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コートと君の匂い
雨が止み、木の葉から水滴が落ちる音だけが残った。
ゼルは翼を畳み、そのまま歩き出す。
「ありがとね、濡れなかったよ」
「ああ」
しばらく並んで歩いてから、リフは首を傾げた。
「……ん?」
「なんだ」
リフはコートの前をつまみ、顔を近づける。
くん、と小さく鼻を鳴らした。
「ゼルの匂い、する」
ゼルの視線が、ほんの一瞬だけ揺れた。
「嫌か」
「ううん」
リフはもう一度だけ、控えめに嗅ぐ。
「さっき、翼で包んでくれたからだと思う」
「そうか、気になるなら、言え」
「気にならないよ」
リフは小さく笑う。
「むしろ、落ち着く」
リフがそう言うと、ゼルは少しだけ間を置いた。
歩きながら、自分の外套の襟元に指をかける。
「俺の外套にも」
「え?」
「お前の匂い、ついてる」
リフは一瞬きょとんとする。
「嫌だった?」
「嫌じゃない」
ゼルは答えずに歩き続けた。
やがて、ぽつりと落とす。
「お前が、いつもそばにいる気がする」
リフは一瞬だけ黙って、それから少しだけ口元を緩める。
「じゃあ」
袖を握ったまま、顔を上げる。
「お揃いだね」
ゼルの足が、ほんのわずかに止まりかけた。
「そうだな」
リフはふわふわのコートの前を押さえながら、前を向く。
ゼルは外套の襟に残る匂いに、何も言わず息を吐いた。
二人分の気配は、そのまま並んで進んでいった。




