上手い具合に飼いならされているな
「アルベルク様、少しお時間をよろしいでしょうか」
私はお茶を全員に配ってから、そう話を切り出した。
シリルが美味しそうといいつつお茶のカップに手を伸ばしたまま固まった。けれどすぐに、アルベルクの方をじーっと見るシリル。
何も言わないが視線で何かを訴えかけているようだった。その視線にアルベルクは気づいたようだが、ちらちらとカタリーナの方を彼は見る。
つまりアルベルクは、今はカタリーナと一緒にお茶する時間だけれど、フルールに誘われちゃったよ、俺、もてもてだなー……すみません、今のは冗談です、カタリーナ様一筋です、といった風に私には見えた。
そこでふっとカタリーナが頬笑み、
「いいわ、可愛いフルールのお願いですもの」
「はい、分かりましたカタリーナ様。それではアルベルク様を借りていきますね」
そう言って私はアルベルクと腕を組むように連れて行こうとすると、シリルがあっと声を上げた。
何でだろうなと思って立ち止まり振り返ると、何処となくシリルが涙目になって、
「そ、それは恋人同士が腕を組んでいるように見えるから止めて……」
「え? あ、はい。そうですよね、カタリーナ様の恋人をとっているように見えますものね。私が浅慮でした。服を引っ張りますね」
そして私はアルベルクの手首付近の服の袖を掴み引っ張る。
そこで私は気づいた。このアルベルクが、ふっと嘲笑うかのような笑みを浮かべシリルを見たのを。だが、何でだろうなと私は思っただけだった。
だって、この前の報酬という話を私は聞きたかったからだ。
だがこのアルベルクとシリルは、正確にシリルだけがアルベルクを睨みつけている。
するとカタリーナが珍しくシリルに微笑み、
「シリル、二人っきりでお話しましょう? 何か困った事があるなら相談に乗るし手助けしてあげてもいいわよ?」
「カタリーナの手助け……そうだね、カタリーナもこう見えても女の子だし、アルベルクよりは役に立つか」
「こう見えても女の子?」
ふふっと楽しそうに微笑みながら、何処からともなく取り出した水色の扇子で口元を隠して笑っうカタリーナだが、そうするとその瞳が強調される。
つまり、凄く冷たい目でシリルを見るカタリーナの瞳が。
けれどシリルはシリルでそれを見慣れているのか、適当に受け流しているようだった。どうしようと私が思っているとそこでカタリーナが、
「私もシリルと色々とお話ししなければならない事が分かったから、フルール、早くお話しに行ってらっしゃい」
「は、はい……では行きましょう、アルベルク様」
私がそうアルベルクに言うとそこで金縛りにあったかのように凍りついていたアルベルクがああと頷いた。
カタリーナの様子を見て動けなくなっていたらしい。
上手い具合に飼いならされているなと私は思いながらその部屋を後にしたのだった。




