一人で出来るもん 1
本日も無事、夜は明けたな。
あーたらしいー朝が来たっ、希望の、あーさーだっ♪、とな。
周りは静かで、綺麗な朝焼けに包まれていた。
しかし…こんな素敵な朝にも関わらず、昨日から俺はちょっぴりブルーだった…
実は探したのに見つからなかったミゲヤさんらの行方が、ずっと引っかかってて、妙に気になっていたからだ。
アマジャさんは、仮にも奴の事です、絶対大丈夫ですよとか、軽く言ってるが、
俺は不思議と何か、妙な胸騒ぎがしていた。
まあ…そうは言っても所詮、俺の…だからな、
これも、ただの取り越し苦労だったら良いな…
そして俺たちは移動を開始した。
そして数回の休憩のあと、とある、小さな村に着いた。
ここは当然目的地では無いが、水や食料を入手する為に、だった。
…いや、水ぐらい俺がひとっ飛び、パッと行ってどっかで汲んできますよ?って言ったのに…
まさか神様に、そんな事はさせられません…
そう言って強く却下された。
…いや、別に、全然ええねんけどな?
変に気にし過ぎなんですけど?
たかが水汲みくらいさ、喜んでやるよ?
まあ、ええけど…
ここは小さな村で、
だが?
なんか、家だの壁だのが…なんか…結構あっちこっち壊れてた。
なんか…最近魔獣が出て、ここでかなり暴れたそうだ。
そう聞くと?
魔獣が暴れたって言うならそれこそ、村が壊滅するとか有っても、全然不思議じゃ無いのに…
寧ろ?このぐらいの被害で、少なくて良かった…ですよね?
とか、思ってたら、
そもそも暴れた魔獣はまだ幼体、子供だったそうだ。
子供かよ…だったらこれでも充分、被害は大きいのかな。
おっーと?
はいはい、これは来たね?
はいはい、これ知ってる!
この、流れですか?この流れですよね?
ええ、知ってますとも…当然アレですよね?
これはもう早速、
助さん格さんの出番なんじゃ無いのかい?
そうですよね、ご隠居さま?…え?
俺は…俺だけそう思ったのだが…
やっぱ、俺以外は、当然スルーでしょ?みたいな空気だった。うーん、この温度差…
どうも、いちいち危険に首を突っ込むなんて、
そんなヤツは、ただのど阿呆…ってのが、
どうやらこっちの、基本プログラムらしい。
俺とは、基本的に空気感が全然全然違うよな…
だったら?
…みんなが水を汲んだり、食材の調達してる間に、
この俺が、サクッと片付けてやんべ?っと…
ミューを【深淵】に引き連れ、付近を散策…いや、探索した。
すると、割と簡単に、
少し離れた、大きな岩山の陰に、それらしいのを発見した。
真っ黒な鳥?…いや、ちょっと違うな…何だろ?…ん?
脚を怪我してるみたいだな…
しかもアレ…多分…
俺は【深淵】の中に居るままで、すぐ真横まで接近した。
面白い事に、一切気付かれないのよ、これが?
まあ、世界の裏側だしね、当然ちゃ、当然なんだけど、
体感的には、凄っく不思議なんだよ。
で、
そのまま【深淵】入り口付近から、ミューの金縛りを発動させる。
うん、流石ミュー先生、相変わらずお見事なお手前で。
俺達は【深淵】を出て、魔獣の前に顔を出す。
見たこともない不思議な生物だった。
頭が鳥で…鷹とか鷲みたいなのに、身体が、大型の猫科?虎とかヒョウみたいなの…
でもでも…良く見たら、足先が鳥で…
でっかい爪が有る。
そして…背中に羽根まで生えてやがるぞ!
ははーん、きっと合成獣種だよな、知ってる。
突然金縛りになるわ、空中から突如、俺とミューが出てくるわ…
コイツにしたら、パニくって大暴れしてもしょうがない状況だろうに…
残念、動けないんだな…これが。
更にミューの糸でグルグル巻きにしたった。
さあ、事件は解決だ、そう、思ったが…
え?この後どうするの?
…って、事まで俺は頭が回ってなかった。
可哀想で殺せないよ、こんな子供。
ああ…俺ってやっぱ、悲しいけど、
まあまあの阿呆だよな…
この、事件解決の、最大の物的証拠を皆に見せるには、
コイツを【深淵】に入れなきゃいけないが、如何せん、きっと消えちゃうな。
だがしかし…
試しに担いで見たら、かなり重いが、一応なんとか持てた。ちな、多分シェパードとか、秋田犬辺りの成犬くらいかな、多分?
しかし、だからといってコイツを抱えて皆の元まで戻るのは…
道中全て道なき道で、しかも距離がまあまあ遠い。
無理だな。
一瞬、俺だけヨミの居る場所まで帰って、お知恵を借りようかとも思ったが…
ダメだ、こんな時こそ柔軟な発想が求められるんだ。
きっと野球が原因だな…とにかく、コーチや監督、
そしてパイセンに怒られないよう振る舞おうとしてしまう、
これは俺の悪い癖だ。
無理に正解を引出すなんて…
そもそも、俺の脳みそにはそんな引き出しは無え…無いんだよ。
だが逆なんだ!
計算の答えは出ずとも、
これが「ボケ」なら、いくらでも出るじゃないか!?
しかも、【深淵】を使えば、無茶苦茶な事でも、以外と出来ちゃうかも知れんし。
そうだよ、どんどんボケりゃ良いんだよ!
ああ、良いぜ…そろそろ見せてやんよ?
この俺の本気と書いてマジ…渾身の「ボケ」ってやつをよ?知らんけど…
ミューがぴょこぴょこリアクションしてる。
まずは…こいつの空中輸送作戦だな。
名付けて、C−10輸送機作戦だ。
俺とミューは【深淵】に入って、こいつをミューの糸で【深淵】の外に吊り下げて、
糸は可能なら【深淵】の入り口付近の…
壁か、置いている荷物…最悪重しになる岩を押し込んで、それに固定する。
やって見た。
で、壁に固定は無理だったが、重しが有れば、実際に可能だった。
但し、一気に長距離の移動は無理だな。
仮に…10キロ離れた距離を1秒以下で移動したら、
一体時速いくらでしょうか?
アホか、そりゃ計算の必要さえ無いわ、もう絶対、その風圧やらでバラバラなって死ぬわ。
そして…色々やってて気が付いたのだが…
岩山や岩盤みたいなとこに、【深淵】のヒビ割れを上手く使うと…
ドリルの刃の様にしてくり抜いたり、薄い刀の刃みたいにすれば、どれだけ固くとも、まるで熱したナイフでバターでも切ってる様に、簡単に切断も出来てしまう。
仮に…皆の居る場所まで最短で徒歩で移動するしかない状況だったとしたら…
実はこの力で、木も岩も、川だって何だって一切無視して…
問答無用に全てぶち抜いて、一直線に、綺麗なまっ平らの道を通すことも、実は可能なのだ。
凄えな?どうなるともうアレだよ、あれ、
そう、モーゼだよ!
凄えな俺、マジ海だって簡単に割れるんじゃね?いやあ、すっかり偉くなったよな、俺も…
まあ、しかしだ…
多分、悪評ばっか流れる、ただの完全な環境破壊でしか無い気がするな。
ちな、エネルギーなど一切使用しない、究極のカーボンニュートラルであっても、
まあ、あんまり好き勝手やったら、良くないよな。
そもそもモラルもクソも一切無いよな。
まあ…取り敢えず、
さしあたって…この魔獣の空中輸送を開始し、村の外まで来た。
コイツを村に入れたら、きっと大騒ぎになってしまうからな。
俺は、近くの大きな木に、改めて魔獣をミューに固定してもらって、村に入った。
どうやら、まだ取引交渉の途中だった。
なので、そっとヨミだけ連れ出す。
でさあ…
これ…なんだけどね?
おお、これは珍しいね、グリフォンだ、しかも…まだ子供じゃ無いか。
知ってる?グリフォンって、子供の姿を見る事が殆ど無い生き物でね。
子供が小さいうちは、絶対に表に出さないで、ある程度大きくなる迄、どっかで隠れて育てるんだよ。
ところで…
君、一体これをどうする気なのさ?
まさか…流石に食う気じゃ無いよね?
え?…く、食えるのかこれ?
いやいや、食ったなんて話、聞いたことさえ無いよ。
いや…取り敢えず、えーっと…どうしよ?
え?
まさか…考えもなくいきなり連れ帰ったのかい?
えーっと…
一応考えて行動したつもりでは、あったんだが、
まあ、確かにな…
その先のことなど、やっぱ一切何も考えて無かったわ…
どうやら、まだまだ俺の思考は、相当に浅かった様だ…
いや…違う。
ここも、逆転の発想だ。えーっと…えーっと…
そうだ、コイツを…いっそ飼おうと思ってさ…
「は?」
いや…だから…コイツをね…
飼うって?正気かい?これはね、子供とは言え魔獣どころか、神獣だよ?
えーっと…あのー、所で神獣って?
「…は?」
いや…呆れたね…、良いかい、神獣って、我等神族の、しかも純血種が、魔力で作り出したキメラだ。
魔族が無理矢理作り出した、合成ツギハギのキメラなんかとは、そもそも格が違う…
…あ、そう言えば、
君の頭の上のそれも、ある意味神獣よりも神獣だけど…
とにかくね、人に馴れ合うなんて事は基本、無いんだよ。
だって…コイツは只々、人間に恐怖をばら撒き、殺す為だけに生み出されたんだよ?
ちなみに、こいつは神族であっても、お構い無しに牙を剥く程に凶暴だよ?
俺とミューはグリフォンの前に立つ。
ちびグリフォンの、うるうる目を見つめつつ、
おい、グリ公?
お前…暴れるか?
グリフォンの子供はかなり怯えて居る。糸はそのままで、取り敢えず金縛りを解いた。
余りにも予想外で、かなり驚いたが、
まさか、ブルブル震えながら、こいつ、失禁しやがった…相当怖いんだな…
あらあら、思い出したよ、そういえば、確かコイツも深淵属性だった筈だよ…
しかも…君…いや【深淵の主】対策で生み出されたんだった。
確か、深淵まで追っかけられる様にって…
つまり、今自分の目の前に、最大の敵、悪夢が二体も居たんだよな、
しかも…自分は無力な子供だ、ハハハハ、そりゃ、怖いよな、面白いけど。
え?ヨミ今…深淵属性って言った?やっぱ、コイツから出てる黒いモヤ、そうだったのか。
って…事は、コイツも手前までなら、ミューみたいに、入れるんじゃね?
一瞬だけ…頭だけ入れてみようか…
で…一か八か、ちびグリフォンを【深淵】に、頭だけ入れたった。
当面の目標だった、100話。とうとうここ迄辿り着きました
お読みくださった方に、心より深く感謝を。




