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転生記 ~異世界では長寿を願って~  作者: 水無月蒼空
第2章:留学編
28/67

間話:「師匠の旅」

 アルレシア大陸中途のリングル

 

 ここは、アルレシア大陸の入口(ロシンポート)からさらに進んだ場所にある。

 リングルには、魔王の住む城。その周りに囲むように出店や家やギルドがある街。この街は、魔王が納めているため比較的人が多い。

 人が多いため、他の街とは違って賑わっている。


 「はぁ、疲れましたね」


 そうぼやいた彼女は、金髪靡かせた背丈の低い女の子……に見える成人をとっくに迎えた女性。そうフレイである。

 フレイは現在、アルレシア大陸に入ってからしばらくが経ち、立ち寄った街で食事を取っていた。


 「この大陸は甘い物がなくて困りますね」


 アルレシア大陸には、美味しいものがあまりない。

 それは、この大陸が他の大陸と違って作物が育たないためだ。この大陸は、魔力の流れは他の大陸と比べて多いがその分魔物も多い。

 魔物が多いと周りの作物が育たない。作物が育たないと家畜を育てることが出来ない。だから、この大陸では魔物を主食としている。

 魔物の肉は家畜の肉と違って筋肉質で味と匂いが悪い。とてもじゃないが美味しいとは言えない物だ。

 アルストレア家で食べたものはとても美味しかった。あれには、あの人が調合したスパイスが使われていた。

 あの人の調合したスパイスはほとんどどの料理に使用しても美味しくなる。私も一つ貰っておけば良かったと今になって思う。

 料理の味もそうだが、この大陸には甘いお菓子がない。この大陸以外には甘いお菓子がいっぱいある。甘い物を食べなくては疲れを癒やすことが出来ない。


 この大陸に入って数ヶ月が経った。この数ヶ月間は比較的スムーズに進んでいたと思う。前に大陸を移動したときは四年程度掛かったが、今回は二年ちょっとでアルレシア大陸に入ることが出来た。

 この街からセフラグの村まではまだ距離はあるがここまで来たならもうすぐだろう。

 私が食事を取りながらそう考えていると遠くの方から声が聞こえてきた。


 「ちょっと、これ高すぎますわよ!」


 その声は聞き覚えのある声だった。

 声のする方向を見ると、体つきがスリムな長耳族の女性がいた。その女性は飲み屋の店主に対して酒代を安くしろとせがんでいた。


 「あ、あの!」

 

 私が声を掛けると女性はこっちに振り向いた。


 「なんですの……あら!フレイじゃない!」

 「お久しぶりです、ティアさん」


 彼女は、ティア・リーン。

 長耳族の戦士で『黒雲の灯火』で一緒にパーティーを組んでいたメンバーの一人だ。


 「あなた……こんなところで何をやっていますの?」

 「私は一度故郷に戻ろうと思って」

 「あら、そうですの?」

 「ティアさんは何でこんな大陸(ところ)に?」

 「私は、お宝探しとお宝(おとこ)探しですわ」


 自慢げに言った彼女は控えめな胸の前で腕を組んだ。

 彼女は昔からこんな感じだ。宝と(おとこ)を探し続ける。自分の理想とするお宝と巡り会うために旅をしている。

 彼女が『黒雲の灯火』に入ったのは、ヘルスさんがその人に思えたからだそうだ。実際は、思ったのとは違い何もなかったようだが……。


 「男漁りも程々にしてくださいよ?」

 「分かっていますわ。それに、物は試しにと思って来てはみてものの、むさい男ばかりでいい男はいなかったですもの」

 「まあ、この大陸では仕方がありませんよ」


 この大陸では死と隣り合わせの生活になる。

 男は魔物と戦い己を鍛えていく。そのため、彼女の好みとは違うむさい男ばかりになる。彼女は中央大陸で探せば良いと思う。


 「ティアさんは中央大陸には行かないんですか?」

 「あそこは嫌ですわ」

 「何故です?」

 「あそこはほら……ヘルスがいますもの」

 「まだ、喧嘩しているんですか?」


 ヘルスさんがセリスさんと結婚する際に私達『黒雲の灯火』は解散した。その時、ヘルスさんやティアさんを含むパーティーメンバー全員でもめた。

 ヘルスさんはセリスさんを連れて半ば強引にパーティーを抜けた。それ以降、ティアさん達は犬猿仲になっている。


 「仕方ありませんわ。

  アイツが悪いんですもの」

 「ハハ、分かりますが程々にですよ」

 「分かっていますわ」

 「私はそろそろ行きます。会えて良かったですティアさん」

 

 私はそう言って店を出ようとしたとき肩をつかまれた。


 「待ちなさいフレイ」

 「なんですか?」

 「私も行きますわ!」


 何を言っているんだ彼女は……?


 「これから行くところにはティアさんの求めるような男の人はいませんよ」

 「分かっていますわよ」


 私は元気よく返事をしたティアの動向を許可した。

 彼女がこれからの経路に耐えられるとは思えないが付いてくると言うのなら問題は無い。


 ティア・リーンが旅に動向を始めてから二月が経った。

 彼女は男漁りをやめることは出来ないが我慢することは出来ているようだ。

 現在、私たちは次の街に向かって歩いていた。歩いているところは、ろくに整備もされず枯れた土地だった。


 「この辺りは何もありませんわね」

 「アルレシア大陸は魔力が集まりやすい土地ですけどその分魔物も多いですからね。魔物の多い土地には木が育たないんです」

 「なるほど。

  それで、フレイの故郷までは後どのくらいありますの?」

 「そうですな……順調にいけば後半年といったところでしょうか」


 私がそう言うとティアはわかりやすく嫌な顔をした。


 「まだ、そんなに掛かりますの?」

 「セフラグの村は、この大陸の隅にあるんですよ?そう簡単に着くと思わないでください」

  

 セフラグ族の村はアルレシア大陸北東部に位置するセルトワ地方にある。セルトワ地方の中でもさらに隅の方にあるのだ。

 

 「とりあえず、セルトワ地方のなかで一番大きい街まではもうすぐなので頑張ってください」

 「……分かりましたわ」


 彼女は渋々承諾した。

 近くの街まではあの二月程度だ。それまでは我慢してもらうとしよう。


・・・

 

 この街の名は《フロート》。

 セルトワ地方一帯を納める魔王の名からきている。納める魔王は、一切の姿を見せず、その姿を見た者はいないと言われている。

 一切の姿を見せないが、この街に住む者は魔王のことを崇拝している。

 この街は、行き交う人が多く、賑わいに包まれている。

 街からは、龍の住む雲を纏う山脈が見え、街の中には、日の光を反射するほど輝く魔王の城がそびえ立っている。

 ここは、信条と讃仰が渦巻く

 アルレシア大陸で最も信仰厚き住民が住む魔王の街。


 『旅人の旅』

 著者:ヘンリー・アレン


ーーー


 二ヶ月が経ちようやく《フロート》に着くことが出来た。この街に来たのは実に十年ぶりとなる。前に来た頃と何も変わらない風景に少し観照深いものを感じた。

 十年前と変わらない街に変わらない自分。

 種族柄仕方が無いと分かっているが、少しは変化が欲しいものだ。


 「あの山……なんだか妙ですわね」


 感傷に浸っていると、

 ティアが山脈を物珍しそうな顔で見ていた。


 「あそこは《龍山脈》ですよ」

 「龍山脈?」

 「戦役時において圧倒的な力で猛威を振るった龍族が多く住んでいた遺跡があると言われているところです」

 「へぇ、そんなところが……」


 あの山脈に龍族が住んでいたという伝説は昔から言われていた。だが、今の世界に龍族はほとんど存在しない。

 

 「それで、フレイの故郷はどっちですの?」

 「ここから北に数日歩けば着きますよ。ひとまず、食事に行きましょう」

 「そうですわね」


 私達は食事を取った。食事は魔物の肉ばかりで美味しくはなかった。

 食事を取っていると入り口の方から気配のような物を感じたので振り向いてみるとアスト王国で出合った魔族の男がいた。

 その男は、明るい金髪をしており、透き通っている淡藤色の瞳。黒色の正装服を纏っておりただならぬ気配を垂れ流している。

 いかにも怪しげな男だ。

 この男は、アスト王国からセフィス神聖王国に向かう途中で偶々会った男だ。

 名前はアルと言うらしい。

 アルは、私を見つけるなり近づいてきた。


 「やぁ、また会ったね」

 「そうですね、すごい偶然です」


 怪しい男、アルは私達の隣の席に座りお酒とつまみのような物を頼んだ。

 アルは、お酒と食事が届くと食べ始めた。


 「おや?前にはいなかった女性がいるね」

 「こちらは、私の冒険者時代のパーティーメンバーです」

 「初めまして。私は、ティア・リーンですわ。

  あなた……いい男ですわね」

 

 彼女は、

 そのアルを見つめながらそう言った。


 「あなたのような美しい方に言われるとは光栄です」

 「アルさん?私の友達に色目を使うのはやめてください」

 「そんな事しないさ。特に君の友達にはね」

 「はぁ、そうですか」


 アルはアスト王国で会ったときも同じようなことを言っていた。

 

 「君にこのスクロールをあげよう。

  きっと君の役に立つだろう」

 「ありがとうございます」

 「くれぐれも危険な目に遭わないでくれたまえよ?

  もしも危険な目に遭ったらその相手を撲滅しないといけなくなるからね」

 「それはどういう?」

 「まだ秘密さ」


 この人の考えていることはよく分からない。

 分からないが、きっと悪い人ではないだろう。

 アルはその後、

 食事を取り終わり、席を立った。


 「それじゃあ、私は失礼します」

 「はい、また会いましょう」

 「いずれまたお会いしましょう」

 「ええ……あ、そうだ。フレイ君」

 「はい?なんでしょうか?」

 「君、故郷に戻るといっていたね」

 「はい、そうですが……」

 「では、フロンによろしく言っておいてくれ」

 「……え?」


 フロンとは、私のお父さんの名前だ。

 アルさんはお父さんと知り合いなのだろうか?


 「アルさんは私の父と知り合いなんですか?」


 私がそう言うと、

 アルは、自分の口元に手を当てながら何かを呟いていた。


 「知り合い、知り合いか……まあ、そうだね。

  知り合いかもしれないし、それ以上かもしれないね」

 「それはどういう?」

 「ハハ、まだ内緒さ」


 彼は笑いながら店を出て行った。

 相変わらず彼は分からない。

 

 私達も食事を取り終わり店を後にした。

 店を出ると日が暮れていたのでこの街の宿で一泊することにした。


 「宿で寝るのは久しぶりですね」

 「そうですわね、街に着くまでは野宿ばかりだったですもんね」


 旅で通る道は途中に宿などはなく、

 野宿ばかりだった。

 冒険者をしていると野宿することが多く慣れているが、宿の方が安心して寝れるもんだ。


 「明日からまたしばらく歩くことになります。

  今日はしっかり体を休めましょう」

 「そうですわね」


 彼女はそう言いながら服を脱ぎだしていつもとは違う服に着替え始めた。

 着替えた服は、露出度がかなり高く男好みしそうな服装だった。


 「えっと……ティアさん?

  何でそんな格好をしているんですか?」 

 「これから体を休めに行くんですわ!」


 そんな格好で、

 体を休められる場所なんてこの街にあったかな?


 「そんな場所この街にありましたっけ?」

 「あら、いっぱいありますわよ。

  街の中ならどこでも良いわけですし」


 ……あ、

 そういうことか。


 「ティアさん……程々にしてくださいよ?」

 「分かっていますわよ。なんなら、フレイも来ます?楽しいですわよ」

 「わ、私は良いです」


 知らない人となんて、

 私には絶対に無理だ。


 「明日は朝から出るので、早く帰ってきてくださいね?」

 「フフ、分かりましたわ」


 彼女は元気よく宿を出て行った。

 その後、彼女が帰ってきたのは夜が明けた早朝のことだった。


 翌日、

 朝目覚めると、

 横のベッドでティアがなんだかテカテカしながら眠っていた。

 

 「ふぁ、眠たい」


 私は、水魔術を使い顔を洗った。

 顔を洗い目を覚ました後、日差しを入れるために窓を開けた。


 「ティアさん。起きてください」


 私がそう言うと、

 ティアは眠たそうに反対方向を向いた。


 「もう……少し……」

 「ダメですよ。早く起きてください」


 彼女は眠たそうに体を起こした。

 体を起こしたベッドは何やら濡れていたが、見ないことにした。


 その宿から出て、旅の身支度を調えた。

 《フロート》の街からセフラグの村まではここから三ヶ月程度掛かる。

 だが、ここからは道が整備されていない険しい道のりになるのでもう一月は長く見ておいた方が良いだろう。


ーーー

 三ヶ月後


 《フロート》を出発してから三ヶ月が経ち、セフラグの村に着くことが出来た。

 もっと時間が掛かると思っていたが、思ったより早く着くことが出来た。

 村の入り口には、若い男が二人剣を携えて立っていた。若いと言っても見た目だけで、実際にはもっと歳を取っているだろう。

 男は私に気がついたのか、私の方をじっと見ていた。


 「私は、フレイ・セフラグです」


 私は、魔神語でそう言った。


 「おお!」

 「やっぱりフレイか、久しぶりだな」

 「はい、そうですね」

 「ちょっと待ってろ、すぐにフロン達を呼んでくるから」


 若い男の内一人が村の中に走って戻って行った。そこから数分待っていると、村の方から走ってくるような音が聞こえた。

 村から金髪の男が出てきた。


 「ハァハァ、本当にフレイが」

 「はい、お久しぶりですね。お父さん」

 「あ……ああ、久しぶり、本当に久しぶりだな!」


 お父さんはそう言って私に抱きついてきた。


 「ちょ、お父さん。恥ずかしいです」

 「良いじゃないか、久しぶりに会ったんだから」


 お父さんは、私を抱いている間ずっと頭を撫でていた。

 私は恥ずかしかったが、今までロクに連絡をしなかったこともあるので受け入れた。走行していると、村の方から若い女の人が出てきた。

 その女の人は、十年前と何も変わらない姿をしていた。


 「ふ、フレイ?本当に……フレイなの?」

 「はい、本当ですよ。お久しぶりですお母さん」

 

 私がそう言うと、

 お母さんは泣き出してしまった。


 「やだ……嘘みたい。

  フレイが帰ってきてくれるなんて」

 「今まで連絡を入れず、すみませんでした」

 「いいのよ、こうして無事に帰ってきてくれたんだから」


 お母さんはずっと泣いていた。

 お父さんが、お母さんを泣き止まそうとしているとティアが近づいてきた。


 「随分といい両親じゃない」

 「はい、そうですね」

 「そんなに恥ずかしがっているフレイは久しぶりに見ますわね」

 「そうですか?」

 「そんなに顔を赤くしているフレイは久しぶりですもの」

 「え?」


 そんなに顔が赤くなっているのだろうか?

 久しぶりに会った両親に私も少なからず緊張していたのだろうか?


 「さぁ、早く入ろう。

  家に戻ってゆっくりと話そう。フレイのお友達にも話を聞きたいしな」

 「お名前はなんて言うんですか?」

 「ティア・リーンですわ。

  お初にお目にかかれて光栄です」


 ティアはいつもとは違う礼儀良く礼をした。


 「ティアさん。

  フレイのお世話をしてくれてありがとうね」

 「お世話になっているのはこっちの方ですわ」

 「あらあら、礼儀がなっていい人ですね」


 両親は、

 私の友達が珍しいのか興味津々だった。


 私達はその後、村で何泊かすることになった。

 こうして、私の旅の目的の一つを終えることが出来た。

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