アマジャと言う男1
少し本編から離れます。
私は、生まれて直ぐさま、とある機関に預けられた。
生まれる前から、それは決まっていた。
特別な教育、特別な薬や食事が与えられ、身体中に特別な呪文や特別な魔石が埋め込まれた。
身体中が酷く痛んで、眠れない夜が当たり前だった。
10歳になると、別の場所に移された。そこでは身体能力を向上させろと言われ、朝から晩まで、身体を使わされた。
武術の稽古も始まった。
殴られてアザが出来ると、身体中の呪文が効かなくなると言われ、防御の技を徹底的に叩き込まれた。
アザ対策だと、身体中に厚い布を何重にも巻かれ、そして殴られた。その特別な…っという、
よく判らない私の身分が気に入らないそうだ。
防御の練習だと言うが、巻かれた布のせいで身体はまともに動けなかった。
体のいい憂さ晴らしの人形だった。
代わってくれるなら、喜んで代わりたかった。
痛む身体も、眠れぬ夜も、別に欲しくはなかった。
15歳になったその秋、
教官に、特別な偉い人に会いに行くぞと言われ、
初めて建物の外に出た。
「それは誰ですか」とさえ、私は聞かなかった。
どうせ、壁の中に戻れば二度と会うことはない。興味が無い、
そう思った。
馬車に乗せられた。
人生で初めてだった。
心臓が高鳴って、ずっと馬車の窓に張り付いていた。
壁の中は色が無かったが、街と呼ばれるそこは、どこもかしこも色が溢れて、とても眩しかった。
小難しい顔をした教官も、いつも私を誂う職員もいなかった。
街を歩く皆は、皆全て笑顔だった。
それが衝撃だった。私には無い何かがそこには有った。
多分、それが自由と言う物なんだろう。
大きな門の前で馬車が止まった。御者が門番と会話している。
そして、門が開いた。
大きな軋み音がして、門の後ろの掘りに、橋が掛かった。
馬車が橋を渡ると、橋は壁に引っ込んだ。
随分、仰々しい場所だな、怖そうな武器を持った兵隊が沢山いる。
馬に乗った女性の騎士が近づいてきて目が合った。
特に彼女は笑いもせず、私を一瞥して、御者を先導した。
馬車ごと大きな建物に入った。
ここで降りろと言われ馬車を降りた。
私の居た施設にも有った神殿のようだった。
御者が少し待っていてくれと言って、女騎士と何処かへ行った。
施設の神殿だと、私が座る場所はいつも決まっていた。
一番前の一番右端。
誰に言われる迄も無く、何となくそこ…
いつもの場所に座った。
神殿は神に声と祈りを届ける場所で、同時に降りてきた神様が休憩される場所なんだと教わった。
一段高い場所に、決して座ってはいけない豪華な椅子がある。
それが神の席であり、そこに向かって祈る。
私の信仰する、いやさせられている神は深い闇の中の神。
神に名前はあるが、人間は気安く呼んではいけない。
それは不敬だから。
ぼんやりと椅子を見ながら考えた。
神とは、何だ?
私の…私とっての、何なんだ?
こんな暮らしも、身体中に描かれた呪文も、埋め込まれた魔石も、
全ては、その神の何なんだろうと。
そうしていると、大勢の人がやってきた。
「お待たせしたね…」
一際豪華な服を着た、施設にも来た事があった、大神官様だった。
御者が走ってきて私を叩いて、頭が高いと怒った。
挨拶をしろよっと、もう一度怒られた。
「構わないよ、大勢の人にそれも外で会うなんて、そりゃ緊張するよねえ…」そう言って御者を制した。
私は立ち上がり、静かに一礼した。
「うん、うん」大神官様は笑顔だった。
それでは早速始めようか、皆、準備をなさい。
大神官様が静かに告げた。
私は何をして良いのか解らず結局又、いつもの
席に座った。




