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宜しくおねがいします

「あばばばばば!!!」


吹き荒ぶ吹雪の中、もう一度言う。吹き荒ぶ!吹雪の中!!に突然放り出された私は冗談ではなく身も凍る思いで己をかき抱く。

冷えと震えと動揺から出たよくわからない悲鳴が風の音にかき消されてゆく。


シャ、シャレにならん!!凍死してしまう!!


見覚えのある場所に飛ばされたのはまだよかった。

しかし気候に大問題があった。


ここは‥‥どこ?もしかして私‥‥また召喚されちゃったのー!?


‥‥なんて茶番をする間も無く肌を刺す風に早々と根を上げた。


だって今の格好、ノースリーブ!ショートパンツ!!極め付けは裸足!!!


脇に挟んであったバスタオルを素早く羽織るが何の解決にもならずバタバタとはためく。

足裏の冷たさに耐えかねて足踏みをする。


考えてもみてほしい。

吹雪の日。人の通りの少ない街中の広場でタオルを巻いた薄着の女が気が触れたように小刻みに足踏みをしていたら。


正気を疑う。

恐怖である。

変態である。


とにかく暖を取れる所に移動しなければ広場のど真ん中で冷凍マグロの様になってしまう。

きっとこんな状態でなければ懐かしく感じていただろう中世のヨーロッパに似た外観の街中を髪を振り乱しバスタオルをはためかせ駆け抜けた。





ドンドンドンドン!!!


曖昧な記憶を頼りにたどり着いた赤瓦でできたとんがり屋根の家。

住宅街の中にあるその家は土台が少し高く、扉までに赤煉瓦の階段が3段ほどあるがバレリーナのごとく全飛ばしで跳躍し、和太鼓の奏者のごとく木製の扉を叩きつけた。


「ちょっと何!?今日は休みよ!!この天気がわからないの!?」


怒鳴りながら開かれた扉から黒いローブを着た人物が現れる。

2年前と変わらずベリーショートの髪と瞳は燃えるような赤。

懐かしさと安堵から涙がせり上がってきて思わず豊満な胸に飛び込んだ。


「師匠ー!!!助けてくださいぃぃぃ!!」












「‥‥まさかこんな吹雪の中そんな格好で現れるなんてビックリだわ」


飛び込んだはいいが、感動の再会は見事に躱わされ無様に床に転がり込んだ私は驚いていた師匠に浴室へと放り込まれた。

現在暖炉の前で更に身体を温めている。


「私だって突然また召喚されてビックリしてます」


ゆらゆらと揺れる暖炉の低い焔を眺めていると湯気の上がるマグカップを手渡される。


「2年振りかしら?」

「そうですね、師匠ってば感動の再会避けるんですもん、ひどくないですか?」

「身の危険を感じたのよ」


逞しい腕で豊満な‥‥筋肉で盛り上がった豊満な胸をかき抱く師匠。


彼女、いや彼はこちらの世界に召喚されてから私に魔法を教えてくれた師である。

年はおそらく30代前半。筋骨隆々とした逞しい身体に涼しげなお顔。そしてとても優秀な魔導師。とくれば思いを寄せる女性も少なくはない。

‥ただし話すのを聞いていなければの話だけど。


「それはともかく、元弟子のよしみで私を帰すか匿うかしてくれません?とゆうか疲れてるので泊めてください」

「あんた、2年の間に図々しいというか逞しくなったわねー。昔はもっとこう、健気な感じじゃなかったかしら?」


全裸の元護衛騎士が一瞬脳裏をよぎり、いろいろあったんです。としかめ面で答えれば興味なさげにふーんと呟き考え込む師匠。


「すぐに帰すのは難しいわ」


やがて出た答えにやっぱりそうかと肩を落とす。

召喚には大量の魔力が必要らしく気軽に行えるものではない。誰が私をよんだのか知らないが本当にいい迷惑である。


「あと、匿えって事は聖女として名乗りをあげるつもりはないのね?でもウォルターちゃんにだけでも「ずぇぇぇっったいに!嫌です!!会いません!!」


師匠の言葉を遮り、絶対にの所で演歌歌手のごとくこぶしを効かせて拒否する。

あんな形で失恋させられてどんな顔して会えというのだ。


「‥‥わかったわ。なんとかしましょう」


持つべきものは話のわかるオネェの師匠である。

しばらくの沈黙の後、根負けしたように承諾した師匠に嬉しさのあまり飛びつくがまたあっさりと躱された。

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