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触れられる距離
「ゼル、水置いとくよ」
「ああ」
杯を受け取ろうとしたゼルの指に、リフの指先が触れた。
ほんの一瞬、ゼルの動きが止まる。
「……ん?」
リフが首を傾げる。
「なに?」
「いや、別に」
少し間があって、ゼルは目の前の肉を齧る。
指先に、まだその感触が残っていた。
触れられたくないって言ってたのは、なんだったのだろうと考える。
「どうかした?」
「いや、考え事だ」
「気になるけど」
「大したことじゃない」
「ふぅん」
リフは気にせず、コアレットをもう一口かじった。
食べ終えて外に出る。
並んで歩いていると、リフが少し前に出る。
「ねぇねぇ」
言いながら、ゼルの腕を引いて来た。
「どうした?」
「ほら、あそこ」
「ん?」
掴まれたままの腕に、ゼルは視線を落とす。
普通に触ってくる。それも、そこそこ強めに腕を掴んでくる。
「水のしぶき、虹になってる」
「そうだな」
「見えた?」
「ああ」
「きれいだね」
リフの声は楽しそうで、腕を掴む力もそのまま。
ゼルはその横顔を見て、小さく息を吐いた。
まぁ、いいか、今は、それでいい。
「あっ」
リフが声を上げる。
「消えた」
「一瞬だったな」
リフは残念そうにつぶやいて、ようやく腕を離した。
「行こ」
「ああ」
ゼルは何も言わず、歩き出す。
さっきまでのモヤモヤは、虹と一緒に消えた気がしていた。




