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いつか
「なぁ」
声をかけながら、ゼルは前を歩くリフの左肩に、そっと手を置いた。
次の瞬間、
ばしっと、乾いた音。
凄い勢いで手を払われ、ゼルの腕が弾かれる。
「っ……!」
リフが勢いよく振り返る。
目が合う。リフの表情が、はっと凍りついている。
一瞬の沈黙。
「ご、ごめん!」
「いや、俺が」
言いかけて、ゼルは言葉を止めた。
リフは肩をすくめるみたいに小さく息を吐く。
「びっくりしただけ」
「そうか」
ゼルは空いた手を下ろしたまま、リフを見た。
リフは視線を逸らして、少し困ったように笑う。
「気にしないで」
ゼルは遅れて頷き、視線を落とした。
さっき触れた場所を思い返す。
触られたくないのは、左肩なんだな、と。
「……いつかな」
ぽつりと、独り言みたいに零す。
「ん?」
リフが首を傾げる。
「なに?」
「いや」
ゼルは歩きながら、少しだけ声を落とした。
「話したくなったらでいい」
「なにを?」
ゼルは一瞬だけ考えて、視線を上げた。
「その時が来たら、分かる」
リフは少し不思議そうに見て、それから小さく笑う。
「変なの」
並んで歩きながら、距離はさっきより少しだけ近かった。
「でも、ありがとう」
リフはまた歩き出す。
ゼルはその背中を見ながら、さっきよりずっと慎重に、歩調を合わせた。




