仕事(略奪ともいう)
もうすぐ太陽が顔を出そうという早朝、舗装もされていない一本道に一つの灯りが走っていく。灯りの主すなわち御者は負担も考えず飛ばす、いや考える暇がないというほうが正しい。その馬車の後ろを追いかけるものがあるから。
人影が跳躍し御者の座る台に降り立った。直後御者の持っていた灯りが落ちる。
『大丈夫、ちょっと貰っていくだけさ』
幾つか木箱を軽く持ち上げ、鎖で繋ぎあった人影、つまりヴェリタは立ち去った。
ミランは一部始終を見学し、二人の素早さはやはり強化されたクローン人間である証拠なのだとため息をつく。普通に話すだけならわからないのに。鎖がなければ双子だと通すことも出来そうなくらい。しかし、例えそれを実行しても暮らしづらいのは分かりきっている。悲しいが本当に双子の生まれでもクローンと勘違いされ殺された人も確かにいるのだから。
それもあってクローンを憎む人はどこにでもいる。ヴェリタ二人がまだ暴走していなくても、普通の人より優しいくらいでも、二人を殺そうと狙っている。
『どうしたんだ?ミラン』
笑顔のヴェリタに、ミランは考えをごまかすように笑い返す。二人がこのまま笑って暮らせるといいな、と願って。