柔軟性 1
そして、
ようやくやっと…
本当の本当に?…
俺達は本来の目的地で有るカーナンに向けて、本格的に移動を開始する。
場合によっては、途中でサデヤルというとこに行って、ヨミが魔力を回収するらしいが…
いやあ…余計なヤツも含め、
七人と一柱?それにキメラが一匹か…
なんかさあ、気付くとメンツ増えたよね、すっかり賑やかだよ。
もう、大所帯だよね。
今回増えたメンツに加え、順調に行けば、
今後更に二名追加って事もあって、
一旦、大きな街に寄って、尚且つ戦争被害の少なそうな、エモラとか言う街で、
より大きな馬車か、馬を、
そして水や食料を入手する…そんな予定らしい。
何故か…狭い荷馬車内部では、俺を囲むように、
ヨミと爺やんが当然の様に陣取っているが…
辛い…
一体何故?
神は俺にばかりに、こんな非道な試練を与えるのか?
…あ!
神、目の前におるやないかいっ?!
取り敢えず…
ムカついてたんで、ヨミに肩パン入れたった。
ヨミは大層慌ててたが、すぐに怒って…
そうやって何か有る度に、
何でもかんでもすぐ、神のせいだとか言うのはさ…
本当に、人間の悪いところなんだよね…
と、強く注意された。
それに更にイラッとして…
反対の肩にも、一発入れといたった。
それを見ていたお爺やんが…
なんと!!
…これは神々の争いだ、とか、
頂上戦争の始まりだ…とか、
かなりビビって、なんか変な事言ってやがる…
まあ、人生、たまには、肩パンとか、そういう事も有るよね?
…あれ?神生か?…知らんけど…。
何か…威厳?とか全く無いし、後光が射してるって感じじゃあ無いんだよな…ヨミって。
むしろ?居酒屋で相席した、
どっかの気の良いあんちゃんって、気がする…
偉い神なのにな…知らんけど…
一方的な質問攻めに俺は、もう死ぬ程飽き飽きしたんで、
逆に、今度はヨミの事を、根掘り葉掘り聞きまくったった。
仮に…
万が一、その話が全て事実ならば、
コイツ…結構な苦労人いや…苦労神?だなって、そう思った。
かなり横暴で、しかも強烈に我儘な上司と、
その能力が、暴れる事だけに特化した、リアル脳筋の非常に残念な部下に挟まれた、
正直、コイツ…上にも下にも振り回されてるだけの、
ただの、悲惨な中間管理職の、
あれだよ、課長とか係長みたいじゃね?
立派な神の一柱らしいが、
聞けば聞く程、ぶっちゃけ…ただの哀れなヤツやん?…
俺には、どうもそんな印象だった。
そして、そいつら上司と部下のケツ拭きやら、
事後の調整(謝罪?)の為に、
一身に大悪党の汚名を被ってる…様だった。
いわゆる?殆ど濡れ衣?…いや、まあ完全にそれだけでも無い様だが…しかし、
まさか…下等な人間如きや、
ましてや敵対勢力の俺如きに?
結構同情されてるとかマジ、神って何よ?
世も末やな…知らんけど…
そんな、同情の空気を好機と捕らえたヨミが、
さらっと、爆弾発言をした。
何でも、独自に考えを確立させた、己自身の独自の意思を持った、
全く別のヨミ、いやヨミの一部の能力も持った、限りなく他人な自分?
…何それ、面倒くさっ!
そんな、自分の分体が後、他に三人居て、
どうも本家ヨミの意向は一切無視して、
分体がそれぞれ独自に、勝手に好き放題やってるらしい。
そして、地上のあちこちに轟く悪名の原因は、殆どコイツら…ヨミ二号、三号、四号の仕業なのだとか。
つまり?大ボスヒルメ以外にも、
裏に、中ボスが三体居ると?
でも結局さ、そいつらはヨミ本人のコピーなんだよな?
だったらそりゃ、自業自得じゃね?
あっ…
そう言ったら、ヨミが拗ねた。いや、ちょっと拗ねんなよ?
だからさあ…神って、一体何よ?
何でも、ヒルメってやつから本気で逃げる為に、
それぞれが本物より本物っぽくなってるって、そんな感じの事らしい。
それもこれも含め、一体、どこまでコイツを信用するか?出来るのか?
それが、俺達の課題だな。
そして、問題のコイツらコピーロボットを拿捕、回収しないと、
また何処かで、何かとんでもない事をやらかすかも?…って、事らしい。
が?
いやいや、それ…全部テメエの責任じゃねえか?
何で、俺等を勝手にテメエの事情に巻き込むんだよ?
おい、フザケンなよ、ぶっ飛ばすぞ?
俺は、ちょっとだけ、おこ、だったのだが、
それを不利と、危険だと感じ取ったヨミが、
慌てて急に、大きく話を変えてきた。
…で?
まんまと釣られ…たった。
何でも、【深淵】の使い方?やら、意味の、ヨミなりの考察が有るらしい。
まあ…それを?
君が、どーうしても言いたいってんならさ…
まあ…別に聞いてやっても、良いけど?
一応な、あくまでも一応、な?
良いか、一応だぞ?。ホントだぞ?
ああ…そうか、それは恐縮だね、ありがとうね。ふう…
我が思うに、多分ね…、
【深淵の主】、君さ、意外と思考が硬い、浅くて真っ直ぐ過ぎる…よね?
まあ…まるっきり融通が効かないって訳では、決して無いけどさ。
「…あ?」
いやさ、まず考えるべきは、 君が何か? 君の本質って?…って、事が重要なんだよね。
「お?おう…ホンシツ?」
君はそもそもの?
本来居た筈の【深淵の主】では無いしさ、
そもそも君って、元は違う世界の人間なのだろ?
聞けば、ヒルメの【呪】で…
ヒルメが手に入れたかった筈の、力を持った異世界の死人、その回収の巻き添え食った?って…
言うのが、確か君の予想だったよね。
我はね、ただそれだけでは無いとそう思うのだよ、
いや、強い根拠はまだ無いんだけどね、
取り敢えず君自体にも、【深淵】の強い適性が有ったのは、絶対間違い無いよ。
君は、世にも希少な、本物の深淵属性持ちだ。
だって、【深淵】の中に居ても、その魂が消滅してないのだからね。
前の【深淵の主】以外は、例え何であれ、勿論我だって…
あそこでは、その存在を決して維持出来ないのだよ、
まあ…それ、別の神に聞いた話なんだけど。
それとさ…
君って、その存在自体が、かなり曖昧なんだよね?
多分、自覚無いでしょ?
我…いや、神の目だから見えるんだとも思うんだけど…
君ってね、そもそも生きても無いし、
勿論、死んでもないんだよ。
そう…そんな事は、通常あり得無いんだよ?
普通の生者なら、我は見えるんだよ、その魂がね。
不思議な事に、君の魂だけは見えないんだよ…
この世界の全ての存在、生者には、
必ず魂が有ってね、我はそれが見えるんだけどさ、
君の魂は、一切見えないんだ…。
つまり、それって普通は、死んでるって事なんだよ?
君はこの世界の 理 の、範囲外って感じなのかな?
「え?、俺って、死んでるの?動く死体…つまりゾンビって事なのか…?」
え?…待って、そ、それって、かなりのガクブル案件なんですけど?
相当…メチャ嫌なんですけど?
なんか…前はアマジャさんとミゲヤさんに、
俺から、死の気配がぷんぷん匂う…とか、言われたしさ、
今度は殺されて生き返ったら、お前、ゾンビだろ?てか?
えーー?マジかよ?なにそれ??
おいおい、勘弁してくれよ、よりにもよって…ゾンビって…
ゲームだったら…ただのやられ役やん?モブやん?
それって結構、俺の心を、深く抉ってくるんだが?
いや、だからそのゾンビって、我は何かは判らないけど、
つまり?
君は、この世界に有ってはいけないのに、なぜか存在してしまっている、
特殊で稀有な存在なんだよ。
殺されて、死ななかったのは、
多分、そもそも死んでたからで、
その後も、
生き返った訳じゃ無くて、そもそも、君は死んでもなかったんだよ。
「ちょっと…何言ってるかさっぱり判りません…」
生きても無いし、死んでも無い状態…
恐らく、魂もしくは、君の本体は、今もずっと【深淵】の中に有って、
今見えてる君はきっと、【深淵】に中に居る君の本体、いや魂が作り出した、
実態の有る…
いや、実態の無い実体?
その表現自体が、非常に困難なのだけど、
実体を持った虚無…きっとそれが一番近しいのだと思うよ?
「意味不明。全然…理解不能なんですけど?」
とにかく、君は不死では無いが死なないし、
生きてさえい無いけど、実際に生きて存在してる…訳なんだよ?
うーん、我もどう伝えて良いのか…これは殆ど謎の真理だよ…
「あぼーん…」
…いや、ねえ?呆けて無いで、ちゃんと我の話聞いてる?
で、だから?
結論、俺は一体何なんだよ?
え?…
それは我にも判りませんが?
こっちに来て初めて、
盛大にズッコケたった…




