表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳳雛の皇  作者: 鷹峰悠月&若臣シュウ
32/38

四、鳳雛の皇(31)

 次々に崩れ去る同胞を目の当たりにして、男の身体は次第に震えはじめる。

 その心を支配していく感情――恐怖、と呼ばれるそれだ。

 ――数では、圧倒的にこちらの方が有利だった。その、はずだったのだ。

 思惑が完全に外れたことによって、男の頭脳は真っ白になる。最早、幾ら考えても、何の作戦も弾き出されてはこなかった。

「ば、馬鹿な……?たった、三人だぞ……何故」

 ――ゴルダム様に報告せねば。

 震える肩を無理矢理抑え、男は踵を返す。

 しかし。

「何処行く気だ?腰巾着」

 じゃっ!

 視界を、行く手を遮ったのは――目前に振り下ろされた大剣。

 これまでに、幾人の血を浴びてきたのだろうか。黒光りする刀身が、鈍い光を放っていた。

 腰巾着と呼ばれた男の肩が、跳ね。反射的に数歩後退る。

 膝が笑っているのが感じて取れ、不快な感覚に顔を歪めた。

「ファング……くっ」

「人数集めても雑魚は雑魚だな。

 テメェとの腐れ縁も、ここらで仕舞いにしようぜ」

 ファングの台詞を合図に、両者がほぼ同時に動く。

 男が懐からナイフを取り出すより早く、ファングの大剣が咆哮をあげた。

 どさ……、と。

 土埃を立て、倒れゆく屍を視界の隅に捉えて。

「……つまらねぇんだよ。俺等の世界は殺るか殺られるかの二択。

 楽する奴から潰されんのは判ってたコトだろ?」

 苦々しく、そう吐き捨てる。

 ファングの視線はつい、と、金髪の青年――ウェルティクスへ向けられた。

「楽しませてくれよ?王子さん。

 俺を殺せるのは――アンタかもしれねぇんだからよ」

 くく、と可笑しげに笑い、ファングはウェルティクスへと歩き出す。

 一歩、また一歩と歩を刻む間も、絶えず向かってくる『雑魚』は無造作に斬り捨て。

 視線は一点――恰好の標的を見据えたまま。

 にぃ、と、口端に浮かべた笑み。それは、或いは。

 楽しいパーティーを待ちかねていた子供のように。無邪気な感情表現だったかも知れない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↓ランキング参加中 気に入ったらぽちっとお願いします
アルファポリス(週1回)
NEWVEL
長編小説検索Wandering Network

ブログもだらだら更新中!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ