初デート
シリルは男性なので男性に魅力がある物が良いのではという話しになり、アルベルクが強制的に連れて行かれた。が、
「落ち着かない……」
アルベルクがそわそわしたように立っている。確かに女性用の服売り場には女性ばかりで男性は彼しかいない。
落ち着かないはずだよなと私は思うが、今は私は自分のことで精一杯だったのでフォローできないというか協力してほしい気持ちになる。
現在カタリーナが良さそうな服何着も見つくろってくれている。
初めはもうすぐある、メルアカーニバルというイベント用のきわどい衣装が大量に飾られている店の前に来てカタリーナが、
「フルール、イベントに出てみる気はないかしら」
「無いです」
即答すると、カタリーナは少し残念そうだった。
だがあんな水着の様な服、スタイルが良くないと着れないと私は思うのである。
さてさて、そして試着室に連れ込まれた私はカタリーナに服を渡されて、
「シリルは楽しみにしているわ。ああ見えても大事な私の従兄弟だから応援したい気持ちもあるのよ?」
「では、良さそうなお見合い相手の紹介を」
「……フルール」
そこでカタリーナが静かな声で私の名前を呼び、私はびくっとしてしまう。
カタリーナは相変わらず笑顔だけれど、
「貴方の中で決めかねている不安が何かあるのは分かっているわ。でもね、シリルは貴方が不安に思ったり疑ったりする以上に、“本気”なの。だから……それだけは覚えておいてあげてね?」
「えっと、はい……良く分かりませんが」
「ふふ、逃げているのを見ると追い詰めたくなる……でもフルールは、お気に入りだから止めておくわ」
「あれ、アルベルク様は?」
「あれは別腹よ。さあ、早く着替えましょう?」
そしてどの服にしようか話したり見せたりして、私とカタリーナはいい物が買えた機嫌をよくし、アルベルクは付き合わされて女の買い物に付き合うのは嫌だと小さくぼやいていたのだった。
朝から元気一杯のカタリーナに私は化粧をされていた。
すでに昨日買ったばかりのワンピースを着ている状態だが、カタリーナとそのメイド達によって私は、私は……。
「あの、使う色の量がちょっと多いのでは……」
「お黙り」
カタリーナは、提案するのも駄目でした。
なので大人しくされているとそれからどれほど時間が経っただろう。
「ふう、完璧だわ。さあ、鏡を見てみなさい」
「はい……え?」
そこで私は鏡を見て絶句した。艶やかな唇が、柔らかくウェーブを描く黒髪が……まぎれもなく美少女である。化粧だけでこれほどまでに私が変わるとは。
「貴方は十分可愛いし綺麗よ。自信を持ちなさい。そしてあらゆる女の子スキルでシリルを落としてらっしゃい」
「はい!」
何かが間違っている気がしたが、なんだっけと思いつつ私はこの格好のまま家を出た。
時間丁度につくように調整をして家を出る。
時々すれ違った男の人が私の方を振り返る。
確かに何時もよりは綺麗にされていたと思うけれどこの対応の違いはなんだ、と思いつつ、
「もう少しおしゃれもした方が良いかな。うん、これを機に、色々やってみよう」
そう決めた私が更に走っていくと……何故か女の子の集団が。
建物を隠れる様に集まっている。誰か美形の男性でもいるのかなと思いつつ彼女達の視線の先を見ると……シリルがいた。最近は男性の恰好をしているが、初対面も含めて女装していてとても綺麗な美少女なのであまり意識していなかった。
それでこういう状況もあってか、やけにこう、シリルが格好良く見えるというか男性らしいというか、意識してしまうというか。
「意識するって何だ……。今日は恋人役でデートなだけだし。そして恋人ならどうやって落とそうとするかを経験してもらうだけだし」
うんうんと自分の本来の目的を思い出して頷いてから私は、彼女達を見なかった事にしてシリルに近づく。
そういえばどうやって声をかければいいんだろうと思っていると、シリルが私の方を振り返り、微笑んだ。
その笑顔に魅了されて私は立ち止まってしまうと、
「フルール、ここだよ!」
「えっと、待ちましたか?」
「うん、今来たところだから、それじゃあ、行こうか」
そう言って、近づいた私の手をシリルが握る。
別にただそれだけの事で、意識しているわけでは無くて、異性と手を繋いだ記憶なんてあまり無くて、だから私は緊張しているのだろう。
決して、何となく胸の動悸が激しい気がするのは気のせいに決まっている。と、
「フルール、見違えるくらいに綺麗になったね」
「カタリーナ様がお化粧や服を選んでくれて」
「カタリーナも女の子だね、フルールの魅力を引き出す方法がよく分かっている」
「そうですね、カタリーナ様は親切ですよね。今回のデートの様子を見に、先ほどからアルベルク様と一緒にこちらを見ていますし」
振り返らずに私がそう告げるとシリルが一瞬黙って、
「どうして分かったのかな?」
「風を使って常にシリルに何か危害を加える物がいないか探査しています、ご安心ください」
「そうか、うん、そうなんだ……」
そこでシリルがくるりと振り返り、それにならって私も振り返る。
アルベルクとカタリーナが、振り返ると建物の陰に顔を引っ込めて、前を向こうとするとこちらを見様と顔を出そうとしているようだ。
小さく笑って、
「まあ彼らは僕達を見てにまにましているだけだし、放っておこう」
「そうですね」
そういった話をしつつ私達は動物園に向かったのだった。




