二人で頑張る
朝食を食べて山に登ろう、そんな話になった直後、
「なるほど。つまりどちらが素晴らしい“マレー原石”を手に入れるか勝負、ということだな!」
アルベルクの兄、アーサーがそんなことを言い出した。
そんなアーサーにシリルが冷たい目で見て、
「いいかげんにしろ脳筋。僕とフルールの時間を邪魔するな」
「ふ、分かっていないな。シリル! これはお前に対しての挑戦ではない、そこの俺と相打ちになったメイドだ!」
なぜか突然私は巻き込まれてしまった。
どうしてだと思っているとそんな私にアーサーが、
「相打ちとはすなわち、勝負の決着がついていないということだ!」
「な、なるほど」
「だからこそ再戦を申し込む!」
そこでシリルが私達の間に入ってきて、
「アーサー、今日は僕とフルールはあの山に登って“マレー原石”を手に入れる。二人っきりでだ」
二人っきりの所を強調したシリル。
そしてそれにアルベルクも、
「そうだ、兄さん。流石に今日は引いたほうが……」
「いや! この長く辛い修業の成果を今ここで! でなければそれらに意味は無い!」
「だったら“マレー原石”を採ってきてからにしましょう。せめて」
「!なるほど、つまりそれが勝負だということだな!」
そこでなにか話がずれたのを私は感じた。
それはアルベルクも同じらしく、兄さんと言って止めに入るがその前にアーサーが、
「どちらがより大きい“マレー原石”を手に入れるのか勝負だ!」
けれどそれに乗るようなシリルではなかった。
更に聞いている人間が凍りそうな声で、
「それで、君は僕の邪魔をするのかな?」
「な、何だか怖いが……そ、そうだ、俺は今シリルにはいっていない。そこにいるメイドに話しかけているのだ」
そこで私に話が振られる。
シリルから逃げただけなんじゃと私は思ったけれど、そこでアーサーがにやりと笑い、次にシリルを見て、
「負けるのが怖いのか?」
「いや、そうじゃなくて……」
「受けて立ちます!」
シリルが更に頭が痛くなったらしくそう呟くのに対し、私はそう反応してしまった。
シリルが顔を青くして私を見る。
「フルール、あんなのの言うことなんて聞かなくていいから」
「いえ、シリル様に完全なる勝利を!」
「いや、フルール。そんなイっちゃっている人みたいな台詞はいいから、ああいうのはフルールは相手にしなくていいから」
「でも折角探しに行くのなら競争したほうが楽しいんじゃないでしょうか?」
シリルが冷静になろうというけれどそこで、
「よし、これで勝負することが決まったな。ゆくぞ!」
そう言ってアーサーが走っていく。
シリルは小さく、どうしてこうなったと呟いていたりしたが、
「行きましょう、シリル様! 私達二人で勝利を勝ち取りましょう」
「二人、フルールと二人……うん、そうだね」
そこでなぜか妙に元気になってしまったシリル。
勝手に決めてしまったけれど、シリルが負けるのが怖くて勝負を受けないような人間ではないと私は思っていた部分もある。
といった理由もあっったのだけれど、それよりも私が魅力を感じたのは二人で勝利することだった。
シリルと二人で頑張ってみたかったのだ。
小さなわがままだけれどシリルは受け入れてくれたらしい。
こうして私は、シリルと二人でかけ出したのだった。




