦いの幅が広がるぞ!」
俺は今日発見したことを忘れないように反復練習をして魔力が切れる寸前まで練習をしてその日を終えた。




