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red~編入~

プロローグなのに主人公が出てきておりません。

現在、彼の出番が多いですが彼は主人公では無いのであしからず。

 2013年1月世界中にあるニュースが流れた。

 超常的な能力を持った人類の誕生。

 その赤子が最初に確認されたのは極東の島国、日本であった。

 しかし、それは普通であれば秘匿され研究対象となるはず......それが世界へ公開されることになった理由とは?


 簡単なことである。

 赤子一人であればそれこそ簡単に隠し通すことが出来たであろう、だが数が多ければ?

 そう、日本だけでなく世界中で能力者が誕生し始めたのだ。

 この事態にいち早く対応したのは、国家でも国際連合でもなく、たった一つの民間企業であった。


 この企業の名をヴォルフカンパニーという。

 ヴォルフカンパニーは日本近海にある群島を買い上げ、そこに能力者を集めて研究する施設を作り始めた。

 合意のとれた者だけではあるが、能力を持っている赤子の家族ごとまとめて施設に移住させるのだ。

 当初、これには各国からの強い反発があると思われていた。自国民を、それも言い方は悪いが研究価値のある者をピンポイントで連れて行かれるのだから、当然である。

 しかし、予想に反し非難の声が挙がることは少なかった。


 ヴォルフカンパニーはその研究施設を封鎖し、研究成果を独占などはしなかったのだ。それどころか、各国から優秀な研究機関や人材を招き入れることによって研究の加速度化を計った。

 そして2025年、ここ国際協立能力開発関連学園が建立された。

 国際協立能力開発関連学園、通称``学園``、これ以降はこの学園を中心に発展することになる。


「というのが~、この学園島の歴史よ~覚えておいてね~」


 妙に間延びした声が耳に入る。


「あのー、冴子先生、質問いいっすか?」

「なあに~、道明寺くん?」

「何でいまさらそんな説明をしてるんすか? いくら何でも知らない奴はいないと思うんですが」


 事実である。

 この学園は当初こそ規模が小さかったものの、生徒数は増え続け増改築を繰り返した結果、小学校から大学までを多数抱える、単一の学園と呼ぶのが不思議なほどの大きさになっていた。

 加えて今、2040年現在ではほぼ全ての学生が生まれたときから、もしくは小さい時から学園島にいる者ばかりになっているためにこの程度の歴史は高校生になるまでの初等、中等教育で習っているのである。

 ちなみに、日本領土の中にあるため所属は日本国となっているのだが、法律は独自のものが適用されており、治外法権となっている。

 そのうえにヴォルフカンパニーが元々、PMC(民間軍事企業)をも兼業していたために能力を転用したことによる軍事力、成功しすぎている企業としての資金力、広い土地と高い技術による生産力、それに多国籍による手の出しにくさにより、もはや一企業が支配する独立国家といった様相をなしている。


「えっとね~......一応?」

「いや、一応て」


 質問した茶髪の青年、道明寺どうみょうじ隆虎たかとらは力が抜けたかのように机に突っ伏した。

 その様子を見た間延びした声が特徴の教師が、慌てたように付け足す。


「い、いや~、理由はちゃんとあるのよ~。 ほんとにあるの~」

「分かったッスから」

「む~信じてないわね~」


 そんな反応に子供っぽく頬を膨らませる教師。

 この教師、桑霧くわきり冴子さえこはもうそれなりの年齢であるはずなのだが......


「もう~、じゃあこの話をして~みんなをビックリさせてあげるんだから~!」


 いまだに頬をハムスターか何かのように膨らませたまま告げる。


「なんと~! 今日このクラスに~転入生が来るの~!」

「「「おお~!!」」」

「あれ~? 編入生だったかしら~」

「「「さえちゃん......」」」

「先生のことを冴ちゃんって呼ばないの~」


 全員からあからさまなガッカリ視線が送られる。

 そんな様子にますます頬を膨らませる冴子。痛くないのか聞いてみたくなるほどに膨張している。


「で、冴子先生。 結局さっきの話とは何の関係があるんスか?」

「それはね~」

「冴ちゃ~ん、校門のところに車来たみたいだよ~。 あれじゃないの?」


 話を遮って声をかける女子生徒。

 聞きたかったことを遮られ、若干不機嫌になった道明寺もその女子生徒が指を指す方向を見る。

 そして、そのまま頬をひきつらせた。


「聞いてたよりも~だいぶ遅いけど~あれがそうみたいね~」

「なあ、冴子先生......あれって俺の見間違いじゃねえッスよね?」


 そう呟く道明寺の視線の先にあったものは一台の車。

 ただし、黒塗りで車体が長く、車の上部にどこかのエンブレムまで掘られている。まごう事なきリムジンであった。

 しかも素人が見ても、小金持ち程度では一生かかっても買えないであろうランクであることは見て取れる。

 この学園島でそのようなものに乗っている人間など、かなり限られることになる。


「冴子先生、いったい誰ッスか、編入生って......」

「聞いて驚け~。 なんと編入生は~ヴォルフカンパニーのお嬢様なのだ~!」

「「「............え、えええええぇぇぇ~~~!!!」」」


 車から出てきた二人組が学園に向かって歩いてくる。

 片方が持つ日傘に隠れて顔を見ることは叶わないが、その足取りから心が弾んでいるのであろうことは簡単に予想する事が出来る。

 道明寺はこの先の学園生活に不安の溜め息を吐くことしか出来そうになかった。

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