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高性能メイドは、やれば出来る子です!  作者: ラズベリーパイ@天安門事件
第一章 メイドになった私が御主人様と普通に恋に落ちるお話(嘘)
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いいニュースと悪いニュース

 あれから数日が経過して、シリルはある紙を見てにやにやしつつ別の紙をしてむむむと唸っていた。

 そしてアルベルクもカタリーナから逃れるためによくシリルのもとにやってきて話し相手をしつつ、菓子とお茶を楽しんでいた。

 現在カタリーナはフルールと一緒の服で写真ということで、いつもの部屋で着替えている最中だった。


 アルベルクは傍にあったナッツ入りのクッキーを食べながら、


「やはりこのクッキーは美味いな。カタリーナがフルールを欲しがる理由はわかる」

「あげないからね。それとカタリーナにはそんなにお菓子ばかり食べていると“太るぞ”と伝えておいて」

「言ったらお仕置きされたから嫌だ」

「……言ったんだ。怖いもの知らずだね」

「ちょっとした仕返しのつもりだったんだよ! なのにあんな目に遭うなんて」


 どうやら色々あったらしい。

 カタリーナとしては、体型をとても気にしているのをシリルは知っている。

 それこそアルベルクが胸の大きい女性が好きだと聞いて、胸が大きくなるように頑張っていたりしていたくらいだ。


 愛のなせる技だと得意気に言っていたが、シリルとしては、よく分からないけれど突然襲ってくる雑魚という面倒くさい相手だったのでそこまで好感がなかったためか、趣味が悪いとしか思わなかった。

 そこでアルベルクがきっとシリルを見て、


「それでお前はさっきから二枚の紙を見比べて百面相していたが」

「ああ、うん。いいニュースと悪いニュースがあったんだ。どちらが知りたい?」

「……知りたいと聞いてくる辺りで、お前、誰かに話したくてたまらないんだろう」

「よく分かっているじゃないか、と言いたいところだけれど、人に話して自分の頭の中を整理したいといったところかな」

「あのメイド関係のことか?」

「察しが良いね。どちらもそうだよ」

「お前が悩むのはいつもあのメイドのフルール関係の話ばかりじゃないか。愚痴も含めて」

「そんなに話していたかな? でもそれだけ僕がフルールに夢中だってことだよね。どうやったら上手く“好き”と伝えられるかな?」


 切なそうにシリルが呟いてから目の前の紙に目を落としてシリルはニヤァっと笑った。

 それを気持ちが悪いものを見たかのような表情でアルベルクが、


「どうしてそんな顔になる。お前のそんなだらしのない顔は初めて見た」

「それはそうだよ。フルールの両親に、もしもフルールが僕を好きになったらお嫁さんにしていいですかって書いたらぜひって返事が返って来たし」

「……おい。何で外堀から埋めようとしている」

「大丈夫だよ、フルールにこの話を告げたら破談ですからって念押ししておいたし」

「……その前にフルールを落とすのが先だろう」

「長期戦になりそうだから、こう、フルールがその気になった時に一気に進められるよう事前準備をですね」

「根回しは大事だが、ここで、やっぱりシリル様のもとにいるよりも新たな冒険に出ますとか、偶然昔の恋人に再会して恋心が再燃とか、偶然道端でぶつかってから始まる恋とかそういった可能性だってあるだろうに」

「アルベルク。君は物語の読み過ぎだと思う」

「昔出会った女の子と再会して、初恋が再燃焼した奴には言われたくないと思う」

「……まあ、フルールと何か恋が始まりそうな男がいたら、次々と縁を切るように裏工作するのはいいとして。こちらはちょっと真面目な話なんだよね」


 そう言いながらその紙に目を落としてシリルは一度黙ってから深々と嘆息して、


「最近、フルールが夜中にコソコソと一人で出かけているようなんだ」

「へぇ、別の男に会っているんじゃないのか? 振られたな」


 冗談めかしてからかうアルベルク。

 先ほど言ったように他に恋人になりそうな男がいたら、シリルの事だからフラグは全部秘密裏にへし折ることだろう。だがそこでシリルは真剣な表情で、


「うん、フルールは“男”に会っていた」


 それを聞いてアルベルクは即座にシリルの様子を見つつ、防御結界の魔法を使う準備を始めようとした。

 シリルの声は平静だし表情もいつも通りだが、シリルはこの状態で恐ろしい事をするからだ。

 そもそも何故落ち着いているのか。


 それはすでに何らかの手を打ったという事ではないのか? ことフルールに関して、心が狭く、原子レベルの隙間しか心の広さを持っていないのではないかと思われる(実質ないに等しい)シリルがこんな状態なのである。

 なのでそんな状況だからかアルベルクは嫌な汗が背筋を伝う。

 そこで深々とシリルはため息を付いてから今日来たばかりの朝刊を取り出し、


「これはもう読んだかな?」

「ああ、最近、“翡翠の涙”のアジトが次々と何者かの手によって破壊されている話だろう。まあそこには普通に火災があったといった内容しか書かれていないが」

「フルールの仕業だ」


 その言葉を聞いてあるベルクは一瞬何を言われたのか分からなかった。

 なぜならフルールが彼らを潰す理由がないからだ。それを関連付けること自体がおかしいのだが、シリルの表情は真剣そのもので、アルベルクは困惑しながら、


「どうしてそうなったんだ」

「僕が知りたいよ。そもそもフルールだって確証を得たのは、追跡しても途中で巻かれてしまったこととは別件で、僕の情報網に引っ掛かった謎の人物がいたので誘導してみたらフルールが来たし」

「……今度はお前のと同じ情報網まで手に入れたのか? あのメイドは」

「……僕のほど精度がいいわけじゃないし、偽情報に引っかかるくらいだから大した事がないと言いたいのだけれど、七つくらい偽情報を用意して引っかからなかったのに、“僕”関連のものが入ったら引っかかったんだ。これは期待してもいいのだろうか」

「いや、今の話でどうしてそっちに行く。フルールが好きなのは分かったがそこは喜ぶ所ではなく、というか多分、ご主人様関連だから来たのでは?」

「もう少し夢のある答えを期待したけれどやっぱりそうだよね……。だったらどうしてアジトを潰すことになったのか、未だにフルールの思考が読めない」


 呻くシリルを見ながらアルベルクが気休めで、


「まあ本当に別の男が出来たんじゃなくてよかったな」

「本当にね。でも別な意味でフルールを野放しできなくなっちゃったんだよね……」

「ふむ、つまりシリルはフルールを口説ける自信がないと」

「まあ、僕がフルールを恋人にしてしまって色々言い訳しちゃえばどうにでもなるからね」

「言い訳はもうお前の事だから用意してあるのだろう?」

「もちろん。問題はフルールがどうやったら僕を好きになってくれるのかなんだよね……」

「最大の難関を俺は傍観者として楽しませてもらうよ」


 そんなアルベルクの答えを聞きながら、シリルはふうと息を吐いて、


「とりあえず今日の夜もでかけそうだから、現行犯的な意味でアジトを襲うのを止めさせよう。フルールにもしものことがあって大怪我をされたら困るから」

「怪我をするとは思えないが、お前が暴走しそうで怖いのでこの辺りでフルールには止めてもらった方が良さそうだな」


 シリルの様子を見つつアルベルクが答え、そこで執事の一人がフルール達が着替えたのだと伝えに来たのだった。


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