生活環境を整える
薫子さん、澪、雫の三人が帰ってきた。
とても嬉しいことだけど、喜んでばかりではいられない。
早急に家をなんとかしなければいけない。
ちなみに、一緒に住むのは全部で九人。
俺、薫子さん、澪、雫、フラン、バハムル、クリス、レオ、ロナの九人だ。
フランは俺の監視と薫子さんの御用聞きという役割で一緒に住む、という感じで天使族の上司を説得したらしい。
バハムルは俺たちと一緒に暮らすのはすごく勉強になるとハバムートさんを説得した。
クリスとレオもバハムルを援護射撃した。
竜族は多種族と比べて随分と遅れていると、俺について獣人の国に行った際に感じたと。
これからは多種族と交流を持ち、良いものは積極的に取り入れていくべきだと。
エキドナさんもその意見に賛同したのでバハムートさんの許可は下りた。
バハムルは、護衛としてクリスとレオを指名し、さらにエキドナさんが薫子さんやバハムルの世話係としてロナを同行させることを決めた。
ちなみにロナは、バハムートさんに仕えるメイドさんだ。
城に行った時に何度か話したことがある。
この九人が住む家を急いで建てないといけない。
ちなみに俺は猫だから部屋はいらないと言ったが、却下された。
リビングにでも寝るスペースを用意してくれれば十分なんだけどなぁ。
まぁとにかく、かなり大きな家を建てることになる。
ここで大活躍したのが澪と雫の二人だった。
日本から持ってきた物の中に土木技術や建築技術や設計に関する本など、家造りに使える本がたくさんあった。
もちろん専門家がちゃんと建てる家には及ばないが、何も知らずに建てるよりは遥かにいいに決まっている。
設計や作業の指示等は澪と雫が担当し、重いものもへっちゃらなドラゴンの方々には力仕事を担当してもらい、加工などの細かい作業は俺とフランが担当した。
九人で住む大きな家は想定外だったけど、澪と雫は日本にいる間から家の建設について勉強していたようで、家造りはすごくスムーズに行われた。
ドラゴンの三人が融通のきく重機といったようなすさまじい働きを見せてくれたおかげで、家は一週間ほどで完成した。
ちなみにバハムルは澪と雫の傍で二人にいろいろ質問しながら家造りを見ていた。
家はとても大きなものになった。
二階建てで、一階部分は主に来客用スペースで客室が六部屋作られた。
広いホールやら食事スペース、キッチンもある。
この家に来るお客さんは、バハムートさんたちや天使族のお偉いさんなどが考えられるので、ちょっと豪華な感じにしたらしい。
二階部分は俺たち用で、それぞれの個室が作られた。
二階にもみんなで食事をとる部屋とキッチンがある。
トイレとお風呂も一階と二階どちらにもある。
ちなみにこの世界のトイレ事情は、庶民レベルだと排泄物は焼却処分している。
王族貴族の一部では、クリーナーアメーバというモンスターというか益虫というか、排泄物などを消化して匂いも消してくれるアメーバがいるので、そいつを使っている。
さすがファンタジー、なんともご都合主義なものがいるもんだ。
このアメーバはあまりに激レアな上に有用すぎるので、Sランクモンスター認定されている。
どんな見た目なのかわからないため、俺はフランを連れて森中を探し回り、トイレの数だけアメーバを確保した。
アメーバ付きのトイレは超贅沢らしく、フランやロナからすごく感謝された。
お風呂に関しては、ガイアにはお湯に浸かる習慣はない。
ひとまずバスタブだけを用意して、魔法で水を入れて魔法でお湯を沸かすことにした。
排水は、一応排水管を通して少し離れた所に作った大きな穴に排水するようにした。
そこにもアメーバを使う。
いずれは穴と川を水路でつなげる予定とのこと。
上下水道に関しては今後の課題らしい。
いろいろ考えてるなぁ……、とってもありがたいです。
家の次に考えるのは食生活のことだ。
肉と魚と果物は森の中でも手に入るけど、野菜はここでは手に入らない。
今までは、俺もドラゴンたちも野菜は別にイラネって感じだったので問題にはならなかったけど、さすがに女性陣はそうはいかないらしい。
野菜が欲しいなら森の外に買いに行くか、ここで育てるしかない。
これに関しても、澪と雫が日本の野菜の種をたくさん持ってきてるので、がんばって育てようということになった。
育て方の本なんかも持ってきていた。
澪と雫、めっちゃガチだなぁ。
ガイアでの生活を少しでも日本の水準まで上げようとしている。
まぁ、野菜はすぐには収穫できないので、当面はケモッセオの街あたりで野菜を買うことにした。
幸いお金はけっこうあるしね。
当面は、生活の中心は農業ということになる。
土の質とかの良し悪しなんてわからないので、なにはともあれ育ててみることにした。
まずはキャベツとレタスとジャガイモと玉葱の四つだ。
俺は飼い猫として、番犬代わりとしてみんなの役にたてるようにがんばろう。
「よし!これで全部かな?」
種や種芋を植え終えて、澪が周りを見渡しながら言う。
「うん、こっちも終わったよ~」
雫が答える。
「こっちも終わったぞ!」
お手伝いをしていたバハムルも答える。
「ちょっと待って、もうちょっと……」
薫子さんはちょっと手こずったみたいだ。
フラン、クリス、レオ、ロナの四人はケモッセオの街におつかいにいってもらっている。
俺は猫らしくその辺でゴロゴロしていた……わけもなく、狩りに行った。
「それにしても、いたたたた……。
たったこれだけの作業なのに腰が……」
「うん、超痛いね~。
農家は偉大だった!」
「しばらくは筋肉痛との戦いだねー」
「あんまりきついようなら言ってね~。
ヒールするから」
「うん、ありがとー」
腰を叩きながら話す澪たちとは対象的に、薫子さんとバハムルは畑ではしゃいでいる。
薫子さんとバハムルは、ここで暮らし始めてから毎日が初めての連続で、本当にすごく楽しそうに過ごしている。
いろんなことにはしゃぐ二人の姿は、俺たちの和み成分になっている。
「そういえばさっき作業してた思ったんだけどね~」
「ん?」
「うちってサッカーのレジェンドが四人もいるよね~」
「え、どゆこと?」
「ふふふ……、雫もそこに気がついたか!」
「あ、ジズーちゃんも気がついてた?
私いろいろ妄想がふくらんじゃったよ~」
「なになに、どういうことなの教えてよー!」
「クリスがクリスティアーノ・ロナウド。
レオがリオネル・メッシ。
ロナがロナウド、フェノーメノのほうね。
で、フランがフランツ・ベッケンバウアー」
「おおー!ほんとだ!
しかも超豪華メンバー!」
「俺はこれに気づいてから、本気でサッカーチームを作ろうと考えてるからね。
チームができても相手がいないと意味がないから、まずはサッカーを普及させなきゃだけど」
「生活が安定したら本気で考えてもいいかもね~。
たぶん世界征服レベルの難易度のプロジェクトになると思うけど、異世界サッカーとか考えただけで鳥肌!」
「異世界サッカー……、いい響きだわー」
「よし!
じゃあ私たちがガイアで成し遂げる事は全部の国にサッカーを普及させること。
そして、ガイアのワールドカップを開催する!」
「「おおーっ!」」
これが、ガイアワールドカッププロジェクトという野望のはじまりだった。




