言った通りになったでしょう?
こうしてフルールが屋敷に留まる事になったわけだが。
「どう、私の言った通りだったでしょう?」
勝ち誇ったかのようにカタリーナが嗤う。
けれどシリルは無言で、ふらふらとした足取りのまま自分の椅子に座りそのまま腕を組んだ上に顎を乗せて何か考え事をしているようだった。
それを見てむっとしたカタリーナがつかつかと歩いて近寄り、
「シリル、聞いているの?」
「聞いているよ。仮とはいえフルールを恋人にまで引き寄せたんだから後はそのワンランク上の恋人にまで昇華させるだけでいい」
「……執念深いわね。そんなに気に入っちゃったの?」
「そんなに気に入ってしまったんだ」
「面倒ね。まあ、振られたら頭を撫ぜてあげるくらいはしてあげるから、頑張って玉砕してらっしゃい?」
「……僕が失敗したらカタリーナとアルベルクの仲を裂いてやる」
「要するに手伝えって事?」
「うん。お願いします、カタリーナ」
「仕方がないわね。私の従兄弟がここまで女心が分からないなんて思わなかったし。それで私に何をして欲しいのかしら?」
そこで紙を取り出して、シリルが、
「カタリーナ達が普段どういった場所に遊びに行っているのかだね」
「女同士? それともアルベルクと?」
「じゃあアルベルクとで」
「そうね……この前はホラー映画を見に行って、がたがた震えるアルベルクが私の手を握って、怖いだろうから握っていてやるといいだしたり、動物園で猛獣に吠えられて私に抱きつくアルベルクを見たり、他には……」
「うーん、その辺りはフルールを連れて行ったら怖がって抱きついてくれるかもしれないけれど保留だね。でもアルベルク、意外に怖がりなんだね」
そこでにたっとシリルが嗤い、アルベルクがむっとしたように、
「最新のホラー映画は本当に怖いんだぞ? 今大人気の“闇に這う怪物”なんて本当に恐ろしかった」
けれどそこでカタリーナが、
「あら、私はそこまでではなかったけれど? それよりも貴方が震えているのを見て、別の何かに目覚めそうだったわ」
「……出来れば今のままでいて欲しい。切実に」
アルベルクがカタリーナにお願いしている。そんな二人を見ながらシリルは、
「それでカタリーナは普段どんな所に遊びに行っているのかな?」
「そうね、美味しい物を見たりアクセサリーやお洋服、下着を見たりかしら」
「最後の物以外はいけそうだね。後は猛獣なんかじゃないコーナーの動物園かな。変わった魔法動物関係を扱っている所があったね。他にも水族館に美術館、そこは地味かな?」
「地味だけれどまずはそういった普通の所から始めたらどう?」
「普通ね……後は恋愛ものの映画なんかかな?」
「そうね。でもドキドキしないわね、そういった場所」
「ドキドキ?」
「そう、ありきたりすぎて、普通っぽいというか……普段と違うそういった興奮は恋と錯覚を起こせるかも?」
「……ちょっと都市近郊に冒険に行ってみるのも手かな? 確かフルール、昔は冒険物の小説が好きだったし」
「そのまま冒険の素晴らしさに目覚めて、新たなる冒険にフルールは旅立ってしまうかも?」
「うん、アクセサリーのお店はフルールを誘うにはいいかな? 好みも分かるし」
「言った私も悪かったけれど、すぐにフルールが好きそうだからって危険な場所にいかないようにしなさいよ」
それにシリルはうんと頷き、そこでフルールが部屋に紅茶を持って現れたのだった。




