表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/28

4



それは本当に、なんでもない午後だった。


いつも通りの陽ざし。

いつも通りの庭の色。

いつも通りにレオンが遊び相手としてやって来て——


「ラティア、今日は本、読まないの?

 じゃぁ、一緒に外で遊ぼうよ」


「うん。今日は大丈夫そう」


ラティアは微笑んだ。

その笑顔に、不安もざわつきもなかった。


あの神官からもらった“魔力安定の腕輪”は、

腕に馴染むように静かに光を宿し、

ラティアにとってはもう安心の象徴になっていた。


——何も起きないはずだった。


本当に、何も。



庭で風を受けながら、二人は花影の下で他愛もない話をしていた。


レオンが枝を拾い、ふざけて剣の真似をする。

ラティアが笑ってその先を指でつつく。


(……こういう時間が、ずっと続けばいい)


ラティアがそう思った、その“次の瞬間”。


ぱきん。


乾いた小さな音が、指先で弾けた。


「……え?」


手元を見る。

魔力安定の腕輪に、ひと筋のひび。


予兆も、光の揺らぎもなかった。


ただ、突然——

本当に突然に。


ぱんっ。


音とともに、腕輪が“内側から弾け飛んだ”。


破片が光を散らしながら空に舞う。


(……なに? どうして……?)


ラティアが息を呑むより早く。


——ドン、と世界が震えた。


空気がぶつかり合うような重く鋭い衝撃。

ラティアの髪がふわりと浮き、次の瞬間には足元が揺らぐ。


「ラティア……?」

レオンが、ほんの半歩近づいた。


その半歩が、致命的だった。


しゅる、と空間が裂けたように金の光が走る。

無数の細い線が雷のように走り、レオンへ向かって弾けた。


「危な——っ!」


レオンが叫ぶ間もなく、光の鞭が肩を切り裂いた。


べり、と布が音を立て、血が滲む。


「レオン!!」


止めようと伸ばしたラティアの手から、

さらに濃い光が噴き上がる。


(やだ……なんで……っ!!)


暴走——

それはラティアの意識をまるで無視して広がった。


風が巻き起こり、花びらが渦を描いて舞い、

光の線は次々とレオンめがけて飛ぶ。


「ラティア、逃げ……っ」


レオンは避けようとするが、

光は彼を“敵”と判断したように追尾する。


金色の光が一本の“帯”になり、横からレオンに叩きつけられた。


「…………っ!」


声にならない呻き声が溢れる。


腕が焦げ、裾が裂け、

細い傷が幾筋も赤く浮かぶ。


それでもレオンは立ち上がる。


「ラティア……泣くな……!!」


「泣くよ! だって……っ、レオンがっ……!!」


叫んだ瞬間、光が暴れるように爆ぜた。


ドォンッ——!!


強烈な反動。

レオンの体が近くの木へ叩きつけられる。


鈍い衝撃音と、折れる枝の音。


「レオン——ッ!!」


ラティアの叫びが震える。


光の嵐がようやく薄れ、

はっとして駆け寄ると、

レオンは地面に倒れ込んでいた。


肩は深く裂け、片腕は焦げ、

膝も血で汚れ、

額には衝撃でついた赤黒い痕。


息は荒く、目はうっすらと開いて——

それでも、ラティアを見て笑った。


「へ……へへ、大丈夫……大丈夫…………」


「笑わないで……っ、レオン……!!」


声が震え、涙がとめどなく落ちる。


レオンはかすかに手を伸ばし、

ラティアの頬に触れようとした。


「……痛いのは……大丈夫……

 ラティアが……泣くほうが……よっぽど……」


そのまま、レオンの意識がふっと途切れた。



腕輪の破片が、光を失って草の上に散らばっていた。


それはまるで

——“ラティアの魔力が、ついに人の器を拒んだ”

そんな予兆のように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ