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「春の庭で、ふたたび」
レオンはその朝、ずいぶん懐かしい夢を見た。
春の庭。
幼いラティアの髪飾りが枝に引っかかって、
自分があたふたしながらほどいてあげた、あの小さなアーチ。
そして——ラティアの肩のあたりにふわりと舞った“金色のひかり”。
目を覚ましても、胸の奥がじんわり温かい。
(……久しぶりに、あの場所に行きたいな)
そう思ったレオンは、
ちょうどラティアの容体が安定したという知らせを聞き、
その日のうちにバレンシア家を訪ねた。
「ラティア、ちょっと庭を歩かない?」
少し気恥ずかしそうに微笑む。
「え……急にどうしたの?」
「昔の夢を見ちゃってさ。
一緒に散歩した……あの場所、覚えてる?」
ラティアは一瞬だけ驚いたように瞬きし、
すぐに微笑みを返した。
「……うん。行ってみようか」
あれからは、数ヶ月が過ぎていた。 ラティアの魔力はすっかり落ち着いている。
外に出るのは久しぶりで、そよ風が心地よい。
レオンはラティアの歩調に合わせながら、
子どもの頃と変わらない調子で軽く手を引く。
「こっち。庭の奥だよ」
「なんでそんなに嬉しそうなの?」
「んー……夢の続き、見たかったのかも」
庭の奥へ進むと、
かつてレオンが枝で作った小さなアーチは、
木々が成長して大きな緑の屋根になっていた。
「変わらないね……」
ラティアが呟く。
「本当に。ここだけ時間がゆっくりだ」
レオンも同じ景色を見つめる。
ひらひら落ちる木漏れ日の粒。
幼い頃の笑い声がそのまま残っているような空気。
レオンはふと視線を落として、照れたように言った。
「……ラティアの光、また見られるかなって。
ちょっとだけ思ったりして」
「もう出ないよ、きっと」
ラティアは頬を染めて目をそらす。
「そっか。でも、ラティアが元気ならそれが一番だよ」
レオンの穏やかな微笑みは、
あの頃と同じで、でも少し大人びていて——
ラティアの胸の奥がふわりと温かくなる。
「ねぇ……またここで遊ぼうね」
「もちろん。また何度でも」
風がふわりと吹き抜け、光が揺れる。
二人は並んで歩き出した。
まるで夢の続きを、
いま二人でゆっくり辿っているかのように。
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