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VRMMO「Malice」―銀髪少女の悪意  作者: Hon_S
第一章:プロローグ ~リセット&リスタート~
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第9話:訓練

収穫を始めようとする農夫のように草刈り鎌を持ち、

のそのそとマイペースに歩くキノコたちを見つめる。


草原には大小さまざまなキノコが存在し、

大半は危険度も低く簡単に倒せるのだが、狙いはただ一つ。


少々やっかいだが経験値のおいしい『のっそりマッシュ』だ。


エリンギを縦に短く横に長くしたような見た目で、

体長は2メートルとプレイヤーほどの大きさがある。

このフィールド内では経験値が非常に高いが、見た目の通りにHPが高い。


こちらから攻撃しない限り攻撃はしてこないが、

初心者フィールドには不釣り合いなほどのフィジカルの強さと

攻撃力があるため、狩ろうとするとほとんどが返り討ちに遭う。


ただし、Maliceでは、十分な力と重さをもって弱点をついた攻撃を行うと、

レベルやHPに関係なく一撃でプレイヤーやモンスターを倒すシステムがある。


「クリティカルヒット」と呼ばれている。


人間でいえば、首を両断されたり、心臓や脳をひと突きされたら

即死したりするのと同様である。


妙にリアルな仕様だ。


まず近くののっそりマッシュに狙いを定め、一直線に駆ける。

走りながら体を右後ろに捻り、十分にからだのバネに力を溜める。


草刈り鎌に一番体重がのる間合いにまで近づき、のっそりマッシュの弱点である

キノコの傘と柄の接合部を力強く切り裂いて、一撃のうちに絶命させる。


レベルが2に上昇した。


「すごい!ジュンさん、クリティカルヒットがでました!もうレベル2です!」

「それほどでもないですよ。」


キャラクター自体の性能は大幅に落ちたが、効率的な力の運び方、

適切な間合いの取り方、対象の動線の予想など、

プレイヤースキルとして培ったものは消えていない。


コロッセウムでトップを争うプレイヤーからすれば、

適正レベルから離れたモンスター相手でも

クリティカルヒットを出すことは難しいことではない。


引き続き、右の視界にいる別ののっそりマッシュに狙いを定め、

迅速な動きで接合部をさらに一閃。


対象を絶命させることで、レベル3に成長した。


「す、すごい。クリティカルヒット2回目。……本当にレベル1のキャラクターを使っているんですよね?」

「残念ながら、そうですね。」


レベル1でなければどれだけよかったか、と心の中で呟きつつ、

レベルアップボーナスとしてステータスとスキルのそれぞれに付与されるポイントを振り分ける.


ステータスには、攻撃力やキャラクターの力に影響するStrength(力)、

命中率に影響を与えるDexterity(器用さ)、キャラクターの素早さなどに

影響をあたえるAgillity(機敏さ)などがある。


大鎌使いは比較的武器自体が大きいため、

他の職業に比べて振り分けるStrengthは高めとなる。


最低限のstrengthにポイントを振り分けて

残りはdexterityとagilityに均等に振り分ける。


最近はstrengthやagilityだけに全てのポイントを

振り分けるというスタイルも流行っているようだが、

自分はバランス感を大切にしたい。


狩りでも対人戦でも、奇をてらって勝ちに行くのではなく、

王道を貫くのが自分のプレイスタイルだ。


スキルは、『2連裂き』に振り分ける。

システムの力を借りて高速で鎌を2回振り抜くスキルだ。


その後も、のっそりマッシュの討伐にはさらに勢いがつき、アイリが見守る中、

2時間ぶっ通しでのっそりマッシュを一撃で刈り続け、

300体ほど倒して一気にレベル20へと成長した。


「300体を全てクリティカルヒットで倒すなんて、なんか変なツール使ってませんよね…?さすがに驚いています……。」


アイリの愛らしいエメラルドの瞳に見つめられると、使っていないのに、

思わず使っていると間違った自白をしてしまいそうになる。


「……つ、使ってないですよ。そういうものは使えない高度なセキュリティが敷かれているのはご存知ですよね。このゲームをサービス開始当初からやり込んだ甲斐があっただけです。」

「普通、レベル5にするのだって1日半ぐらいはかかりそうなものですが、ましてや2時間でlv20って、ちょっと早すぎます。」


アイリの疑問はもっともで、クリティカルヒットを狙うのは相当に難しい。


というのも、クリティカルヒットを発生させるためには、

そもそもモンスターの弱点を知っていて、

攻撃に一番力が乗る効率的な運び方と間合いで、自身の全力を振り切って

ほんの小さな弱点部分を正確に切り裂かなければならない。


左手に持った針の穴に、右手にもった糸を

全力で振りかぶって正確に差しこむようなものだ。


しかし、それは”通常のプレイヤー”なら、の話だ。

自分はコロッセウムでトップの座を争うプレイヤーである。

紙一重の瞬間を何度も潜り抜け勝利を勝ち取ってきた。


「思ったより早かったですね。自分で想定していた以上に斬撃が正確になっていたようです。このペースなら、ざっくりですが6日で50レベルとちょっとくらいはいけるかもしれない。」

「え、ええっ!?私、今の50レベルになるまでに2か月近くかかったんですけど!」

「普通のプレイヤーならそのくらいですよ。」

「なんかとてもイヤミな言い方です。」


眉間にしわを寄せて不満げな表情をするアイリも大変愛らしい。


しかし、このハイペースでレベル上げを行っても、

目標の91レベルまでに達するのはざっくりと5か月はかかるだろう。


やはり、今年のコロッセウムには間に合わない。

なにか打開策はないものか、となおも諦めきれないジュンに対し、

アイリが「あの…」と質問をする。


「経過観察期間の3か月でどのくらいのレベルを目指しているのですか?」


首をかしげながら、愛らしい瞳でジュンを見つめるアイリ。

通常運転でその愛らしさ、どうにかなってしまいそうだ。

レベル上げの一番の障壁は、アイリの瞳の美しさに飲まれてしまい、

レベル上げの時間が無くなってしまうことだろう。間違いない。


「あの、ジュンさん?」

「……はっ。」

「だ、大丈夫ですか?」


あなたのせいですよ、とは言えなかったが、アイリの質問に答える。


「は、はい、そうですね。このペースであれば、3か月もあれば、82~3レベルぐらいはいけるかなと思います。そこから90レベルにあげるまでには、さらに2か月程度必要ですが。」

「……うーん。先輩面していたのが恥ずかしくなってきました。」



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