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転生記 ~異世界では長寿を願って~  作者: 水無月蒼空
第3章:【少年期】冒険者編
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第四十五話:「怪しげな護衛依頼:前編」

 セフィス大陸に降り立った俺たちは、

 すぐに冒険者ギルドに向かった。


 ギルドに向かったのは、俺とフィラの二人でだ。

 ザナークはやることがあると言ってすぐにどこかへ行ってしまった。

 

 ギルドに向かっている目的は、

 所持金の換金だ。


 アルレシア大陸のお金はこっちでは使えない。

 反対にこっちのお金はアルレシア大陸では使えない。


 そのため、大陸を渡るとすぐに換金するのが常識になっているらしい。


 「換金をお願いします」


 俺たちは冒険者ギルドの受付で所持金が入った袋を提出した。

 受付には人族の美しい女性が立っていた。

 受付嬢は袋を受け取った。


 「かしこまりました。手数料として二割ほど支払っていただきますがよろしいでしょうか?」

 「はい、大丈夫です」

 「かしこまりました少々お待ちください」


 お金の換金には必ず手数料が取られる。

 その割合は場所によって様々で、

 多いところは八割近く取るところもあるらしい。

 なので、手数料が一番少ない冒険者ギルドで換金することにした。

 

 現在の所持金は、


===


 黒銭:一枚

 緑銭:八枚

 黄銭:二枚

 鉄銭:三枚

 屑銭:六枚


===


 だ。

 アルレシア大陸で旅をする分には問題は無いが、

 こっちで旅をするには少し心許ない。何個か依頼を受けて路銀を稼ぐしかないだろう。


 「お待たせしました」


 考えていると、

 受付嬢が戻ってきた。


 「こちら手数料を引かせていただきました、お客様の手取り分になります」

 「ありがとうございます」


 戻ってきたお金は、


===


 セフィス銀貨:一枚

 セフィス大銅貨:四枚

 セフィス銅貨:三枚


===


 だ。

 まあ、こんな物だろう。

 向こうとこっちでは物価がかなり違う。

 手数料を良い多分だとこのくらいが妥当だと思える。


 俺たちはギルドを出た。

 ひとまず今の所持金で止まれる宿を捜し始めた。


 捜し始めてすぐに一軒宿を見つけた。

 そこは、D級冒険者以上で割引される宿だった。


 「すみません、宿を取りたいのですが」

 「冒険者カードを見せてくれ」

 「はい」


 俺は冒険者カードを、

 店の男に見せた。


 「そっちの嬢ちゃんも」

 「あっ!はい」


 フィラを自分の冒険者カードを見せた。

 

 現在俺たちは、

 俺がA級冒険者。

 フィラがD級冒険者。

 になった。


 ロシンポートのギルド長がジュリアンと仲が良く、

 ジュリアンの推薦で一階級上がることが出来た。


 ジュリアンにはいろいろお世話になったな。

 今度お礼を言いに良い行こう。必ず。

 そうこうしていると、

 宿の店主の男が「よし」と言って部屋の鍵を取り出した。


 「すまねぇな。

  今一部屋しか開いてないんだが、いいか?」

 「はい。構いません」

 「よし。それじゃあ銅貨三枚だ」

 「はい」


 俺は言われた通り、

 袋の中から銅貨三枚を取りだし、カウンターに置いた。


 「部屋は横の階段を上がって突き当たりの部屋だ」

 「ありがとうございます」


 カウンターを後にして部屋に向かった。

 この宿の内装は、

 ロシンポートで止まっていた宿よりはランクが下がるが、

 アルレシア大陸で止まった所の全体で見ると数段上だった。


 俺たちは部屋の中に入った。

 部屋の内装は、ベッドが一つに暖炉が一つある最小限物が揃ったような部屋だった。


 「さて、これからこの町でやることを決めましょう」

 

 俺は荷物を下ろし、

 身軽になり座りながらそう言った。


 「やること?」

 「はい。僕達の目的はアスト王国に帰ることです」

 「うん」

 「一刻も早く向かいたいところではあるんですが、

  現状、僕達にはアスト王国に向かうためのお金がありません」

 「うん」

 「僕には二つの考えがあります。

  一つが、いくつかの依頼をこなして路銀を確保する方法。

  この方法が一番確実ですが、時間が掛かります」


 これの方法が一番無難な方法だ。

 時間は掛かるが、もう一つの方よりも確実。

 アスト王国が荒れているとザナークも言っていたし、時間を掛けるのも悪くない。


 「もう一つは、

  隣の町への依頼を受けて移動していく手段です。

  この方法は、商人の人が依頼を出しているときに限りますので、

  移動できない可能性もあります。ですが、短い時間で長距離の移動が可能です」


 この方法は、路銀は少なくすむが、

 移動できない場合がある。確実性に欠けるが、最小限の時間で移動できる。


 「フィラはどっちが良いと思いますか?」

 「そうね……一度ギルドに行って依頼を確認して決めても良いんじゃない?」

 「……そうですね。一度ギルドに戻ってみましょうか」


 俺たちは宿を出てギルドに向かった。

 先程来た時も思ったが、あまり人が多くない。

 アルレシア大陸の冒険者ギルドは常時人で賑わっていた。それに比べて、ここはまだ日中にもかかわらずあまり人がいない。

 何故だろう……?


 そう考えながら掲示板を見てみると、

 その答えがすぐに分かった。


 「……なるほど、そういうことか……」


 ギルドの依頼は町によって様々だ。

 特産品がある場所では、

 それの警護や採取の依頼などがある。


 掲示板に貼られていた依頼書は、

 どれも大陸を渡る船の警護依頼ばかりだった。


 ギルドに人がいないのは、

 依頼を受けるか、マシな依頼がある町まで向かう人が多いからだろう。


 このままではまずいな。

 簡単な依頼ですら住み込みで何日も行なう物ばかりだ。

 


 ここからアスト王国までいくつもの町を越えないといけない。

 正直、この町は一月以内には出たい。

 ここで依頼を受けたらかなりの日数この町に滞在することになる。

 それだけは避けたい。


 「どうするか……」


 頭を悩ませていると、

 受付嬢の声が聞こえた。


 「この中にルイネス・アルストレア様は居られますか!?」


 受付嬢は俺を捜しているようだった。

 朝に一度受付嬢と話していたため俺の見た目を覚えていたらしく、

 すぐに俺を見つけて近寄ってきた。


 「ルイネス・アルストレア様」

 「何でしょうか?」

 「あなた様に指名の依頼が入っているのですがお受け致しますか?」


 指名の依頼?

 誰からだろう?


 「どなたからのご依頼なんですか?」

 

 俺がそう聞くと、

 受付嬢は興奮したように依頼書を見せてきた。


 「隣の町……【敬愛の町:シュレーラス】町主様からの御依頼です」


 隣の町の領主からの依頼?

 そんな人が俺にどんな依頼を?

 まず、

 その人は何で俺のことを知っているんだろう?

 依頼書を見ても、

 警護依頼としか書かれていなかった。


 「……」

 「あ、あの……一応依頼主様が直接お話ししたいと言うことで、

  応接室にお待ちしていただいているのですが、お会いになられますか?」


 考えている俺に受付嬢はそう言ってきた。

 本人から直接話が聞けるのならばその方が良いだろう。


 「はい、直接お話を聞かせていただきたいです」

 「かしこまりました。それではこちらへどうぞ」


 受付嬢派そう言って誘導を始めた。


 「これって、私も行って良いのかな?」

 「もちろんですよ。一緒に行きましょう」


 誘導されるまま着いていき、

 綺麗な部屋に入った。

 その部屋は長いイスが向かい合わせに二脚置かれており、

 右のイスにはまだ若そうな茶髪の人族の男の人が。

 左のイスには、見たことのあるコートを着た男が座っていた。


 「ギルド長。

  こちら、ルイネス・アルストレア様とそのお連れ様になります」

 「ああ、ご苦労だった」


 受付嬢の言葉に反応したのは、

 右のイスに座っている男だった。


 ということは、

 左に座っているのが……。


 「この度はご足労していただき感謝します。龍王殿」


 ギルド長と呼ばれた男は立ち上がりそう言ってきた。

 俺は、龍王という名前に驚いている受付嬢を横目に一歩前に出た。


 「いえ、とんでもございません。

  一冒険者に過ぎない私がこのような場にいられることに感謝致します」


 俺は相手の機嫌を損ねないよう、

 丁寧な言葉でそう返した。


 「早速ですが、本題に入らせていただきます」


 話を切り出すと、

 コートの男が立ち上がった。


 「こちら、依頼主の……」

 

 ギルド長がそう言うと、

 男はフードをとった。


 「初めまして。

  今回依頼をさせて貰ったケイレブ・レイターだ」


 ケイレブ・レイターと名乗った男は、

 あまり背は高くなく、髪の毛は濃い茶色をしていて、顔立ちは若い。

 右の目元には小さな切り傷があった。


 「あなた……船の上で僕達を見ていた人ですよね?

  あの時、なんで僕達のことを見ていたんですか?」


 俺が気になっていたことを問いただすと、

 ケイレブはフッと微笑した。


 「いえ、アルレシア大陸で有名な龍王が乗っているとのことで観察していたんですよ」

 「観察?」

 「ええ、今回の依頼を任せられる人材かどうかを」


 なるほど、

 一応筋は通っているな……。

 

 「なるほど……分かりました。

  では、依頼内容をお聞かせいただいてもよろしいでしょうか?」

 「はい」


 ケイレブは不気味に笑いつつそう呟いた。

 

ーーー

 ケイレブの依頼内容は護送警護だった。

 アルレシア大陸で手に入った珍しい物を隣の町に大量に運ぶため、

 腕の立つ冒険者を捜していたらしい。


 「報酬も多くだそう」


 ケイレブはそう言ってもう一枚紙を取り出した。

 それは先程見た依頼書と同じようだったが、一カ所だけ違っていた。

 

 「これって……」

 「ああ、報酬金さ」


 俺の視線の先には、

 報酬金と書かれ、その横には【セフィス金貨:五枚】と書かれていた。


 「こんなに!?」

 「君レベルの冒険者を雇うにはむしろ安いくらいだよ」


 セフィス金貨五枚……。

 これだけあればかなりの間止まることなく進むことが出来るだろう。

 

 しかも、

 この依頼は隣の町に依頼で行くことが出来る。そして、報酬も出る。


 かなりいい話ではあるな……。

 俺たちにとって特しかない。


 「お受けしていただけますか?」


 どうするか、

 正直いい話ですぐにでも即答したいが、

 何か企んでいるんじゃないのか?……いや、疑い深くなるのはいけないな。

 

 いつも疑って、

 結果思い過ごしのことが多い。

 

 俺の活躍を見て依頼してきてくれたのだとすれば、

 かなり失礼な事になる。

 人を信用しよう。


 「はい。お受けさせていただきます」

 「……それは良かった」


 俺はその依頼を受けた。

 依頼は明日からになり、

 今日はしっかり休みを取ることになった。


 なぜ隣の町に行くのに護衛が必要なのかと思ったが、

 宿に戻ったとき、気になる話を聞いた。


 どうやら、俺の知っている盗賊団とは別の盗賊団がこの辺りにはいるらしく、

 最近、それによる被害が多発しているらしい。


 俺はその話を聞いて、

 より一層気を引き締めて臨もうと思い、床についた。


ーーー

 翌日、 

 朝日が昇り始めたまだ薄暗い内に、

 俺たちがギルドの前に来ていた。

 ギルドの前には、馬車が二台止まっており、

 その近くには、数人の騎士が待機していた。


 「ルイネス君。おはよう」


 そう言ってきたのは、

 昨日会ったばかりのギルド長だった。


 「おはようございます」

 「今日はよろしく頼むよ」


 普段は依頼の出発時に見送りなどはないが、

 今回は依頼主が大物のためわざわざ来たらしい。


 セフィス神聖王国の町長というのは、

 アスト王国で言うところの領主のようなもので、

 この辺りで一番偉い人なのだそうだ。


 「隣町までの護衛だが、

  近頃やっかいな奴らが馬車を襲っている。気をつけてくれ」

 「はい」

 「あ、そうだ……一応この辺りの指名手配をまとめておいた。持っておくと良い」

 

 そう言って、

 数枚の紙の束を手渡された。


 渡された紙には、

 名前や種族、特徴に報酬金などが書かれていた。


 「盗賊以外にも、その人物達にも気を配っておくと良い」

 「分かりました。ありがとうございます」


 指名手配がされる奴らに襲われたら守り切れる自信は無い。

 仕掛けられる前に見つけられるよう気を配っておこう。


 その後、

 馬車の準備が整い、

 ケイレブが女性を一人連れながら歩いてきた。


 「今回はよろしく頼むよ」


 今回、

 族に襲われたときの対策のために、

 ケイレブも武装をしていた。

 腰には剣を。

 懐が膨らんでいるところを見ると、

 そこにも何かを隠しているようだ。


 「はい。お任せください」


 俺がそう言うと、

 ケイレブの後ろに連れている女性が前に出てきた。


 「お初にお目に掛かります。

  私はシュレーラス警護騎士団副団長シィル・ウェイカーです」

 

 そう言いながら、

 綺麗なお辞儀をした。

 見た目は若く、長く綺麗な緑色の髪が薄い朝日に照らされていた。

 腰には、ロッドが入っている皮袋と女性が扱うには少し大きな剣が携えられていた。


 「私は……」

 「超級魔術師ルイネス・アルストレア様。ですよね?」

 「えっ?あ、はいそうです」

 「お噂は聞いております。紫竜を単独討伐なされたとか」

 

 ここまで噂が流れているのか……。

 人の噂というのはすごいな。


 「私も魔術師の端くれです。

  貴方と一度、お手合わせ願いたい」

 

 シィルはそう言って、

 皮の袋から杖を取り出した。

 杖は俺の杖のように身の丈ある物ではなく、

 持ち運びがしやすそうな短い物だった。


 護衛の依頼をするに当たって、

 仲間の実力を知っておくことも重要か。


 「分かりました」


 俺も杖を構えた。


 「町中なので、派手な魔術はなしでお願いします」

 「了解した」

 「それじゃあ、僕から行きます」


 魔術師同士の手合わせは、

 基本最初に魔術を使った方が不利になる。

 相手が使った魔術を見てから選択を出来るためだ。


 「『水砲(ウォーターキャノン)』!」


 水の塊が勢いよくシィルに向かって飛んでいった。


 「っ!」


 シィルは予想外の速さに一瞬気をとられたが、

 すぐさま持ち直し、詠唱を始めた。


 「大地の精霊よ 地脈からの加護を受け 我が身を守る壁となれ」


 魔術が迫る中、

 落ち着きながら詠唱をした。


 「『土壁(アースウォール)』!」


 形成された壁は、

 適度に分厚く鮮麗されていた。

 しかし、

 俺の魔術が着弾した瞬間、

 壁はいとも容易く崩れた。


 「うっ!」


 壁にぶち当たり威力が弱まった水の塊は、

 シィルの腹部に直撃した。


 「そこまで!」


 ケイレブの静止の声と共に、

 俺は彼女に近寄り治癒魔術を掛けた。


 「あ、ありがとうございます」

 「いえ、元は僕のせいなので」


 俺は手を貸し、

 シィルは立ち上がった。


 「素晴らしいお手前でした。

  貴方が味方が共に護衛をしていただけるとは、心強いです」


 悔しいのか、

 少し低い声でそう言った。


 「しかし……」


 俺たちの元まで歩いてきたケイレブは、

 腕を組みながらそう切り出した。


 「君の魔術は特別なのかな?詠唱をしていないように思えたんだが?」

 「はい、無詠唱で使っています」


 無詠唱はリベルに魔術を習っている時から出来ていた。

 理由は分からない。

 リベルも理由は分からないと言っていた。

 それどころか、無詠唱の方法すら知らないと言っていた。

 あの何でも知っているリベルが知らないというくらいだからきっと特別な物なのだろう。

 

 「それはどうやって出来たのかな?」

 「……分かりません」

 「そうか、君はそうだったね」

 「そうだった……?」


 そうだったって、 

 何のことだろう……?


 「何のことです?」

 「……いや、些事(さじ)な物だ。

  気にしないでくれ。さぁ、行こうか」

 「え?あ、はい……」


 なんか濁された気がするが、

 本人が些事だと言うならこれ以上詮索するのはやめよう。


 その後、

 俺とケイレブは前の馬車に、

 フィラとシィルは後ろの馬車に乗り込んだ。

 馬車の周りを、馬に乗った数人の騎士が囲む形で進む。


 「それでは出発してくれ」


 ケイレブがそう言うと、

 馬車を動かす男が鞭を打った。

 すると、

 馬車がゆっくりと進み始めた。


 「それじゃあ、町までの二日間ゆっくりと話そうか」


 ケイレブは、

 不気味そうな笑みを浮かべつつそう言った……。

 

 シュレーラスまで残り二日……。


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