第二十話:「初めての町:後編」
そこは、
鋼鉄製の剣をも穿つ頑丈の石で作られた天高い壁に囲まれ、金属の光沢を発している鎧を着込んだ兵士達が絶えず巡回している。
街は店と人に溢れ、店は儲かり人は笑う。道行く人々の全員が満足そうな笑みを浮かべながら歩く陽気な街。
この街は、アスト王国戦役過においての最終防衛地点にしてリエイト領最大の最も屈強な都市。
《防衛都市ブルセル》ここは活気と欲望が渦巻く砦の街……。
~旅人の旅~
著者:ヘンリー・アレン
ーーー
アールが持っている本。
《旅人の旅》にはそう書かれていた。
この本は、ある旅人が世界中を旅してその時のことを日記状に綴ってあるものだ。旅人の名前はヘンリー・アレン。
しかし……《旅人の旅》ってもう少しマシな名前は無かったのか?随分とド直球のネーミングセンスだ。
街は、本の内容通り人が多かった。
街には露店が多く、いろいろな物が売っていた。作物に何かを串焼きにしたもの。服に日用雑貨のような物、何かの紙のような物を売っているところまである。
俺は周りの店に気を取られつつもおとなしく座っていた。
数分馬車に揺られ、目的地に着いたのかゆっくりと止まった。
止まった後、馬車の扉が外から開かれた。
「長旅お疲れさまでした。アール様。アリス様。レイナ妃殿下。そして、ルイネス様」
開かれた先には、アリスが家に来たときに一緒に来ていたタキシードを着込んだ歳を取った使用人がいた。
その使用人は、馬車の前に俺たちが汚れないよう布を一枚引いていた。
布が引かれた先には、大きな建物が建っていた。
「さあ、ルイネス。ようこそスロウ家へ」
ここはアールとアリスが住んでいる家。リエイト領で……いや、アスト王国内でも有数の貴族であるスロウ家の現当主が住む屋敷だ。
「これは……すごいですね」
「そうでしょ!ここは、この辺りで一番大きい家なんだからね!」
一番か……確かに大きい。俺が住んでいた家の大きい方だと思ったが、ここは比にならないな。
それに、ぱっと見た感じだが、ここは家と言うよりかはなんというか……学校みたいだ。
「ここは家にしてはかなり大きいですね」
「ああ、そうだね。
ここは、僕達が住む家と共に、戦争時にはここが司令塔の役割を果すことになる。その時に狭かったら不便だろう?」
「なるほど……ここは戦争時において最終防衛地点になるのでしたね。
その時はスロウ家が指揮を取るのですね」
「ああ、そういうことだ。君はやはり有能だ」
アールの不敵な笑み。
それを見る度に昨日の緊張感を思い出す。
「……」
「えっと……アール様?どうかしましたか?」
アールが俺をなめ回すような目で見てきていたので我慢できなくなった。
俺はそっちのけは無いからな!
「ルイネス。僕は君の答えに理解はしたが、納得はしていない。
いつか聞かせてくれるのを楽しみにしているよ」
あ……誤魔化せていなかったのね。
この人はホントに疑い深いな……まあ、今すぐではないらしいから言い訳をゆっくり考えよう。
屋敷の中に入った。
中に入ると、左右に甲冑のような物が飾られその前にはメイドが複数人待機していた。
「お帰りなさいませアール様、アリス様」
「お客人の皆様もよくお越しくださいました」
「お荷物をお預かりします」
メイド達は俺たちの荷物を受け取り、すぐに階段を上がっていった。
俺はアールに一階のある一室に連れて行かれた。
「これから、僕の父がここに来る。
君もここで生活するのなら挨拶をしておいた方が良いだろう」
「そう……ですね。分かりました」
アールの父親か……どんな人だろう?
中間の街に自分の宿を作るくらいの人だろう……案外優しい人かもしれない。俺をこの家に置くのだってきっと領主の許可が必要だったはずだ。
俺がここにいるということは許可をしてくれたのだろう。
そんなことを考えながら待っていると数分が過ぎた。
「……えっと、アール様?ご当主様は……?」
「父は時間にルーズなところがあるからね。
数十分は遅れると思っていた方が良いよ」
時間にルーズ……貴族の人はみんなそうなのか?
そこから、さらに数十分が経ち部屋の外が騒がしくなり始めた。
「・ーー・・・ーー・」
外では誰かが大きな足音を立てながら着実にこの部屋まで近づいていた。その足音は、足音だけでは無く大きな声を上げながら近づいていた。
足音が扉の目の前で鳴り止むと、扉が勢いよく開いた。
「ヘルスの息子と言うのはどいつだ!」
部屋に入ってきたのは、白髪と茶髪が入り交じった髪をしていて、迫力のある顔をしていて、足が悪いのか杖をついている。
「ぼ、僕です」
「お前がヘルスの息子か」
「はい。僕は……」
「声が小さぁぁぁぁい!」
「うっ!?」
こ、声でけぇぇぇ。
この人どんだけ声がでかいんだよ……。
「声が小さいとお前の器まで小さく見られる。自分のことを主張したいのなら自信を持ってはっきりと大きく話せ!」
なるほど一理あるな。
前世でも自分のことを知ってもらいたくば相手の目を見てはっきり聞こえる声で話せと言われた。この人もそのことを言っているのだろう。
「僕は、ルイネス・アルストレアです!
ここで五年間お世話になることになりました!これからよろしくお願いします!」
「よし!悪くない挨拶だ!
わしは、三大貴族スロウ家の現当主にしてリエイト領領主のアルバート・スロウ・アルストレアだ。
ルイネス。わしは、お前の滞在を歓迎する」
アリバートは俺に対して手を差し出してきた。
俺がアルバートの手を握ると強く握り替えされた。
「ここの滞在で己を成長させられるよう頑張るといい」
「はい!頑張ります!」
俺は、アルバートと挨拶をした後部屋に案内された。案内された部屋は、途中で泊まった宿よりもワンランク下がった物になっていた。
あの宿は、スロウ家だけでは無く、一部の重鎮も利用するためここよりも豪華に作られているらしい。
まあ、ワンランク下がったと言っても生活するには十分な物だった。
大きめのサイズのベッドに、服を収納するための物入れ、作業をするための机とイス。ここでの生活は不自由なことは特にないだろう。
この日の夜ささやかなパーティが開かれた。
ささやかなと言っても俺からしたら大きいものだった。
このパーティは屋敷内にいる者のみで行なわれたが、屋敷内には、アルバートの客人やアールの客人、レイナ姉さんや俺など複数の客人がいるため人数的には多くなっている。
「皆の者。今宵は我が孫娘アリスの帰還と共にレイナ様、ルイネスの歓迎パーティを催す」
料理が運び終わり、参加者全員にグラスが行き渡ったことを確認したアルバートがみんなに聞こえるような声でそう言った。
「今宵は宴だ。日々の疲れを払拭出来るよう楽しんでくれ。それでは……かんぱぁぁぁぁい!」
「かんぱぁぁい」
「かんぱぁぁい!」
アルバートの挨拶と共にパーティが始まった。
パーティはアルバートやアール達、屋敷内にいた来賓の者以外にも、使用人やメイドなども料理を食べられるようになっていた。
アールに聞いたところ、
「貴族のパーティでは、使用人達は食事を取ることは出来ないが、これは父が個人的に開いている物だから問題ないよ」
という返答が返ってきた。
ここでも、貴族のパーティを年に数回は開くらしいが、アルバートが個人的にパーティを開くことも多く、その時は「使用人も自由に出来るように」をモットーにしているらしい。
パーティが始まって少し経ち俺はアールに連れられて各所に挨拶回りをしていった。挨拶回りを終え、自由な時間になったためアリスとレイナ姉さんを捜した。
二人はすぐに見つけることが出来た。
レイナ姉さんは、屋敷に来ていた貴族の人に囲まれて身動きがとれない状態になっていた。
「姉さ……」
「レイナ様、是非私の話を……」
あ、今何言っても聞こえなさそうだな。
姉さんと合流するのはまた後にしよう。
アリスは……あ、いた。
アリスは、うろちょろしながら辺りを見渡していた。俺は、アリスの所まで行き、声を掛けることにした。
「アリス?どうしました?」
「師匠がいないのよ……」
「師匠?」
アリスの師匠というと、ヘルスの元パーティーメンバーの凄腕剣士だよな?確かに、ここには剣を持っている人もいないし、ヘルスのような強者感を放っている人もいない……ここにはいないのか?
「アール様に聞いてみましょう」
「そ、そうね」
俺たちは、男の人と談笑をしていたアールの元まで向かった。
アールは、俺たちに気づき談笑を切り上げてこっちの方に向かってきた。
「ルイネス、アリス。何かようかい?」
「あの……アリスの剣術の師匠って今どこに?」
「お父様。師匠がいないの」
「ああ、彼女なら今はいないよ」
「えっ?」
アリスは驚いた様子で息を漏らした。
いきなり師匠がいないなんて言われるとそんな反応になるよな……俺もフレイが次の日は休みにしますと言ってきたときはこんな反応になったものだ。
「彼女は今、アリスが一月の間いなくなるため迷宮に潜ると言ってね、現在は迷宮に潜るためにセルード王国にいるはずだよ」
「迷宮……」
「ふ、心配はいらないさ。彼女は強いしセルード王国周辺にある迷宮くらいなら問題は無いだろう。それに、彼女はアリスがルイネスの家に向かった翌日に出ているからそろそろ帰ってくるはずさ」
「そうなのね……分かったわ!」
アリスはさっきまでの暗い感じは一切消え、いつもの明るいアリスに戻っていた。
その後はさっきのことを気にしていないように料理を頬張っていた。
数時間が経ち、パーティは滞りなく行なわれた。俺は、パーティ終了後自室に戻り本を読んでいた。
今読んでいる本は、スロウ家の書庫に置いてあった物だ。アールに本を自室に持ち帰っても良いか聞いたところ、「外に持ち出すのでは無い限り好きに使ってもらって構わないよ」と言われたのでとりあえず二冊ほど自室に持ち帰った。
持ち帰った本は、
・【三大聖神伝説の歴史】
聖帝龍王ディエード、聖神レインズ、聖セフィスが魔神を討伐し三大聖神と呼ばれ始めるまでの歴史が綴られた本。
・【魔神討伐の真相】
-・-・--・---・ー
俺はこの二冊の表紙を見て持ってきた。
【三大聖神伝説の歴史】は中にもきちんと内容が書かれている。だが、【魔神討伐の真相】の方は何が書かれているのか分からなかった。
なぜ、分からなかったのかというと、【魔神討伐の真相】の方の表紙は人間語で書かれている。だが、中身は見たことの無い文字で書かれていた。いや、見たこと無いものでは無かった。
俺は、自分の持ってきた荷物の中からセバスにもらった本を取り出した。
「これと、これは……はっ!やっぱり!」
俺は、セバスにもらった本の文字と書庫から持ってきた本の文字を見比べてみた。すると、中の文字は同じ物だった。
アールにこの文字はなんなのか聞きに行ってみたところ、予想外の返答が帰ってきた。
「ああ、それかい……実は、僕も知らないんだ」
「え?それは……どういう?」
「その本は、父が旅をしているときに謎の商人から買い取ったんだ」
「謎の商人?」
「ああ、『フードを深くかぶっていたが、輝く銀髪がはみ出ており、赤色の三白眼で目元は鋭く無愛想そうな謎の商人』と父は言っていたよ。
その商人が、『この書 理解示す者現れし時 我が主の望み 叶うだろう』と言っていたらしくてね。父は気になって購入したらしい」
なんだ、そのいかにも怪しい商人は……。
この本を理解示す者が自分の主の望みを叶える?意味が分からないな……。
「そんな、怪しい人から購入した物って危なくはないのですか?」
「大丈夫さ。今まで何も起こっていないわけだし」
「そういうものでしょうか……」
まあ、何も起こっていないのなら問題は無いか……それよりもこの本を解読できるか挑戦してみるか。
……あっ!そうだ。セバスに聞いてみたら早いんじゃないか?あいつ、この文字の事知ってそうだし……いや、ダメか。
俺は今、家との文通は禁止されているし、セバスなら「坊ちゃまならご自身でも読み解くことは可能でしょう」とか言ってきそうだ。自分でやるしか無いな。
「アール様。この本をしばらく持っておいても良いでしょうか?」
「なぜだい?読めない本を持っていても意味は無いだろうに」
「実は、これと同じ文字が書かれた本をセバスにもらっていて、解読できるか挑戦してみようと思って」
「なるほどね……良いだろう。やってみるといい」
「ありがとうございます!」
俺はその本を持ち帰って解読作業に入った。
数時間挑戦してみたが一文字も読み解くことが出来なかった……はぁ、頑張ろう。
ーーー
次の日
次の日の朝になった。
一夜かけて解読に挑戦していたが未だに読み解けていない。本当に大丈夫だろうか……自信は無いが、まだ時間はある。ゆっくりとやっていこう。
朝食後、俺は今解読作業をしようと思ったが、部屋の前でアリスに呼び止められた。
アリスは、俺の手を引っ張って外に出た。
「あ、あの……アリス?どうしたんですか?」
「ルイネス行くわよ!」
「えっ?どこに?」
アリスはどこに行くのかを言わずに門を出ようとしたので一度止めてないようを聞くことにした。
「アリス。どこに行くんですか?」
「あそこよ!」
「あそこ?」
アリスは基本的に主語が無い。
目的だけ言って行動しようとする。まあ、そこがアリスの良いところでもあるんだが……。
考え込んでいると後ろについてきていたレイナ姉さんが話の意図を教えてくれた。
「アリス様は、ルイ君に街を案内したいと言っているんですよ」
「僕に?」
「ええ、アリス様がルイ君に何かしてあげることは無いかといってきたので、私が、『街を案内しては?』と言ったところ、『それよ!』と言って飛び出してしまいました」
アリスの声真似うまいな。
それよりも、俺に何かしたいか……これは、アリスからの俺の評価が少しは高くなっていると言うことか?着実にアールの計画に近づいている気がする。
まあでも、今は計画のことは忘れて、二人についていこう。
「なるほど、そういうことなら。
それでは、アリス、姉さん。よろしくお願いします」
「任せなさい!」
「ふふ、私も大して分かりませんが、お任せください」
二人は俺の手を引いて街に出た。
ブルセルの街は俺がアスフィと行っていた街とは違って色んな店があった。
雑貨が売っているところ。果実や野菜が売っているところ。肉や加工した肉が売っているところ。串焼きなどの調理された物を売っているところ。ホントにいろいろな物が売っている。
果実が銅貨一枚。肉が銅貨三枚。布などの雑貨が銀貨一枚。ふむふむ、なるほど……食べ物類は基本的に銅貨一、二枚で買えて、雑貨が品質別だが、銀貨一枚以上か。
俺は、そう考えながら手帳にメモをしていた。日本語で。
「ルイ君何をやっているんですか?」
「これは、物の物価を調べているんですよ」
「物の物価?」
「はい。基本的な物の物価を知っていれば、別の街に行ったときに余分にお金を取られることも無くなりますし、自分で何かを売り出すときにも物価通りに売ることが出来るので、覚えておいて損は無いです」
「なるほど……ところで、その文字は何語です?」
ああ、そうか。昔の癖で手帳に日本語で書いていたけど読めないのが当たり前か……どう言うか。まあ、アールじゃあるまいし適当なごまかしで良いか。
「これは、あれですよ。僕が考えた文字です」
「ルイ君が考えた文字……ですか」
「はい。自分しか分からない文字にしておけば、例え手帳の中身を見られても読まれないので情報の漏洩を抑えられます」
「なるほど……それはいい手ですね」
レイナ姉さんは少しの間ブツブツ何かを言っていた。
俺たちは街中をゆっくりと歩いていた。
アリスとレイナ姉さんの説明を聞きながら気になる店に入る。そんな感じで楽しみながら歩いていた。
やがて、右の方に随分古そうな店が出てきた。
その店の看板には、人間語で本屋と書かれていた。麻植は、一目散に中に入った。
中には、古そうな本棚に本が数冊立てられていた。本の数は決して多く無いが、古そうな本ばかりだった。
「これは……うわっ!た、高!」
俺が気になって手に取った本の金額は金貨八枚と書かれていた。
金貨八枚というのは日本円で八百万円相当だ。
この本は、【スクルドの転移】という本だった。
転移という文字が気になって買いたかったが、この金額は払えない。諦めよう。
俺は、本屋を出てアリスとレイナ姉さんと合流した。
「何よ?買わなかったの?」
「ええ、さすがに金貨八枚は買えなかったので諦めました」
「それは高かったですね」
「そうなの?欲しいならお父様に頼むわよ?」
アールに頼むか悪く……いや、ダメだ。親のお金に頼っているままではアリスが、悪質な社長令嬢と同じに成長してしまう。それはいけない。
「それは好ましい提案ではありますが、良いですよそんな事しなくても」
「どうしてよ!」
「アリスはまだお金がどういう物かを理解していません。確かにアール様やアルバート様に頼めば何でも買ってもらえたかもしれません。ですが、僕達が成長すると自分でお金を稼がないといけません。
その時、お金の重さを知っていなければアリスが苦労することになります。
なので、お金がどういう物かを知るまではお断りします」
「わ、分かったわよ!でも、私お金持ったことが無いわ」
「一度もですか?」
「ええ」
「なるほど……」
アールもアルバートもアリスに対してあまそうだもんな。
どうするか、今のうちからお金がどういう物かを知っておいた方が良いと思うけど……。アールに聞いてみるか。
「では、僕が戻り次第アール様にお願いしてみましょう」
「ホント!」
「ええ、ホントです」
「やった!」
アリスはうれしそうに飛び跳ねた。
アリスもお金に対して興味はあったのだろう。まあ、喜んでもらえるならいくらでも頼んであげよう。
その後、俺たちは街を一回りした後に屋敷まで戻った。屋敷に戻ってアールに聞いたところ許可が出て、アリスは月に銀貨五枚のお小遣いが出ることになった。
次の日の夜。
俺はこの街に来る際、アリスに魔術を教えると約束をしていた。
なのでフレイに習ったよう基礎から入ろうと思いアリスの部屋を訪ねたところ「師匠と一緒に始めたい」と言うことなので今日はやめようと思った。
俺が部屋に戻ろうとしたとき屋敷の一階の方が少し騒がしくなった。俺と、アリスが気になって下に降りたところ扉の前に一人女性が立っていた。
その女性は、浅黒い肌をしており、白色の髪の毛を腰の位置まで伸ばし、頭部には猫耳のような物が生えていて、お尻からは尻尾が生えている。生えている毛のほとんどが白かった。左目は何かに切りつけられたのか傷の上から眼帯をしている。そして腹筋がすごい。
この人は……獣人族か?
俺がそんな事を考えていると、アリスが突如震え始めた。
「あ……ラ、ライリー!」
アリスはそう言ってその女性に飛びついた。
女性はアリスが飛びついてきたのに、一瞬たりともブレたりせずアリスを受け止めた。
「アリスお嬢様。ただいま」
「おかえり!」
俺が状況に困惑していると、アリスがその女性と共に俺の方に来た。
「ルイネス!ルイネス!この人が私の剣の師匠ライリー・ドーガよ!」
「初めましてだな。私はライリー・ドーガ。今後、君から魔術を学ぶ者だ」
「初めまして僕は……」
「ルイネスだろ?ヘルスの息子の」
「父様を知っているのですか?」
「ああ、奴とはしばらくパーティーを組んでいた」
そういえばそんな事をヘルスが行ってたな……。
元パーティーメンバー。そして、ヘルスよりも凄腕。ヘルスよりも強いって尋常じゃ無いな……。
「父様がご迷惑をかけたりしませんでしたか?」
「奴には数え切れないほど迷惑をかけられたな。特に、迷宮に潜ったときは……まあ、今は良いだろう。
私はお前から魔術を教わることになっている」
「はい。聞き及んでいます」
「では、これから頼む」
そう言ってライリーが手を差し出してきた。俺はその手を握り返した。
おお、この人の手すごくゴツゴツしている。マメが出来ているというよりかは、剣をずっと握っていて手の皮が厚くなっているような感じだ。
「はい。お任せください。
僕の方も剣術を教えてもらうことになっています。よろしくお願いします」
「ああ、任せろ」
俺たちは握っている手に力を込めた。
ライリーの手の力がどんどん強く……痛い痛い痛い。手が潰れる!!
俺が涙目になったところでようやく手を離してもらえた。




