表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

紫陽花(秘書編)

作者: 日下部良介

観月さんが連載中の『習作・短編の部屋』45話(花言葉ものがたりより「紫陽花」)において、ボクがリクエストした“紫陽花”で一話書いてくださいました。そのお返しに書いたコラボ作品になります。

 いつかこうなるのではないかと覚悟はしていた。

 私と一緒に居ても彼女は周りに居る他の男にばかり注意を払っていた。まるで、掘り出し物を物色しているかのように。それでも私にとって彼女は他のどんな女性よりも愛おしかった。


 突然だった。

「私、彼と結婚することにしたわ」

 彼女の言う“彼”とは私が秘書として仕える会社の社長。同時に親友でもある男だった。




 彼女とは彼女がまだメイドカフェなどと言うところで働いている頃に知り合った。私は一目で彼女を気に入り毎日その店に通った。彼女が欲するものは何でも買い与えた。彼女はたちまち私のものになった。

 いつものように私は彼女と二人で飲んでいた。たまたま居合わせた“彼”は彼女の目を引くには十分な存在だった。

 私が席を立った隙に彼女は彼と連絡先を交換していた。それから私に内緒で二人は密会を重ねた。そして、彼女は彼と結婚することを決めたのだ。




「彼の地位と金に目がくらんだか」

 私の言葉に悪びれることなく彼女は笑った。

「悪い?」

 私は苦笑し席を立った。


 昔の男がいつも彼の傍に居る。そんなことなど意に介さず彼女は演技を続けた。そんな彼女が今日は紫陽花のネイルをしている。

「素敵なネイルですね」

「紫陽花よ。きれいでしょう。私の大好きな花なの」

 突き出された手に私は唇を寄せた。彼女を愛おしく思う気持ちは今でも変わらない。

「たしかにあなたにぴったりですね。移り気、浮気…そして毒がある」

 彼女はにっこり微笑んでその場を後にする。一度毒に侵された人間が決して彼女を手放しはしないことを彼女は知っている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] わあ、あじさいの短編! 書いてくださってありがとうございます。 私の話の裏を読んでくださったようなお話で、すごく嬉しいです。 優しい秘書さん。お話に奥行きが出ました。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ