ほどほどにしてくれ
カタリーナの別荘は、シリルの本宅ほどではないが華美な装飾が施されているというものではなく、上品で落ち着いた家具が取り揃えられていた。
そんな場所に私はシリルに抱き上げられたまま連れてこられて、カタリーナの別荘内のソファーに私は座らせられていた。
とりあえずは体力と魔力が回復してきたしそろそろメイド服に着替えてお茶の用意でもと私が思っているとそこでシリルが、
「それでフルール、どうしてあんなに危ないことをしたの?」
「? 何がですか?」
「僕とアーサーの間に割って入るなんて。普通はやらないよ」
「でもシリル様は昨日は一睡もしていませんからゆっくり休んでいて欲しかったですし」
私がそう答えるとシリルは真顔で沈黙した。
次に私から少し離れたところに行き、私から背を向けて大きく深呼吸を数回してから戻ってきた。
「ちょっと疲れているくらいで僕はアーサーに遅れを取らないから安心して。だからこれからはフルールは自分を危険な状況に置かなくていい」
「で、でも……」
「前も言ったように僕にとってフルールは大事な女の子だから危険な目にあわせたくないんだ。フルールが僕のことを考えてくれるように僕もフルールをとても大切に思っている。それだけは忘れないでくれると嬉しいな」
そうシリルは私に告げて微笑む。
頬が私は暑くなるのを感じて、どうすればいいのか頭が混乱してくる。
シリルは私の前でその綺麗な顔で微笑んでいて大事そうに私を見ている。
だから私はそれ以上何も言うことが出来なくて、
「……はい、わかりました」
「うん、フルールいい子だね。せっかくだからここで少し休んでいなよ。疲れたでしょう?」
「で、でも私はメイドですし……」
「恋人のお願いをフルールは聞いてくれないのかな?」
そう言われてしまうと私はそれ以上言い返すことは出来ず、その場で少し休ませてもらうことになってしまったのだった。
別の部屋では、カタリーナ達がそこに集まってお茶を飲んでいた。
その場所にシリルがやってきて、深々と溜息をつく。
「僕の出番が全く無い。いい所を見せられない」
それにカタリーナとアルベルクは顔を見合わせた。
アルベルクの兄であるアーサーは現在魔力回復も兼ねて爆睡中である。
なので開いている寝室の一つにメイドたちが寝かしていた。
そしてカタリーナ達は別室でお茶を飲んで馬車移動の疲れを癒やすために休憩している所にシリルが現れたのである。
さて、そんなシリルは来てそうそうそんな愚痴をこぼしたのだが、それに対してカタリーナは楽しそうに悪女のような笑みを浮かべて、
「そんなめんどく臭い彼女は捨ててしまえば? そして私に頂戴?」
「! カタリーナには絶対にあげない!」
「いつでも要らなくなったら言ってね。もらってあげるから」
「……」
「それで、見せ場? シリルのいい所って何だったかしら」
「ひ、酷い。傷心の従兄弟に対して……」
「今まで通りでいいんじゃない? フルールと恋人同士になったのだって、今までどおりのシリルを見せていたからでしょう?」
もっともなにシリルは黙るしか無い。
けれどやはり恋人にはこう、背伸びをしたい気もシリルは有るわけで、そう思うともう少し何か方法はないかと思ってしまうのだ。
それを聞きながらアルベルクが、
「明日、山に原石を探しにいいくのだから二人っきりで山にのぼるんだしその時にフルールを守るように努力してみてはどうだ?」
「それだ! そうしよう! よし、明日の準備だ!」
走って部屋を出て行くシリルを見送りながらカタリーナが溜息をつく。
「まったく、フルールが大好きすぎるみたいね。これではスカウトできそうにないわ」
「……カタリーナ」
「何? 優秀な人材は私もほしいもの」
「程々にしてくれ。シリルに俺が八つ当たりされる気がする」
嘆息するようなアルベルクにカタリーナは、考えておくわと答えたのだった。




