変だな~と思いながらも
私が取り出した白い球を見てシリルは叫んだ。
「“竜の眠る玉”い、いったいそれを何処で……いや、彼らがそれを?」
「シリル様はご存じなのですか? 何だかドラゴンを呼びだして都市を壊滅させるとか何とか言っていましたが」
「……するかもしれないね。対応が間に合わなければ。一応は都市には魔法使いが沢山いるけれどドラゴンに対抗するのは難しいかな」
「ドラゴンてそんな危険な生き物なんですか?」
「危険だね。だから生息地周辺に人間は住めないし、それを避けるように国か点在していたり交通網が整備されたりしているくらいだからね。まあそれのおかげで攻めてこれない場所があるから防御としての利点はあるけれどね」
「そうなんですか。お伽噺でしか知らない話でしたからね」
「そうだね、たまにはぐれドラゴンで村が壊滅する事もあるけれど、そんな感じかな」
ドラゴンてそんな怖いものなんだと思っていると、シリルはその玉を受け取りながら、
「でも“翡翠の涙”は結構強い魔法使いがいたはずだけれど、こんな物を見せびらかしたりしているのを見るとそんなに沢山いなかったのかな? フルールが逃げてこれたわけだし」
「えっと、10人くらいいました」
「……君、確かフルールを追いかけていったんだよね」
そこで私の話を聞いていたシリルが、私を追跡していたらしい執事の人を呼んで何かを話し始めた。
小声で聞き取れないが、時々真剣な表情になって私をちらちらシリルが見ている。
何処となく顔が蒼白な気がしたが、何でだろうと私が思っていると、
「フルール、先生に教えてもらった魔法はどれも使えるの?」
「? はい。今回もそれらを使って倒しました。一応は必殺技も自分で編み出したのですがそれは必要なかったみたいです。でもその教育のおかげで、連れ攫われても大丈夫でしたよ」
「……何でフルールは攫われたの?」
「このドレスを汚したくなかったので……でもアジトを潰した時にドレスのすそが少し汚れてしまいました」
「なるほど。それでドレスはそんなに気にする所なのかな?」
「だってシリル様、私とこの格好でツーショットが撮りたいって言っていたじゃないですか」
「僕のため?」
「そうですが何か?」
シリルに喜んで欲しくて、そちらを優先させてしまったのが私が連れ攫われてしまった主な原因だった。結果的には、変な道具を奪えたので良かったのかもしれないが。
そう思っている私にシリルが、
「フルールがとても強い事は分かったけれど、でもあまり僕を心配させないでね。別にドレスの代わりは幾らでもあるから、今度は破ってしまってもいいからフルールは自分の身を守るようにしてね」
「はい! シリル様」
「それは僕とフルールの絶対の約束だから、破ったらだめだよ? 後よっぽどの身の危険を感じない限り、攫った相手を倒すような危険なまねはしないでね」
「でも……」
「でもじゃなくて僕は、フルールが大好きだからそう言っているんだ」
真剣な表情のシリル。
その表情に私は一瞬本気になりそうになりながらも、違う違うと振り払って、
「ありがとうございます。これからは気をつけますね」
「……うん、そうしよう」
「あ、それと早く二人で写真をとりましょう、シリル様がとりたいって言っていましたしね」
「うん、そうだね。フルール、戻ってきてすぐで悪いけれどお茶をお願いしていいかな?」
「はい、分かりました」
そう答えて私は、笑顔の仮面をかぶった様なシリルに、変だな~と思いながらもお茶を入れに行ったのだった。




