こんな結末にて
よく人が来るらしいというのは、洞窟の前に建てられていた立札と洞窟内につけられた明かりですぐに分かった。
ただいまは観光シーズンではないとカタリーナが言っていた通り、人がいない。
だがすでにかのアーサーはこの中に入っているだろう。
「行きましょうシリル様、確かこの洞窟の地図は……」
「全部覚えているし、何処にいい“マレー原石”がありそうかもすでに分かっているから、フルールは僕についてきてね」
「えっと、はい」
「途中魔物が出るかもしれないけれどたいした事のない物しかいなかったはずだから、後は僕に任せてね? さっきの約束だよ?」
「うう……はい」
先ほどの約束を思い出して、私は頷く。
頬が熱くなるけれどそういった所をシリルに見せるのも何となくこう、思う所があるので俯いてごまかす。
そのまま手を引かれて私は洞窟の中に入っていく。
中には夜の街灯の様にぽツンポツンと明かりがともっていて、その周辺には色とりどりの硝子の様な結晶が生えている。
魔法で作られた白い光の中でそれらは、艶やか己の存在を主張しているように見える。
物によっては何色ものグラデーションがかかっている物もある。
「綺麗ですね。この中に“マレー原石”があるんですか?」
何気なく聞いてみるとシリルに笑われてしまった。
確かに宝石関係は見ていると綺麗だし主要な物は知っているがそれ以上は細かく知らないのだ。
そう思っているとシリルが祖の綺麗な石全てを指っす様に円を描き、
「ここにあるの全部そうだよ?」
「! そうなんですか!」
「うん。でもこの中で一番価値が高いと言われているのは透明なもので、濃密な魔力の結晶で作られるんだ」
「へー、確かにここにあるのは色つきですね」
「そしてその透明な物が、恋人達を結びつけると言われている」
「それを手に入れたいですね」
「うん、そしてフルールとのこの愛を一生ものに僕はしたいです!」
「よろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします」
そう答えた所で、何かがおかしい気がしたけれど私はそのまま更に奥に向かったのだった。
洞窟の最深部らしい開けた場所に来た所で、黒くて大きな影の様にのっぺりとした魔物とアーサーが戦っていた。
「く、この魔物、強い」
「私もお手伝いします!」
私がそう言って飛び込もうとした所で、その魔物が氷漬けになった。
振り返るとシリルがドヤ顔でいた。
「ふう、ようやくいい所を見せられたよ」
「シリル様、今いったい何を?」
「もともと僕はこれぐらい強いんだよ。分かったらアーサーはしばらく僕に襲ってこないでね」
微笑みながらシリルがアーサーに告げ、アーサーががっくりと地面に膝をついた。
だがすぐに起き上がり、
「く、だがより大きな結晶を手に入れた方が勝ちだ!」
「じゃあフルール、はい」
そこでシリルが何処からともなく、大きな透明な結晶を渡してきた。
私の両手で抱えられるような大きさだ。
唖然とする私とアーサーにシリルは楽しそうに笑い、
「さっき魔物を倒す前に見かけたから拾っておいたんだ。これで僕の勝ちだね」
そう告げて、アーサーん完全敗北が決まったのだった。
こうして新たに負けた記録を増やしたアーサーだが、子供の竜を連れてまた修行の旅に出る事になってしまった。
そして私はといえば、
「これ大きすぎですよ?」
「確かに。頭に乗せる?」
「うーん、それはそれでもったいない気がします。明日辺り二人っきりでまた採りに行きませんか?」
それにシリルが頷き、こうしてもう一度山に言って私達はその原石を手に入れて、カタリーナ達もいい物が手に入ったと喜んでいた。
これが別荘で起こったささやかな出来事と顛末。
そしてそのアーサーが、その子供の竜を連れてきて、その子供の竜が私に会いに来たいと言っていたと知っていたり他にもさアがしい日々が続いていくのはまた別の話である。
「おしまい」




