第一回黒猫杯、開催宣言
スタジアムが完成した。
と言っても、サッカーグラウンドの周りに観客席が取り付けられただけのようなものだけど。
だけどこれで夢にまた一歩近づいた。
達成感がすごい。
だけどまだ夢半ば、むしろここからが本番だ。
まずは、サッカー大会の開催を宣言した。
大会の日は今から一ヶ月後。
内容は次のとおりだ。
『第一回 黒猫杯
○月△日にサッカーの大会である黒猫杯を開催します。
上位チームには賞金とトロフィーとメダルが授与されます。
大人の部
一位 金貨一万枚と黒猫杯とメダル
二位 金貨五千枚とメダル
三位 金貨三千枚とメダル
四位 金貨千枚とメダル
参加者全員に公式サッカーボール
子供の部
一位 金貨千枚と黒猫杯とメダル
二位 金貨五百枚とメダル
三位 金貨三百枚とメダル
四位 金貨百枚とメダル
参加者全員に公式サッカーボール
当大会は、黒猫商会が考えた「サッカー」というもので競い合う大会です。
ルールを覚えて、ふるってご参加下さい。
大会に参加するには、参加費を払って頂きます。
参加費は大人の部は一チームにつき金貨一枚、子供の部は一チームにつき銀貨一枚です。
また、一チーム最低十一人必要です。
十一人に満たないチームは参加できません』
これが書かれた高札とルールが書かれた高札を、冒険者ギルド、商人ギルド、城門、人が多い場所、そしてスタジアム前に立てた。
スタジアム建設の時、ドラゴンがたくさんやってきたので、認知率は百パーセントに近い。
今では毎日人が見に来ている。
ルールは、紙に書いた物も冒険者ギルドと商人ギルドとボールを置いてくれた店で配ってもらっている。
ルールがあるからこそ競技として成立する。
しかし、賞金を手に入れるために手段を選ばない人が出てきても全く不思議じゃない。
なので、選手を従わせることができる審判が必要になるんだけど……。
思いつくのは竜族のみなさんしかいない。
なので、竜族のみなさんに審判をお願いした。
大会の日まで、がんばってルールを叩き込んで頂きたい。
高札を立てて大会をしらせると同時に、冒険者ギルドや商人ギルド、その他店に置いてもいいと言ってくれた店でサッカーボールの販売を始めた。
それから、サッカーグラウンドも開放した。
グラウンドは、サッカーの練習をする場合のみ自由に使っていいことにした。
ただし、一チーム一日二時間まで。
こういう場合、必ず決まりを守らない輩が出てくるものなので、バハムートさんの城のドラゴンを雇って、警備員として各所に一人配置した。
さすがにドラゴンを相手に馬鹿をやる輩はそうそういないだろう。
参加費の値段設定は正直これが適正かどうか全然わからない。
日本人的感覚で考えれば、参加費一万で賞金一億の素人大会に参加できるなら全然安いって思った。
でもここはガイア、いろいろと日本とは違う。
だからまぁ、値段は適当だ。
参加者が多すぎたら、それを理由に次回から参加費を上げればいいし、少なすぎたら安くすればいい。
今回は大会一ヶ月前の告知なので、ケモッセオの近隣の街や村あたりまでは、情報が伝わってから参加申請をする時間的猶予はあるけど、さらに遠い街や村の人は距離的に間に合わないだろうとのこと。
ケモッセオは大会を開く場所としては、地理的にはけっこう最悪に近い。
大陸中からの参加を想定するなら最高に近いけど。
次回が開ければ、次はもっと国の中央あたりで開ければいいなぁ。
まぁ、行き当たりばったりだが、見知らぬ場所で初めての事をするんだから、何はともあれやってみろだ。
「こんにちわ、アキナさん。
どんな感じになってますか?」
俺たちは、商人ギルドにやってきていた。
大会の開催を宣言してまだ三日だけど、気になってしょうがなくて来てしまった。
「みなさん、こんにちわ。
参加チームは、まだありません。
ですが、サッカーボールはけっこう売れていますよ。
それにルールが書かれた紙はたくさんの方がお求めになってますし、大会に関する問い合わせの数もかなりあります」
「すみません、本当にお手数おかけして……」
「いえいえ!
新しいことを始めるというのは楽しいことです!
それに携わることができて、嬉しく思っていますよ!」
「そう言って頂けると助かります。
あ、これは差し入れのプリンです。
従業員のみなさんの分もありますので、食べて下さい」
「まあ!
ありがとうございます!
皆喜びます!」
アキナさんが一番喜んでいるように見えるが、まぁそこは触れないでおこう。
「では、今日は失礼しますね。
みなさん、よろしくお願いします」
一礼して商人ギルドを後にし、そのまま冒険者ギルドに入っていった。
「おう、ジズーたちか」
「こんにちわ、コロさん。
どんな感じですか?」
「冒険者の間でかなり話題になってるぞ。
ルールを見る限り運動系の大会ってわかることもあって、高ランク冒険者は特に盛り上がってるな。
一チーム十一人だから、今はメンバー集めで賑わってるって感じだな」
「あ、そっか。
まずはチームのメンバー集めってのがあったか。
やっべー頭から抜けてた……。
そりゃーまだ参加チームがないのも当然か。
大会が一ヶ月後ってのは早すぎたかなぁ……」
「んー、まぁいいんじゃねーか?
よくわからないものには金を出さないってのは普通の考えだが、第一回大会で賞金がしっかり支払われれば次回から参加者はかなり増えるだろう。
宣伝にあの賞金総額はやりすぎとは思うが、豪華であればあるだけ夢はある。
たとえ参加者が少なかろうと、賞金はしっかり支払われるということを宣伝するための大会だと思っとけばいいだろう」
「なるほど」
「まぁ、少なくとも俺のチームとアキナのチームのニチームは参加は確定してるぞ。
賞金はいただくからな!
ガハハハ!」
「おお、参加してくれるんですか!
てかアキナさんもですか?」
「おう、俺は昔の仲間とギルド職員でチームを作ったぜ。
アキナも商人ギルドでチームを作ったって言ってたぜ?」
「おおおお、そうなんですか!
嬉しいなぁ。
もし俺たちのチームと当たったら、お互いがんばりましょうね!」
「え、お前らも参加すんの?
主催者なのに?」
「俺は参加しませんが、バハムルとフランは張り切ってまして。
まぁ、サッカーとはこんな感じのものだよってことを知ってもらうために参加するっていう意味がありますが」
「マジか、ドラゴンと天使が相手とか無茶だろ!」
「ちゃんと明記してる通り、魔法は無力化されますから大丈夫ですよ!
それにサッカーは、身体能力が高ければいいというものではありませんし」
「ま、まぁ、二位でも賞金は出るからいいけどな。
ひたすらお前たちと当たらないことを祈るだけだぜ」
「そればっかりは運ですね。
あ、そうだ。
プリンを持ってきたのでどうぞ。
職員のみなさんの分もありますので」
「おう、プリンか!
ありがとな!
おいみんな、みんなにプリンの差し入れだとよ!
ちゃんとお礼言っとけ!」
「「「「ありがとうございます!」」」」
「いえいえ、ではみなさん、よろしくお願いしますね」
一礼してギルドを出た。
次はサッカーグラウンドに行った。
そこにはサッカーボールを持った人たちがそこそこいて練習していた。
「おー!
ボールで遊んでいる人がいるのだ!」
「よかった、とりあえず問題はなさそうだ」
俺たちは大会の開催まで、できるだけケモッセオに来てグラウンドで練習することにしている。
これは勝つためとかではなく、サッカーというものを知ってもらうためだ。
とはいえ、ここはガイア。
地球の常識からはずれたサッカーが生まれても不思議じゃない。
俺たちの練習を参考にするも良し、自分たちのやり方を確立するも良し。
質問されれば答えるし、一緒に練習するのもアリだ。
毎日ケモッセオに通うのは大変だけど、いつもゴロゴロしてるフランが一番張り切ってるからまぁいいか。
今もフランはクリスたちと何やら練習している。
フランがスッと前に出た。
一瞬遅れて、レオがクリスにパスを出す。
「クリス!
あっしのことちゃんと見てないからオフサイドになるんだし!
ボールだけ見るんじゃだめだし!」
あれは……、クリスがディフェンダーの裏をとる練習なのかな?
もうそんな本格的で専門的な練習してるの?
ガチすぎるだろフラン……。
ドカッ!
何やら音がしたので見てみると、バハムルとアルフレート倒れていたが。
「あいたたた。
ごめんなのだ、大丈夫か?」
「全然大丈夫だよ、気にしないで!
でも今のはファウルだね」
「むむむ、相手がいると難しいのだ……」
バハムルはアルフレートを相手にしてマルセイユルーレットの練習をしていた。
俺が最初にマルセイユルーレットを教えた時に、「俺が大好きだったサッカー選手が使っていた技」と言って教えたせいか、バハムルはかなりルーレットにに拘っている。
拘りを持つのはいいことではあるけど……、怪我をしないことを祈るばかりだ。
グラウンドの使用は、一チーム一日二時間までと決めてある。
二時間後、練習を終えて家路につく。
「一回もうまくいかなかったのだ……」
「大会まで時間はあるよ、練習あるのみだ」
「うん、がんばるのだ!」
フランとクリスたちも今日の反省をいろいろ話してるっぽい。
みんな楽しそうなのが一番嬉しい。
うーん、なんというか……、部活の帰りみたいだ。
青春だなぁ。




