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高性能メイドは、やれば出来る子です!  作者: ラズベリーパイ@天安門事件
第一章 メイドになった私が御主人様と普通に恋に落ちるお話(嘘)
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告白

 お昼はパスタだった。

 “ルルラ牛”のひき肉を使ったミートスパゲティ。

 素朴なトマトと玉ねぎ、人参の味と甘さが魅力的で、以前も入った事があるので美味しい事を知っている。


 けれど、認めるのを放棄したくなるような現実の前でそれは無力だった。

 目の前には全てを伝えて機嫌をよくしたらしいシリルがいて、彼が頼んだ旬の“星エンドウ”とベーコンを使って作られたパスタを器用にフォークに巻いて、


「フルールぅ、はいっ。あーん」

「……シリル様、お行儀が悪いです」


 するとしゅんとしたようにシリルが沈黙して、


「僕はただフルールと少しでも恋人同士のような……」

「恋人同士? 冗談としては面白く無いです、シリル様」

「フルール? そんなに僕の事が嫌いなの?」


 何時もならばここでそんな事はありませんと答えたかもしれないが、すでに私はシリルに逃げ道をふさがれている。

 先に塞いだのはシリルの方なのだ。

 どうして私なのか。

 私以外に美人な人は幾らでも居る、その中で私を選ぶ理由が分からない。


 確かに幼い頃のシリルとの出来事は私には楽しかった。

 でもそれだけで誰かを好きになるだろうか?

 そこである理由を思いついて、私はそこで食べる手を止めた。


「ただの主従関係です」

「……え?」

「シリル様とは主従関係なだけです。他には何もありません」

「フルール……どうしたの?」


 いつもと様子が違うと気づいたシリルが、不安そうに私を見つめる。

 けれど、そこで私は、今回は引かなかった。


「前から思っていたんです。どうしてシリル様が私などに愛していると口説くのかと」

「フルール?」

「ですがようやく分かりました。シリル様は、私をからかって焦ったり嫌がったりすることが楽しくて堪らない、そんな方だったのですね?」

「え、えっとフルール、どうしちゃったのかな?」

「そうやって可愛らしくとぼけても無駄です。……もっと私は早く気づくべきでした。弄ばれているだけだと」


 そう言い切って、私は席を立つ。そして机の端にその食事代らしいお金をおいてその場を去る。それをシリルは引きとめようとするが私は手を振り払う。

 今はただ一人になりたくて店を出て丁度目の前に看板があるのに気づく。


「“フューエル公園”か。ちょっとそこに言って頭を休ませよう」


 私は小さく呟き、シリルから逃げる様に足に魔法をかけてかけ出したのだった。









 公園は、花の咲き乱れる場所だった。

 丁度時期なのかもしれない。

 その割に人はあまり見かけられないのは、来る途中に大きい市のようなものが開かれていたから、皆そちらの方に集まってしまっていたのかもしれない。


 遠くから祝砲をあげる様な音が聞こえたが、何か別のイベントがあるのかもしれない。そんなことを考えながら、私は走ってきたのだが……。

 タタタタタッ

 私の背後で音がするので、気付かなかったふりをして私は更に速度を上げる。


 けれど私の速度に追い付くどころかどんどん間合いを詰められている気がする。

 急がないとと思って、私は更に足を速める。

 やがて、この公園の一角にある木が生い茂る場所に包まれるような窪地。

そこに白い壁で赤い屋根の二階建ての家がある。管理室と書かれているが倉庫も兼ねているらしい場所で、現在は無人ですと看板がかけられていた。その建物の影になるような場所に、私はシリルに腕を掴まれて、その壁に押し付けられる様にしてシリルと対峙していた。


 シリルの表情は真剣で、


「僕は、フルールに言っていたのは確かに途中は誤魔化したけれど、君が好きだという言うのに関しては嘘はついていないしからかっていないよ」

「ここに来て今更いい訳ですか? シリル様」


 私の声から感情は消え、ただ冷たく淡々と私はシリルに告げる。

 それに一瞬シリルは言葉を失ったように沈黙するけれどすぐに、


「いい訳、じゃないよ。僕は本当にフルールが好きなんだ」

「……そう言っておけば、私が焦るのを見て楽しめますからね。色々な鬱憤がシリル様にはあると思いますが、私を弄んで晴らそうとしないでください」

「フルール! 僕は……」

「前からどうしてシリル様のような方が私を愛しているというのか、ずっと疑問でした。でも、そう考えれば説明がつきます」

「……フルール、いい加減にしないと僕も怒るよ?」

「つまり図星を指されて、苛立っていると、そう解釈してよろしいですか?」


 そこでシリルは口をつぐんだ。

 酷い事を言っている気がするけれど、もう私は嫌なのだ。

 期待をさせられるのが嫌なのだ。


 残念ながら私はそういった夢物語を心の中で何処か期待していて、それの夢を見てしまったからそこをシリルに付け込まれてしまったのだ。

 気付いてしまえは焦りは苛立ちと怒りに変わる。

 怒って今にも大声で、酷い事をシリルにいってしまいそうになるけれどそれを必死に我慢する。


 だってそれを覗けばシリルは私に優しかったのは事実なのだから。

 なので私は俯き、しばらく何も言葉を発せない。

 そこで無言でシリルが私へと歩き出す。


 私は建物を背にしていたが、後ろへと後ずさる。

 けれど数歩下がると壁に当たり私はすぐに右の方へと逃げようとする。

 そこでシリルが両手と壁の間に私を閉じ込めて逃げられないようにする。


「な、何のつもりですか? シリル様」


 私の声に動揺が走る。

 そんな私にシリルは、今までの軽さが完全に消え去った声で、


「フルール、いい加減にしないと僕も怒るよ?」

「! ですが、私としてもこんな遊びは……」

「こんな風にフルールをかまって遊んでいられるほど、僕は暇じゃないんだ。それはフルールもわかっているだろう?」


 シリルの声に威圧感がにじむ。同時に怒りを押し殺しているような声で、


「今日だって時間を作るために必至でしなくちゃならない仕事を終えたんだ」

「う、ち、違います。そ、それにそれは私を弄ぶための時間を……」

「分かってないな。本当に遊びのためなら、もっと後腐れのない方法で遊ぶよ? こんな身近で優秀で魅力的で愛おしいメイドなんてやらせたりしないんだよ?」

「で、でも……」


 そこでシリルが小さく笑う声が聞こえた。


「やっぱりフルール、君を自由にさせすぎたのがいけなかったのかな。メイドとは名ばかりに囲って愛でたほうが良かったかな」

「む、無理です。私はシリル様が仕掛けた罠程度、簡単に破れます。物理的にも、策謀としても」


 それだけの力を付けさせたのはシリルだけれども。

 けれどそれを聞いてシリルは、くすくすとおかしい話しを聞いたかのように笑いだした。


「あんな児戯みたいな見せた力で、罠なんて言ってしまうフルールのそういう、気付かずに罠にはまっている様子も可愛くて好きだけれどでもそろそろ教えてあげたほうがいいかもね。……僕が本気を出したら、本当にフルールは何処にも逃げられないんだよ?」


 シリルが楽しそうに、私にそう告げたのだった。

 シリルのその言葉に私は息を飲むけれど、でも、やはり弄ばれたのは悔しくて、


「私の力を甘く見ています。シリル様。私も本気を出しているわけじゃない」

「フルールの力も分かっていて、僕はいっているんだよ? 分かってないみたいだから……教えてあげるよ」


 そこで私が動こうとするけれどその私の両手首を掴んだシリルが先ほどと同じように壁と自分の体で私を閉じ込め、私は急いで魔法を使おうとするけれど、


「……魔法が使えない」

「フルールが魔法を使う前に、使えないようにしたからね。フルールは気付いていなかったみたいだけれど。そして、こうやって体を密着すれば更にフルールは逃げられない」


 病んだ様に小さく笑って、シリルが告げる。

 私は呻いている、抵抗しようとするが力が入らないのか、それともシリルの力が強いのか、シリルから逃れられない。そんな私にシリルは、


「ね、逃げられないでしょう? それにね、どうやっても僕の元から逃げるというなら……僕も、僕なりに手は打たせてもらうよ?」

「な……にを……」

「分かってくれないフルールが全部悪いんだ。僕は君が思ッているよりもずっと優しくなくて、酷い人間なんだから」


 そう囁くように言われて、私はもう頭が混乱して、これ以上は私だって全部を飲み込むのは無理で、だから、


「……そうですね。シリル様は酷いです。期待だけさせて、本当は後で誤魔化して私の気持ちなんてお構いなしなんじゃないですか!」


 色々と思う事は一杯あるのだ。

 私のためといいながら、結局シリルはずっと私から一歩引いて、私とは全然向き合っていなかった。

 もっと私が信じられる様に言ってなんてくれなかったのだ。

 そんな涙ながらに叫んだ私の本当の気持ちを吐露したそれに、シリルはあっけにとられた様に目を瞬かせて、


「え? いや、え?」


 そんな様子に私はいらだって更に、


「そもそももう少しまともな嘘は付けないんですか? 昔会ったからとかそんな物語にありそうな出会いでは無くて!」

「えっとでも、それは僕にとって本当の事で、僕にも大切な出来事だったんだけれど、えっと、あの……今のはフルールが僕を恋愛感情で好きだって事でいいのかな?」

「……そうです」


 頬が凄く熱くなるのを感じた。

 自分からした告白は何時だって恥ずかしくて緊張して不安に満ちて勇気がいると思う。そんな僕の言葉にシリルが、


「そっか……そうか、うん、なら……いいや」


 そこでシリルが私の手を放して、深々と溜息をついて、


「だったら後は僕の気持を少しずつフルールに分かってもらえばいいだけだね」

「……信じられないです」

「信じてもらえるように頑張るよ。フルールが僕を好きだって分かったから、僕も自信がついたしね」


 微笑んだシリル。

 その家足蹴に微笑むシリルに魅入られてしまう私。

 私はいい加減信じてもいんじゃないかと自分の中にささやく声が聞こえた気がした。

 そこで、慌てたように屋敷の執事らしき人がシリルを呼びに来て、それに気付いたアルベルクとカタリーナが姿を現したのだった。


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