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転生記 ~異世界では長寿を願って~  作者: 水無月蒼空
第2章:留学編
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第二十四話:「お嬢様のパーティ」

 今日は、アリスの十歳の誕生日だ。

 今日は朝からいつも以上に屋敷内が騒がしくなっていた。


 俺とアリスは、パーティまで時間があるため、いつも通りライリーの稽古を受けていた。


 「おい、アリス!気を抜くな!」

 「はい!」


 今現在、ライリーに俺とアリスで斬りかかる稽古をしている。

 個の力も大事だが、他者との連携も出来ておいた方が良いと言うことで最近はこの練習を多く取り入れている。

 こっちは二人がかりで攻撃をしているが、ライリーにはほとんど剣を当てられていない。

 いつもは惜しいところまで行くのだが、今日は、一度もそういう場面がない。


 「アリス、左右から一斉に斬りかかりましょう」

 「……ええ、分かったわ!」


 俺が左から回り込み、

 アリスが右から回り込んだ。


 「はぁぁぁ!」

 「ハァァァ!」


 ライリーは、俺の剣を自分の剣に滑らせるように受け流し、反対方向から斬りかかって来ているアリスに()つけた。

 ライリーの剣で受け流された俺の剣はアリスが持っている剣にぶつかって俺の体がアリスにぶつかった。

 

 「ちょっと……何やってるのよ!」

 「うっ、すみません」

 「ルイネス、やはり剣に重みがない。

  そんな剣では相手を斬ることは出来ないぞ」

 「はい」


 俺とライリーが話している間、

 アリスはずっとボーっとしていた。


 「……」

 「どうしました?今日はなんだか元気がないですよ?」

 「……何でも無いわよ」

 「ふむ、今日はここまでにしよう。

  もうそろそろ時間だ」


 アリスの事は気になるが、

 パーティまでもう時間が無い。早急に戻るとしよう。


ーーー


 ここは、スロウ家の屋敷の中にあるとある大広間。

 そこには、この街に住む貴族はもちろん、他の街に住む貴族も多く出席していた。

 スロウ家に取り入りたい者、名前だけでも覚えて貰おうとしている者、いろいろな思惑を抱く者が多く参加していた。

 参加者の中には、この国の最上位に当たる三大貴族に名を連ねる者も……。



 「おお、こんなに来るのか……」


 俺は、来た来賓の人数に驚いていた。

 三年前に行なわれたパーティにも来客はいたがここまで多くは無かった。


 そうこうしているうちに、アルバートが大広間に入ってきた。アルバートの後ろには、アリスとアールが並んで歩いている。

 パーティに来た来賓達は、アルバートの顔を見るとみんな目の色を変えていた。


 うあっ、一気に場の空気が変わったな……。

 みんなそろって目の色を変えて……って、あの金持ちそうな年老いた男だけいつも通りそうだな。

 髪は白い……いや、あれは白髪か。それに、所々茶髪があるところから元は茶髪だったのか。色白だが、強面のような顔だな。

 多分、若い頃は相当モテたんだろうな。ん?なんだろう……あの男誰かに似ているような?

 ダメだ、思い出せない。


 「皆の者、わしの孫のために集まってくれて感謝する!!」


 アルバートは、広間の真ん中まで行き、大きい声でそう言った。

 その声には、迫力のような物があり来客の中には迫力に押され顔を青ざめる者もいた。


 「いろいろ企んでいる者もいるだろう。いつもなら取り合わんが……今日は構わん。わしに取り入りたい者は今宵のパーティを楽しむが良い。

  まあ、一部その気が全くない者もいるようだが……」


 アルバートはそう言いながらさっきの年老いた男の方を睨みつけた。男は、フンッと微笑をした。


 「まあ、良いだろう。

  今宵は孫娘の晴れ舞台だ、存分に楽しまれよ」


 そう言って横の机に置いてあったグラスを取った。

 アルバートがグラスを取ると、来賓の貴族達もグラスを取った。


 「それでは……かんぱぁぁぁい!」


 アルバートの挨拶でパーティが始まった。

 来賓の貴族達は順々に挨拶をしている。アリスは、アルバートとアールと共に貴族達と話している。

 アリスは、優雅に挨拶をしているがつま先が上下に暴れているところを見るとイライラし始めているのだろう。

 アール達の後ろにはライリーが控えている。


 「さて……俺はどうするか」


 俺は正直、このパーティでやることはない。

 このパーティはアリスが主役だ。俺は精々目立たないように隅でご飯でも食べていよう。


 それから数十分が経ち、俺はパーティの料理食べていた。すると、アリスが隣に座ってきた。

 アリスは、挨拶回りで疲れたのかだるそうにしていた。


 「これはこれは、アリスお嬢様」

 「……殴るわよ?}

 「ごめんなさい」


 どうやら、本当に疲れているようだ。

 かしこまった挨拶をしようとすると殴られる……相当堪えているな。


 「アリス、お疲れさまです」

 「ええ、本当に疲れたわ」


 アリスは足を押さえながらそう言った。

 足を見てみると、普段はいていないような踵の高い靴を履いていため靴擦れを起こしていた。


 「アリス、足をこっちに向けてください」

 「……変なことしない?」

 「しませんよ」


 俺が優しくそう言うと、

 アリスは恐る恐る足をこっちに向けた。

 俺は、アリスの足に触れて治癒魔術を使った。すると、靴擦れを起こしていた足はみるみるうちに綺麗に治っていった。


 「これで、もう痛くないでしょう?」

 「ええ、ありがとう」


 ……ん?

 今お礼を言われたのか?

 アリスにお礼を言われたのは初めてだな。


 「なによ?」


 俺が、アリスの顔を見ていると、

 何見てんだ!と言わんばかりの顔でアリスがこっちを向いていた。

 

 「いえ、今日のアリスはとても素直ですね」

 「疲れているからよ」

 「そうですね、今日は良く頑張りました。少し休んだらどうですか?」

 「……そうね、そうするわ」


 アリスはそう言って、

 俺の膝に頭を預けてきた。

 これが膝枕というやつか……てか、これ普通逆だよな?

 まあ、気持ちよさそうに寝ているから良いか。


 このアルバートが見たら「パーティに寝るとは何事だ!」とでも言いそうだが、ここは隅の方だから大丈夫だろう。

 しかし、アリスが寝ていたら動けないな……このままじゃあ、俺も寝てしまいそうだ。

 俺は、睡魔に襲われて眠りについた。


 「……ん?……ふぁぁ」


 うっ、足が重い、何だ?何か乗っている?

 俺は、重たいまぶたをあげて重たい部分を見た。すると、そこには、紅赤色の髪の毛をした女の子がそこにいた。

 ああ、そうか。そういえば、パーティの途中でアリスが俺の膝の上で寝てしまって俺も動けないからいつの間にか寝ていたんだっけ?


 しかし、どうするか、

 まだ、パーティは終わらなさそうだし……。

 俺が考えているとアールが近づいてきた。


 「おや、ルイネス。

  なんだか、面白そうなことになっているね」

 

 そう言ってきたアールは、

 ニヤニヤしながら俺とアリスを見ていた。


 「別に面白い事なんて起こってないですよ」

 「そうなのかい?その姿を見ると……」

 「何もありません!」


 アールは、

 強く否定した俺を見てさらに一笑した。

 

 そんなに面白いのだろうか?

 この人は、何年経っても性格が悪いところは変わらないな。


 「……ん、うるっさいわね……」


 アリスは俺とアールの会話がうるさかったのか、

 不機嫌そうに目を覚ました。


 「おや、

  アリス、目が覚めたのかい?」

 「……ええ、お父様。おはようございます」

 「ああ、おはよう。

  随分と気持ちよさそうに眠っていたね」

 「なんだか、ここは、とっても落ち着くんです」


 アリスは、眠たそうに頭を俺の肩に預けながらそう言った。

 まだ眠たいのか、ウトウトしていた。


 「それは何よりだ。ねえ、ルイネス」

 「はて、何のことでしょう?」

 「君は相も変わらず強情だ」


 今の状況が面白いのか、

 ニヤけ顔を崩さなかった。


 「アリス、また寝てしまいそうかい?」

 「……ええ、お父様」

 「ならば、

  もう部屋に戻りなさい。ライリーを呼んでこよう」


 アールはそう言って、アルバートの後ろに並んでいるライリーの元に歩いて行った。


 「ルイネスはどうするの……?」

 「僕はもう少しここにいますよ。

  アリスは今日とても頑張ったので先に休んでください」

 「……ええ、そうするわ」


 ライリーが俺たちの元に来た。

 アリスを抱えてライリーはドアの方に歩いて行った。


 俺はそれからしばらく座っていた。

 座っている間、俺をスロウ家の人間と間違えたのか挨拶をしてくる貴族もいた。

 その中には、自分の娘を紹介してくる者も……。

 一人の貴族が来ると、次々貴族が来るようになり俺も次第に疲れていった。


 「なんで、こんなに来るんだ?」


 誰か一人でも行けば不安はなくなる。

 赤信号みんなで渡れば怖くない心理、いわゆる、リスキーシフトってやつか。

 

 その後も、数組の貴族の相手をした後、一人の強面の年老いた男が近づいてきた。

 その男は、俺の顔をじっと見ていた。


 「あの……ど、どうかされましたか?」

 「おい小僧、お前の名は?」

 「え?あ、はい。

  僕は、ルイネス・アルストレアと申します」

 「アルストレア……」


 男は、俺の名前を聞くと何かブツブツ呟いていた。


 「父親は」

 「えっと……ヘルス・アルストレアです」

 「ほう、なるほど。お前だったか」


 男は、何かを納得したような顔をした。

 何か呟いていたような気もしたが俺には消えなかった。


 「あの……」

 「なんだ?」

 「父様のことを知っているのですか?」

 

 俺がそう聞くと、

 男は大きく笑った。


 「なるほど、なるほどな……あの男は、まだ根に持っておるのか。

  ならば、わしから言えることは一つだけだ」

 「一つ?」

 「知らん!」


 ……おい。

 ここまでためておいて「知らん!」って、ふざけているのか?

 このふざけたノリも誰かに似ているような……?


 「あの……」

 「なんだ?」

 「あなたに似ている人で僕と面識がある人っていますか?」

 「……知らん。

  わしはお前の面識のあるヤツを知らんしな」


 まあ、そうですよね。

 俺も分からないのに、他人が知っているわけ無いですよね。


 「変なことをお聞きしました。忘れてください」

 「そうか……ああ、そうだ。

  お前にこれをやろう」


 男はそう言って、自分の指につけていた指輪を外して俺に放ってきた。

 俺はそれをキャッチしてその指輪を見た。

 指輪には、中心に剣と盾があり、その左右には二頭の獅子が外を向いているような紋様が掘られていた。


 「あの……これは?」

 「これは……そうだな、お前の人生で何かしら役に立つ物だ」


 俺の人生で、役に立つ物?

 ここにいるって事は恐らく貴族の人だよな?

 そんな人が俺に無償で役に立つ物をくれるのか?


 「僕がそんな物をいただいても良いんですか?」

 「ああ、構わん。お前だから渡すのだ」

 「……え?僕だから?」

 「おっと、口が滑ったな。

  これだから、歳は取りたくないのだ」


 まあ、なんだかよく分からないが、

 無償でくれるのであれば貰っておこう。


 「では、ありがたく受け取らさせていただきます」

 「ああ、大事にしろよ?」

 「はい!」

 

 男は、俺の頭に手を置いて撫で始めた。

 俺の頭を撫でているとき、男は懐かしそうな顔をした。


 「それじゃあ、小僧。

  またどこかで会おう」

 「はい!」


 男はそう言って後ろを向いた。

 なんか、懐かしいような印象を受ける人だったな、

 この人は一体?そういえば、この人の名前聞いてなかったな。


 「あ、あの!」

 「ん?なんだ?」

 「お名前を聞いても良いでしょうか?」

 「ん?ああ……」


 男は、何かを考え始めた。

 顎に手をつけて何かをブツブツ呟いていた。


 「わしの名前はまだ言えん」

 「え?」

 「それに、お前ならばいずれ分かるときが来よう」

 

 この人は、いろいろもったいぶるな。

 そんなところも誰かに似ている気がするんだけどな……。


 「分かりました、では、その時を楽しみに待つことにします」

 「それでいい、それじゃあ、元気でな」

 「はい、あなたもお元気で」


 男は後ろ向きで手を振りながら去って行った。

 去って行ったと言っても、アルバートの方へ向かっていったため目に見える場所にいた。


 俺は、あの年老いた男にもらった指輪を指にはめた。

 サイズが合わないと思っていたが、指にはめた途端ぴったりのサイズに変化した。


 「おお、すごいなこれは」


 この指輪は、魔力付加品(マジックアイテム)を改良して作られているのか。これは便利だな。

 あの男は、恐らくこの国でも高い位にいる貴族だろう。なんとなくそんな気がする。

 あの男からは、なんだかオーラのような物を感じた。アルバートに初めて会ったときもそうだった。そんな人が、役に立つというのならそうなのだろう。

 そんな人に貰った物だ。大切にしよう。


 この後すぐにパーティは終了した。

 アリスは貴族との挨拶を順調に進められたらしいからこのパーティは成功と言えるだろう。

 俺は、部屋に戻った。

 俺は特に何かをしたというわけではないが、ドンと疲れた。

 今日はしっかりと休むとしよう。

 アリスは、パーティを成功させた。それなら、約束通りアリスとどこかに遊びに行こう。

 俺は、そう考えながら眠りについた。


ーーー


 パーティ終了間際、

 アルバートはとある男と話していた。

 話している男は、白髪に茶髪が混ざっており、強面な顔をしていた。


 「どうだったよ、ずっと会いたかったんだろ?」


 アルバートは男に対してそう言った。

 男はフッと一笑した。


 「どうと言うことはねーさ。

  あの小僧の顔を見ているとヤツの顔を思い出してしまう」

 「良いでは無いか、たまには思い出してやっても。まだ気にしておるのか?」


 アルバートがそう言うと、

 男は、嫌なことでも思い出したのか顔が暗くなった。


 「わしはもう気にしておらん。

  ヤツが、意地になっておるのだ」

 「ハハッ、お前もアイツと同じさ。意地っ張りで強情」

 「フンッ、一緒にするな」


 男は、グラスの中に入っている酒をグイッと飲み干した。

 アルバートは、酒を飲んでいる男の手を見てあることに気がついた。


 「おい、指輪はどうしたんだ」


 そう、

 いつも、男の指にはまっている指輪がなかったのだ。


 「ああ、あれなら、

  小僧にくれてやったわい」

 「……良いのか?

  それは、ルイネスを家系の一人として受け入れたも同然だぞ?」


 男は、口元に手を当てて考え始めた。

 しばらく、考えていると「あっ!」と言った。


 「お前……考えてなかったな?」

 「ま、まあ良い。彼奴(あやつ)が戻りたいというのなら、父親もろとも戻すまでだ」

 「……全く、お前は昔から変わらんな。不器用なところが」


 アルバートがそう言うと、

 男は、ハッと言って酒をグラスの中につぎ直した。


 「お前は昔から不器用だったよな。

  ヤツが家を出たときにも不器用が故に止めることが出来なかった」


 男は、酒に酔っているのか

 目元が緩み、昔を懐かしむような表情をした。


 「ヤツは、出たくて家を出たんだ。

  それをわしが止める筋合いはない」

 「ルイネスの強情さはお前譲りよのう。ジョセフよ」


 そう、ルイネスに指輪を与え、

 アルバートと話している男は、

 三大貴族のうち一家、エルア家現当主ジョセフ・エルア・アルストレアだった。


 「わしには似ても似つかないわ。

  アイツの強情さは、ヤ……ヘルス譲りだ」

 「では、ヘルスはお前譲りだな」


 ジョセフとはアルバートの言葉を軽く受け流した。


 「まあ、何でもよい」

 「ああそうだな。それに、良かったじゃ無いか。

  ずっと会いたかった自分の孫に会えて」

 「お前と一緒にするなアルバート」

 「フッ、やはりお前は強情よのう」


 エルア家現当主ジョセフ・エルア・アルストレアは、エルア家領地《アルセル領》からはるばる《リエイト領》まで孫に会いに来ただけの、ただの意地っ張りなお祖父ちゃんだった。

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