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高性能メイドは、やれば出来る子です!  作者: ラズベリーパイ@天安門事件
第一章 メイドになった私が御主人様と普通に恋に落ちるお話(嘘)
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また二人でこようね

 入場料を支払い、私とシリルは水族館へと足を運ぶ。

 青を基調とした水を思わせる建物は、外側に海の波を現すかのような白い線が引かれていた。三階建ての建物で、その中央には大きな水槽がありイルカがショーを行うらしい。ただ今日は生憎、水槽の掃除だそうで休みだそうだ。

 けれど他にも沢山の見どころのある水族館だそうで、私は特に落胆はしなかったが。


 濃い青の床を歩いていくと、まだ春休みのせいか学生の様な、恋人同士や子連れが多く見うけられた。

 私達も彼らの様に恋人同士に見えるのかなと思いながら歩いていくと、水族館の奥内広場の中心らしい場所に、円柱状の目の前に大きな水槽が現れた。

 そこにゆらゆらと優雅に泳ぐ赤い大きな魚がいる。


 説明には“変化海ピラルク”というらしい。

 私の背丈ほどもある、海に住む“変化海ピラルク”という魚であるらしい。

 変化というのは捕食する獲物に対して魅力的な物に化けて、相手を誘いだすらしい。


 とはいう物のこの水族館では決められた時間に餌が労せずもらえるので、変化は基本しないらしい。

 ただ暇なせいか、たまに入場者に化けて泳いだりする事があるとか。

 古くはこの魚の性質が海の魔物の人魚と混同されたりしていたが、現在は人魚はそういった“種族”として認識されている。


 どの道人間の生活圏と離れているため、どちらもあまりよく分かっていないが、最近奇特な人がそれを知り、そういった話が分かったらしい。それらの説明を見ながらもその赤い鱗が照明の関係でキラキラと宝石のように輝いていたので間近で見たいとシリルを誘う。


「確かにあの魚はこの水族館の目玉なんだよね。あの魚の前で写真を撮ると恋が叶うって言うし……折角だから写真を撮ってもらおうか」

「い、いいです私は……」

「あ、あそこでお金を払うと写真をとってくれるみたい。行こう!」


 私は手をひかれて連れて行かれてしまう。

 だから私は恋人役なだけでそういったのは本当の恋人とすればいいのに。あ、でもその内恋人が出来たらそういった事もするかもしれないので予行練習としてはいいのだろうか? それならやってもいいかなと私は思う。

ふといいわけないじゃないと私の頭によぎるが、気のせいだとそれを私は打ち消す。


 やがて私達の順番が着て写真を撮る物の、撮った瞬間、写真を撮っていたおじさんがぎょっとした顔で私達の方を見た。

 え? 私そんなに変な顔をしていたんだろうかと思っていると、シリルが背後を見て面白そうに笑った。


「フルール、後ろを見てみなよ」

「後ろ? ……うぎゃぁああああ」


 思わず悲鳴を上げてしまったのは仕方がないと思う。だってそこには、正確には水槽の中にはもう一人の私が髪を駄々様に揺らめかせて私の方を不思議そうに見ている。


「フルール、凄く面白い顔になっているから落ち着きなよ」

「そ、そうですね、ひーひーふー、ひーひーふー」

「その呼吸法は違うと思う。でも珍しいね、フルールの姿に変わるなんて。因みに恋人同士が映るとその恋が叶いやすいらしいけれど、こうやって魚がどちらかに変化すると、必ず結ばれるらしいよ」


 必ず結ばれると聞いて、ど、どうしようとあせる私にシリルが、


「そんな話もあるけれど、あ、写真が出来たみたいだね。貰ってくるよ」


 シリルが私の話なんて聞かずに写真を貰いに行く。

 振り向くと魚はまだ私の姿をしている。こうやって見ると私ってそこそこ美少女なんじゃないだろうかと自惚れそうになるが、ここはこう、節度を持つべき、そして今はシリルの恋人役と思って何度も心の中でその言葉を繰り返す。

 ただ偽の恋人と思うたびに何故か胸を締め付けられるような妙な感覚が私を襲う。

 これって何なんだろうともやもやしているとシリルが写真を二枚持ってきて、


「はい、一枚はフルールの分」

「ありがとうございます。大切にしますね」


 この写真は大切にしようと私は思う。

 そして私達は魚に手を振り、次の展示物に向かった。








 巨大な水槽にチューブ状になった道が通っていて、魚が頭上を泳いでいくのが見える。

 大きな銀色の美味しそうな“モザイクサンマ”や赤や黄色緑といった様な色鮮やかな小魚が泳いでいる。

 その上の方の水面からは光が入ってきており、ゆらゆらと揺らめきながら行く筋もの光を水槽に落とし込んでいる。


 よく見ると岩や海藻の辺りにはエビやカニ、貝などがいるのが見てとれる。

 色鮮やかな貝を見ながら、あの中に食用の物があったと気付いた私はなんだか悲しくなった。

 とれたてをバターしょうゆで味付けするととても美味しい貝なので仕方がない。


 またあの貝殻の薄いピンク色のそれは、磨いてよくアクセサリーに加工されている。

 と思って見ていると傍でシリルが苦笑する。


「フルール、お腹が空いているのかな?」

「! すいていません!」

「それならいいけれど、あの“ロメロメ貝”をじっと見て、今にも水槽に飛び込んで行きそうだったから」

「そ、そんな事無いです。私、そこまで見境なくありません!」

「……次のコーナーには熱帯魚や、水槽のアートがあるから早くそちらに行こうか」

「シリル様、私絶対にそんな事はしません!」


 私はそんなに食いしん坊じゃないです、というとシリルに分かっているよと言われて、


「それにいつまでもここを見ていると、後ろの人に迷惑になっちゃうから。フルールが目を輝かせて水槽を見ているのを見るのも僕は好きだけれどね」

「え、え? す、すみません」

「謝らなくていいよ。人も少ないみたいだし。でも文句を言われない内に行こう」


 そう笑いながらシリルは私の手をひく。

 そして連れて行かれた先には小さな水槽が幾つもおかれていて、そこには色鮮やかな魚が泳いでいる。

 黄色い下地に黒い縞模様のある魚や、赤やピンク色、シリルの瞳に似た鮮やかな青い魚もいる。


 しかも、木々に見立てた流木や海藻、藻、サンゴが植えつけられたりしており、そこだけ見るとまるで森の中を魚が飛んでいるように見える。幻想的な光景に私は夢中になって見て回る。

 気付けば恋人役をすること自体が頭から完全に無くなっていた。

 そこで私の方がシリルに叩かれる。


「フルールは魚が好きなのかな?」

「ふ、ふえっ、あ、一人で夢中で見てしまいました」

「綺麗だからね。都市に来た時こういった所に来なかったのかな?」

「水族館には来た事はないです。何時もは川に魚をとりに行ったリしていたので魚は見るのが好きです」

「そうなんだ。でもこんなに好きなら今度は別の水族館に連れて行ってあげるよ」

「本当ですか!?」

「うん、だから……また僕と二人でこようね」


 含みがある様に言われた気がしたけれど、また連れてきてもらえると思って嬉しくなる。それにシリルと一緒だと何となく落ち着くのだ、私が。

 そんな約束をしながら私とシリルは水族館を後にして、シリルに誘われるままにお昼にはまだ時間があるからと目抜き通りに連れて行かれたのだった。


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