とある戦いの果てに
アルベルクの兄との戦いは、ほぼ互角だった。
私の蹴りと魔法の威力に即座に気付いたアルベルクの兄が防御をする。
そんな私に、アルベルクの兄が笑った。
「なかなかやるな、メイド!」
「そちらこそこの私によくついて来れますねっと」
そこで私はアルベルクの兄の右腕を避ける。
アルベルク自身が炎系の魔法使いだったのでその兄も同様らしかった。
しかし、修行の旅に出た成果も有るのだろうが、強い。
このアルベルク兄を容易に倒しているシリルも強いといえば強いといえる。
というかさすが私のご主人様兼こ……恋人である。
そんなふうに私が心の中で思っているとそこでアルベルクの兄が、
「手加減しようと思っていたがどうやらそんな余裕はないようだ」
「それは褒め言葉として受け取っておきますわ」
「ふ、まさか女とはいえこのような強者に出会えるとは思わなかった。名前を聞こう」
「フルールです」
「俺はアーサーだ。覚えておけ。そして、これからお前に勝利する者の名だ」
「残念です、それでは私は忘れなければならないようです。だって勝利するのは私ですから」
「ふ、流石に俺に挑んでくるだけのことは有るな。次の一撃に俺はすべてを掛ける」
「では私も次の一撃に全てを掛けましょう!」
「ゆくぞ!」
そこでアルベルクの兄、アーサーが右腕を振り上げて炎をまとわせながら攻撃を加える。
それに私も対抗するように右腕を振り上げ、拳と拳がぶつかった。
大きな爆音と閃光、体がお互い吹き飛ばされる衝撃。
だがそのすべてを今の一撃に込めた私は以外にも心地よい思いに駆られていた。
強者との戦い。
己の力全てをぶつけあうことの出来る相手がいるという爽快感。
我々はそこで真の友情を育むことが出来たのだ。
と、そこでアーサーが、
「シリルのメイド、フルールか。素晴らしい実力だ。また超えなければならない壁が一つ出来てしまったようだ」
「私もアーサー様のような方がいるとは思いませんでした。次は、今まで以上に私は強くなります」
「俺もまだまだ強くならねばならないようだ。次は俺が勝利し、シリルを倒す」
「残念ですがシリル様の所までいかせるつもりはありません」
「素晴らしいメイド魂だ」
そこでシリルが私に近づいてきた。
今の戦闘ですべての力をぶつけあったので起きるのには少し大変だったのだけれど、そこでシリルは私を抱き上げてしまう。
それはお姫様抱っこという形だ。
「え、えっと、シリル様」
「……何でアルベルクの兄と仲良くなっているんだ」
「いえ、お互いの戦闘能力を認め合っただけです」
「……そこから恋に発展しそうで嫌だ」
シリルがふてくされたように呟く。
そんなシリルに私は変なことを聞いた気がしたので私は首を傾げて、
「私はシリル様一筋ですけれど」
「……」
シリルが無言になった。
どうしたんだろうと私が思っているとそこでアーサーが、
「ちょっと待て、シリル。お前、そこのメイドが恋人なのか!?」
「……だからどうした?」
「お前に恋人ができたのか!? お前に」
「僕はお前という名前ではありません。年上なら年上らしくしてください」
「く、相変わらずだなシリル。これでこの中で彼女がいないのは俺とアルベルクだけか。くぅ」
何やら悔しそうなアーサーだがそこでシリルが悪い笑みを浮かべた。
「残念だったね、アーサー。君の弟は既に恋人持ちだ」
「なん……だと?」
「ほら、アルベルク、自分から言いなよ。誰が恋人だって」
楽しそうなシリルの声にアルベルクが余計なことを言いやがってというような渋面で、
「カタリーナが俺の恋人だ」
「! あの伝説の“笑顔のドS魔女”と呼ばれているあの! ……ぐふっ」
そこでカタリーナが無言で、アーサーに軽く蹴りを加えてから、
「どうやらアーサー様は外で夜を明かしたいようですわね」
「ま、待て、まさかここは……」
「私の別荘ですわ。客人として扱って欲しいならそれなりの対応をしていただきたいですわ」
「……“花の銀姫”とも呼ばれているカタリーナ様」
「よろしい。では貴方達、このダメな子二号を連れてくるように」
「ダメな子ってだれが……むぐ」
そこでアルベルクが止めに入って何かを耳打ちする。
それにみるみるアーサーの顔色が変わり、大人しくなったのだった。




