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選ばなかった記憶
最近、あの人と目が合うことが増えた。
幼なじみ。
それ以上でも、それ以下でもない存在。
……のはずだった。
◆
廊下ですれ違うとき。
教室で席に着くとき。
朝の挨拶の、一瞬。
視線が重なるたび、
心臓が、少しだけ早くなる。
理由はない。
特別な出来事も、きっかけも。
それなのに。
◆
夜、布団に入ると、
時々、同じ夢を見る。
誰かが、目の前に立っている。
近くて、
でも、顔がはっきり見えない。
何かを言われている。
声は聞こえない。
言葉も分からない。
ただ――
私は、首を横に振っている。
◆
目が覚めると、息が少し苦しい。
何を断ったんだろう。
誰を傷つけたんだろう。
思い出せない。
それなのに、
謝りたい気持ちだけが残っている。
◆
夢の中で首を振るたび、
現実の私は、少しずつ何かを失っている気がした。




