柔軟性 3
ヨミに指摘された、俺には柔軟な思考が無い案件なんですけど…
確かに。マジでそれ。悲しい位に間違い無い…。
つまり…俺は単純で、馬鹿なのだ。改めて突きつけられた現実だ。ちょっと凹んだが…まあ良い。
そうだ…、そうだと判ったら、逆張りだ。出来ないとか思う前に、考え方を、目線を変えてみる。
多分この瞬間、俺はゴムゴムから、ニカへと、劇的に進化したのだ…知らんけど…。
まずは、外で色々出来るんならば、その逆…中はどうなんだ?
俺は【深淵】に入った。普通に…もう一度外に出れば、入った場所が当たり前だと…今までは思っていたし、それ以上何も考えて無かった…が?
だがしかし…
俺は、大きく意識を変えてみる。で、外に出たらばなんと!
初めてアマジャさんに有った…いや、俺が召喚されて来た、あの場所に出た。う…ぐ?
…放置された死体が腐乱して、そこら中凄え酷い匂いだ…
俺は鼻を摘んで慌てて引っ込む。
で、また意識を変えて外に出る。
なんと!!
今度は一番最近宿泊した、あの宿屋の庭に出た。
「テレポーテーション能力、来たアああああ!」凄え…馬車で数日が一瞬やで?
これって…もう無敵やん?
ん?
…いや?…待てよ、
これも…俺限定、俺だけ特典じゃんか?
まあ…これも無いよりは絶対良いけどさ…
皆を一気に運べないどころか、【深淵】に入れたら一気に全員、即死亡やん?クソ、意外と使えねえ…
だが…まあ良い。俺は元いた場所に帰った。
次に…だ。
空中とか海中ならどうだ?
俺は…遥か上空をイメージし、ヒビ割れから窓に変えた穴から、そっと顔を出した。
遥か眼下に、一部雲が掛かって見えない場所が有ったが、
なんとこの大陸の、凡その形が見えた。多分…普通だと酸素も薄いし、気温も低い筈だ…と思うのだが、
どうやら俺には関係無い様だ。
更に…思い切って…窓からドアに変え、外に出てみた。
…一応、言っとくと、確かに俺は馬鹿ヤローですが、
仮に落下したら、足元?いや俺の下に、即、ヒビ割れを出せば良いじゃん、って感じで。
いい?そこ…俺だってちゃんと考えてるからね!
で、出た。
だが…一向に落ちないな?
そのイメージした位置で、俺の周り?空間が、固定されたっぽい。
その流れで、今度はマーオちゃんの横をイメージしたら、ちゃんとおねんね中のマーオちゃんの横に出た。
…その横でスヤスヤ眠っているエッタさんに、ちょっとだけイラッとしたので、
この日の為に取っておいた、超酸っぱい飴ちゃん、シゲキックすを、その口に放り込んで、
俺はすぐさまそこを離脱した。
今度は上空から見えた、綺麗な海岸線に一旦出てみた。
当たり前だが、海だ。
随分久しぶりの海だ。潮の香りってやつが、心地良い。
次は海中だ。一応…溺れる可能性の低い浅瀬から…おっと、服は脱いでた方が良いかな?
幸い、誰も居ないし…
俺はフリチンで、まず、大きく息を吸って…浅瀬の、丁度、海面から少し下の、
つまり海中に出てみた。海中だったが…
実際、海水に触れている感覚が確かに有るのだが…
息も出来るし、濡れてもいない?いや…実際目の前に魚が泳いでるんだが…?
俺は一旦【深淵】に戻り、いそいそと服を着た。
そして更に沖の、かなり深い場所で、海底まで降りてみて…外に出たら!
やっぱり濡れないし、息も出来るし…何より水圧の影響も、海流の影響も受けてない。
確かに底に立ってるし、海底にいたヒトデっぽい生き物を掴んだが…
やっぱり濡れないし、息も苦しくない。
お?何かが急速接近中だ、
向こうから、結構デカい魚…
不細工だが、サメかな?が、突っ込んで来たが…
ねじまげた【深淵】を突き出して、そこに突っ込ませたら、
頭が入った辺りで、動きが止まった。
お?死んだのか?
そう思って、腹の辺りを叩いていてみたらば、
突如復活して、もの凄い勢いで、逃げていった。ん?気絶してたのかな?
まあ良い、次だ…いやその前に、確か、草花は無事だったよな…
俺は海岸でワカメや昆布…ぽいのを、適量回収してみた。それを【深淵】に収納し、皆の居る場所に戻った。
帰るなりエッタさんがぎゃーぎゃー怒ってきたが、
俺は深淵テレポートで、サッと遠くへ逃げた。
ふ…いずれこいつにも、カッコいい技名を付けねばな。
お爺やんが纏わりついてると、全然こっちに寄って来ないアマジャさんと親戚さんに、今してきた事を報告した。
ああ、いつものこの感じ…これが落ち着くんだが…
そして、あれを親戚さんに渡す。ワカメと昆布だ。
え?これ海藻…ですよね?一体…?
ふ…親戚さん、これ、スープの出汁に最高何ですよ?メッチャ美味いんですよ、しかも…これも食えるしね。
「勿論信じますよ、貴方様が美味い、と、そう言うのですからね…」ええ、やってやりますよ…絶対美味いもんを…
親戚さんが静かに闘志を燃やしていた。
そうこうしてたら、ヨミとお爺やんに拉致られた。
諦めて、同じく、今有った事を話して、
昆布を一枚づつ、ヨミとお爺やんの顔面にペチャってくれたやって…
当然逃げたった。
これ…メッチャ便利だ…うっひょうー、これで食い逃げし放題じゃね?
いや…流石にせんけども。
マーオちゃんには、海で見つけた素敵な白い貝殻をあげた。
巻き貝?耳を当てたら、海の音が聞こえるんだよって…
ヤダ…俺って…なんてロマンチックなのかしら…
エッタさんにもあげようとしたら、
不意に強く、抉るような肩パンを食らった…
ちっ…痛ぇなおい…
もう、バカ、エッタになんか…アゲないんだからね…
バカ、もう知らない…(逃走前の捨て台詞)




