ツーショット
私は今すぐ逃げだしたい気持ちになっていた。
カタリーナに騙されてしまった私はこのようなドレスを着せられていた。
ピンク色と白の透ける様に薄い布が重ねられ、白い花を模したレースが所々に彩りを添えている。しかもそのピンク色の薄い布が幾重もの花びらを持つ大輪の花を咲かせ、飾られており、ところどころに陽の光に輝く雨上がりの花畑に落ちた水滴のようにガラスビーズが散りばめられている。そんなとても美しいドレスだったので私が一瞬見入ってしまったのがいけなかったのかもしれない。
そのすきを突くように私は着せ替えられてしまった。
それはいい、だが、一つ腑に落ちないことがある。
この、まるで私の体型を知り尽くしたように作られたドレス。
カタリーナ様は私よりも胸が大きい。
だからおそらくはカタリーナ様の物ではなく、シリルのお母様も胸が大きいので違う。
ではこれは誰が作るよう命じたのか。
私のスリーサイズを知っている人間など、この屋敷では数少ない。
そうなってくるとと私がこんな目にあっているのは一体誰のせいなのか……。
そこでカタリーナがシリル達を呼ぶ。
現れたシリルは私を見て、固まっている。
やはり私のドレス姿なんて様にならないだろうと俯きそうになっていると、
「綺麗だ……」
「え?」
「フルール、とってもよく似合っているよ。やっぱりフルールの宝石のような瞳には、同じ色のドレスが似合うね!」
シリルが興奮したように私に言うのを聞いてそういえば、シリルにはメイド服を作る関係上スリーサイズを教えたなと思いだした。
つまり私が今こんなドレスを着せられてお人形のようにされているのも全部、シリルに原因があったのだ。
そう思うと似合わないこのドレスを着せたシリルが恨めしく感じるのだけれど、シリルはとても楽しそうだ。
ウキウキとしたかのようにカメラ(最新型でとった瞬間その画像が紙に移されて出力される優れもの)を私に向けてくる。
なのでそんなシリルに私は、
「どうしてシリル様は私にこんなドレスを?」
「え? いや、可愛いかなって」
「可愛くありません。私はシリル様たちほどの美貌もありませんし」
「いやいや、十分フルールは可愛いと思うよ」
「シリル様、一体何が目的なのですか? そんなにお見合いが嫌で私にその代役をさせたいのですか?」
「! べ、別にそういうわけでは……」
「だったらどうして私にこんなドレスを?」
「フ、フルールが好きだから」
「それは本気で言っているのですか?」
「ほ、本気だって言ったらどうする?」
それを聞いて私は黙ってしまった。
もしも本気なら、私はきっとこの屋敷を出て行ったほうがいいのだろう。
そもそもが一般人の私にこんな格好をさせている時点でおかしいのだ。
「シリル様、もしお見合いから逃げる口実に私がされているのなら、私はここを去るべきだと思います」
「フルール!」
「どちらなのですか?」
こんな優しくていい人の将来を私が潰してはならない、そう思うのだ。
だから身を引くべきかもしれない……そう私が考えていると、
「じ、実はその、僕……フルールと同じ服でツーショットが撮りたくて」
「え?」
「だって専属メイドで気に入っているから同じ格好で撮りたかったんだ。でもフルールがそんな風に悩んじゃうなんて思わなかったから、ごめん」
「! シリル様は悪くありません! そ、そうだったんですか」
「うん、そもそもフルールをお見合いの代役にするつもりなんて少しも全く無いから」
「そ、そうですか。私の早とちりだったんですね」
「うん、だからその、えっと、フルールにはもう少しそばに居て欲しいな」
「はい! メイドとしてご主人様に頑張って仕えます。あ、そうそう、お茶とケーキお持ちしますね」
「うん、楽しみにしてるね」
私は慌てて外に出た。どうやら私の勘違いらしい。
良かったまだここにいられると思っているとそこで妙な輩が数人。
珍しく私を狙ってきているらしい。
いつもの様に倒そうと思うがこれはドレスで、借り物で、汚すのはどうだろうと思って……その油断をつかれて気絶させられた私は、何処かへと連合さらわれてしまったのだった。




