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鳳雛の皇  作者: 鷹峰悠月&若臣シュウ
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二、闇の片鱗(10)

 彼等は馬を調達する為、一度街道を外れ、進路を南東の村にとった。

 王都へは少々遠回りとなってしまうが、一刻を争うウェルティクスに選択の余地はなかった。

 先を急ぐ旅だからこそ、目先のことに気をとられては命取りとなる。それを、彼は心得ていた。

 幸い危惧していた天候の崩れや襲撃もなく、村を視界に捕らえると、青年は知らず胸を撫で下ろした。


 そして。

 村へと辿り着いた頃には、夕刻を大分回ってしまっていた。

 建物や人々を柔らかな朱の色彩が包み、せわしく店じまいをする村人の姿を、通りにいくつか見かける。

「存外、時間がかかってしまいましたね。馬の手配は明日に致しましょうか」

 少し離れて歩いていたイルクに声を飛ばすと、彼は無言のまま重く頷く。

 機械的とも言えるその態度に初めこそ戸惑った青年も、慣れたのだろう。これが彼にとっての普通なのだと、やがて理解した。

 村外れに、素朴な佇まいの小さな宿屋が見て取れた。この村に宿はここだけだという。大通りからは外れた場所にあるし、立ち寄る者は少ないのだろう。

 二人は、その宿屋に一泊することにした。

 客人が珍しいのか、主である老夫婦は大層歓迎してくれた。

 暖かな田舎料理でもてなし、部屋もぴかぴかに磨いてくれた。主人が慌てて客用の暖炉を点けようとしたところ、立ち上った煤と埃にむせてしまい、困惑する二人に真っ黒になった顔で陽気に笑ってみせた。

「いやぁ。はははは、お恥ずかしいところを。何せ、暫く使ってなかったもんでねぇ」

 などと言いながら、手布でごしごしと顔を拭いている。

 平和な夜――

 に、なるはずであった。

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