十歳児並と
フルールがいなくなってからシリルが真っ青な顔で、
「どうしよう、戦闘能力がありすぎてフルールを野放し出来ない状況に」
「そこをついて嫁にしてしまえばいいのでは?」
アルベルクが嘆息する様にシリルに言うと、シリルが睨みつけて、
「フルールに愛してもらえなくちゃ嫌だ」
「我儘だな……まあ好きにしろ。俺の恋愛じゃないし」
「ああ好きにさせてもらうよ。うう、どうしよう……頑張って口説かないと、この力をフルール自身が気づいたら、宮廷魔法使い目指したりどこぞの兄の様に世界を放浪する冒険に出かけてしまうかもしれない」
「いや、あの兄の場合は変な所で脳筋だから。それに今は奪われた竜の子供を探している最中らしいし、完全に脳筋ではないかもしれない」
「で、フルールが脳筋じゃない可能性はあるのか?」
「……」
「く、もう僕はどうすればいいんだ。うう、とりあえずストレス解消も兼ねてこの道具を奪い返しに来る輩を倒したりお掃除したりするのはいいとして、うう……」
そういった悩むシリルにアルベルクとカタリーナは顔を見合わせる。
そんなことをしている内にフルールがお茶とケーキを持って現れたのだった。
レモンケーキは好評だった。
二種類のレモン、“リリアルのレモン”“ミスリエの青レモン”の二つを合わせたのである。
前者は甘い香りが特徴で、後者は佐和田か無酸味が特徴である。
酸っぱすぎないよう果汁や皮の量も調整したレモンケーキ。
紅茶と合わせて頂いてもらいました。
「お、美味しい。フルールのレモンケーキは最高だよ。一生食べていたい」
「シリル様がお望みならずっと作りますよ」
「……うん、分かってたんだ。でも美味しいね本当にこれ。カタリーナにアルベルクもそう思わないか?」
それにまず答えたのはカタリーナだった。
「そうね。フルール、私のメイドにならない?」
「カ、カタリーナ、駄目だってば。フルールは僕のメイドだし」
「女の子同士の方が気楽かも知れないじゃない?」
「う、うぐ、でもフルールは渡さない。そ、そうだ、アルベルク、アルベルクはどうだった?」
そこでシリルがアルベルクに問いかけるとアルベルクは鼻で笑ってから、
「まあまあだな。それでもう一切れお代わりだ」
「気に入っているんじゃないか」
半眼でアルベルクに言うシリルだがそれにアルベルクはふんと笑い、
「……まあまあだ。素朴な味だしな」
「もうひと切れって言っている時点でお気に入りじゃないか。素直になったらどうなのかな。まあ、もうこの歳になったらその性格……いや、何でも無い」
そこでそれ以上シリルは何かを言うのを止める。
彼の視線の先にいるカタリーナの方を見ると、何かを思いついたように目を輝かせている。
すると身の危険を感じたらしく、はっとした様なアルベルクが美味しいと言いだして、カタリーナは瞬時に残念そうな顔になった。
そこで私とカタリーナが目が合う。にこりとカタリーナは頬笑み、
「ごめんなさいね。アルベルクは根が悪い子じゃないんだけれど悪ぶっているから。もっとも私の調教の成果が出ているようだけれどね」
「いえいえ、こういう意地っ張りな感じの男の子は慣れていますから大丈夫です」
「男の子?」
そこでぴくんとシリルが反応した。
探る様に私をシリルが見ているがそんなシリルを一瞥してからカタリーナが、
「フルール、その男の子って、誰?」
「弟ですよ。末っ子なので子供子供言われて、ケーキを出したら僕は子供じゃないからいらないって言っていましたから」
「うん、ちなみに何歳?」
「この前十歳になりましたね」
そう告げると同時にシリルとカタリーナがアルベルクを見て、うむと頷いた。
それにアルベルクが顔を真っ赤にして、
「お、お前達、俺を今、十歳児並と思っただろう!」
「はははは、まだ何も言っていないじゃないか。もっとも僕はそう思ったけれどね」
「いいだろう、今日こそは再び挑戦して勝利してやる」
「また僕の勝ちだけれどね」
シリルがそう言いながらアルベルクと遊ぶのを決めたようだ。
仲が良いなと思いながら私は思いだす。
「シリル様、そろそろメイド服に私は着替えたいのですが、ツーショットはまた今度で構いませんか?」
「! 速攻でアルベルクを倒す! そして写真を撮ろう!」
そして宣言通りシリルはアルベルクを瞬殺して慌てて着替え始めたのだった。




