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朝。


鳥の声で目が覚めた。


ラティアはゆっくりと目を開ける。


いつもの天井。

いつもの匂い。


——そして。


(……あ)


思い出す。


勇者。

魔王。

聖女のお告げ。


昨夜の会話。


一瞬で意識が覚醒した。


(魔王疑惑……)


毛布の中で固まる。


精霊たちが、心配そうに周囲を漂っていた。


外から話し声が聞こえる。


カイルの笑い声。

サラの穏やかな返事。


そして——低く落ち着いた声。


ユリス。


(……いる)


逃げたい気持ちが、ほんの少しだけ浮かぶ。


けれど。


昨日。

マントを掛けてくれたこと。

斬らなかったこと。


「真実を見に来た」と言った声。


胸の奥が小さく揺れた。


ラティアは毛布をぎゅっと握る。


(……逃げたら、だめな気がする)


ゆっくり起き上がる。


深呼吸。


もう一度。


深呼吸。


そして、小さく頷いた。


外へ出る。


朝の光が森を満たしていた。


夜の緊張が嘘のように、柔らかい空気。


ユリスが焚き火跡のそばで剣を手入れしている。

カイルは朝食の準備中。

サラは祈りを終えたところだった。


三人の視線が一斉に向く。


ラティアの足が一瞬止まる。


(帰りたい)


でも。


止まらない。


一歩。


また一歩。


そして。


小さく声を出した。


「……おはよう」


ほんの少し震えていた。


だが、自分から向けた言葉だった。


カイルがすぐ笑う。


「お、起きたか」


サラが柔らかく微笑む。


「よく眠れました?」


ラティアはこくんと頷く。


そして視線が、自然とユリスへ向く。


彼は一瞬、手を止めた。


鋭い目が少女を見つめる。


まるで何かを測るように。


やがて短く答えた。


「……ああ。おはよう」


それだけ。


それだけなのに。


なぜか胸が少し軽くなる。


沈黙が落ちる。


ラティアは少し迷い——


ユリスの隣に、そっと座った。


昨日なら、絶対にできなかった距離。


精霊たちが嬉しそうに光を弾ませる。


その瞬間。


ユリスの視線がわずかに動いた。


空気の揺れ。


光。


普通の人間なら気づかないほどの微かな魔力。


だが、彼は勇者だ。


気づかないはずがない。


(……やはり。

普通の魔力ではない。

だが——

魔王のそれとも、違う。)


けれど。何も言わない。


追い払わない。


それだけで十分だった。


しばらくして、ラティアが小さく言う。


「……あの」


勇気を集める。


「今日……どこ行くの?」


ユリスは答える。


「北の調査を続ける」


少し間を置いて。


「……君はどうする」


ラティアは少し考える。


関わらない方がいい。


きっと、その方が安全。


少し、外の世界には興味がある。

けれど、自分がそこに触れるのは怖い。


「私はここにいる。」


「わかった。少しの間ここを拠点にしてもいいか?」


ラティアの表情が、わずかに明るくなる。

まだ、行かないんだ。


「うん!いいよ。」


その瞬間。


精霊たちが一斉に光を弾けさせた。


朝日が森を照らす。


勇者一行の旅に、

そっと寄り添うように——


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