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二つのベッド
宿屋の帳場で鍵を受け取って、部屋に入ったリフは、
部屋を見回して、声を弾ませる。
「二人部屋だよ、ゼル」
並んだベッドが二つ。
「ヴォルガにもらった金貨、」
リフはコートを脱ぎながら続ける。
「大事に使いたいけどたまには、いいよね」
ゼルは頷くだけだった。
「ゼルにはいつも狭い思いさせてるから、よかったね」
「……ああ」
灯りを落として、それぞれのベッドに入る。
「温くてうれしい」
リフは毛布を引き上げて、満足そうに声を出した。
しばらく、静かだった。
リフは、天井を見たまま目を閉じる。
寝ようとした、その時。
背中が、あたたかくなる。
「……え?」
振り返ると、ゼル。
「ちょ、ゼル」
「広いと、落ち着かない」
「えぇ」
「だって、二人だと狭いよ」
「狭い方に、慣れた」
「せっかく二人部屋取ったのに」
「いやか」
リフは少し考えてから、首を振る。
「いやじゃないけど、温いし」
ゼルは低く息を吐く。
「俺も、落ち着く」
それ以上、動く気はなさそうだった。
「まっ、いいか」
リフは諦めて、毛布を引き直す。
「そっちのベッド、綺麗なままだね」
「そうだな」
ゼルは短く答えて、距離を詰めた。
二つあったベッドの片方は、最初から使われなかったみたいに、静かに整ったまま。




