季布一諾2
「だが、断る…」
そう言えれば、多分、楽なんだが…
いや、嘘、ただそれが言いたいだけ、なんだが…
多分…ここにうちのじいちゃんが居れば、きっとこう言うだろう…
困った、困ったこまどり姉妹…
そのフレーズが、頭からリフレインして消えない。そして
…クソ、それどこの姉妹やねんっ?!
いやいや…現実逃避はいかんな…
ヨミを含め、
全員が一斉に俺を見つめる…
特に?
なぜか、2歩、前に出てたままの、
妙に?謎に?
近い距離のエッタさんの、その勝ち誇った様な視線が、
俺の心を抉るようだった…
俺は、深淵を上から帽子のように被り、ミューを呼び込む。
ところでお前…
いやにアッサリとイエスだったけどさ…
もしかして、
…フッ、我に秘策ありって、…そういうやつなのか?
おお、ピョコったな。
そうなのか?おいおいそうかよ、やっぱ凄えな…
おお!だよな、やっぱりな。実はそうだろうと思ってたよ、
で?…
具体的にどうすんだ?
ん?…呪い?
…強い魔法?って、そんな便利なのが有るのか?
いや…ミューさん、お前さ、普通にちょっと、凄くないですか?
ハイ出た、ドヤ顔ポーズ。イイね。
判った。じゃあ…取り敢えずは大丈夫だな。
よし、じゃあ…ここ出るか。
再び深淵を、帽子のように上に上げて、顔を出したら…うわっ…
みんな…凄え、こっち見てた。
いや、マジでビビるわ、心臓にも悪い気がするし、
これは一向に慣れないな…
後、一人だけ…
なぜか異様に近いし、ドヤ顔だし…
待たせたな。
ヨミ…俺は割と心配症でな…取り敢えず、あんたを信用する為に、
枷…を、嵌めて貰うが、良いよな?
それではミュー先生、お願いします。
ミューがぴょんぴょんと跳ね、ヨミの前に行って、
突如、大きくて太い糸を、
ヨミの胸にブスッっと突き刺した。
事前に聞いてはいたが、結構ショッキングな映像で、
…かなりビビった。
それ自体は、全く痛みを伴うモノでは無いそうだが…
本人のヨミを含めて、
見ていた全員が…一瞬、ヨミを殺したんじゃないのかと、かなりびっくりしてた。
何ですか、これは?…
痛く…は、無いですが、いや、かなり驚きましたよ?一体何ですか?
ヨミが俺に問う。
フッ、それはな、
言ってみれば蛇口みたいなもんでさ…あ、蛇口って判る?
うあ、判らんかぁ…そっか…
まあこっちの都合で、いつでも開けしめ出来る水門とか、入り口…いや出口みたいなもん…もんと門、掛かってる?…です。
あんたが裏切ったら、即、それを解放する。
そうすっと、そっからあんたの魔力がダダ漏れの、垂れ流しになって、止められないんだって、そんな寸法ですな。
ジワジワ死ねって…そんな感じ?
しかもそれ、呪い、らしいからな、
ミューが死なない限り、絶対解けないし、
俺が生きてりゃ、ミューも不滅。
常に絶賛発動中って訳だ。
いやあ、凄いでしょ?うちのミューさん。
「幾ら何でも、流石にちょっと…まるで奴隷の扱いじゃないか…
それは流石に酷くないのかい?
我…結構偉い、神なんだけど?」
いや…まあ、良いか?今更か…うん判った、良いよ、
これも素直に受け入れよう。
…だから、そろそろこの拘束魔法を解除してくれんかね?
お?判った。
でも、絶対、急に暴れんなよ?よし、ミュー、頼む。
おお、ようやく動けた。やはり深淵属性のすべてが、我の魔術式を一切受け付けんし、弾き返すとはね。
しかも、この我に垂れ下がった糸…上の神の魔法を、軽く凌駕しているとはね…全く恐れ入るね…
おっと、では改めて皆に、そして君等の神にご挨拶だな。
我が名は、ヨミだ。以後、宜しく頼む。
後…、一緒に行動するにしても、
流石に人前で、いちいち、神の名で有る ヨミ を使うのは、何かと色々…問題が有るだろうからな、
以後我を、ザイン…っと、呼んでくれ給え。
え?
…ん?
いやいやいやいや、おいおい、ちょっと待て!ちょーっと待った…
ヨ…いやザインか?今後一緒に、ってなによ?
「なに?って、嫌だな水臭い、我…いや私も君達に付いて行くと、そう言ってるんだよ?」
はあ?
…いやいや、ちょっと何言ってるか判らないんですけど?…
「嫌だなあ、まずは封印解いたりしなきゃいけないでしょ?それに、私が近くにいた方が、実は君達も安心なんじゃ無いのかね?」
だって…影で色々悪さしそうとか、絶対思ってるでしょ?
「お?…おう」
それに…ほら、これがついてるんだよ?
ヨミは下から上に、ミューの糸を、ネクタイみたいにペランペランさせながら、笑った。
何より…、君の横がこの世界で一番安全なんだって判ったからね。ぶっちゃけ、ヒルメも、あのサノーでさえも、
君にはきっと、簡単には、手出し出来んからね。
おっと?あとさ、そう言えばさ、
ヨ…いやザインが、この後ろの獣人を操る、キモい魔蟲を仕掛けたのか?
ん?魔蟲とな…?
我は人や獣人を操るのに、魔蟲なんか使わんでも、直接支配してしまうよ。
その方が簡単で、ずっと確実だしね。
大針金虫だったら、きっとヒルメだね。
あれは何でも生み出せる凄い能力が有るんだけど、
生み出した後に、流石に、それを自由には出来ないのでね…
その一つの方法として、
ずっと大昔に、我が魔蟲を教えた事が…確か有ったと思うし…多分…
えーー?
ホントかよ?
まあ、今は一応…信じとくけど?
ん?…って事は、そのヒルメは、俺を狙ってんの?
そりゃ、そうさ。
だって、遥か昔から、君は我等の唯一の天敵だったんだよ?
暫く居なかったから、安心してたのに、
ひょんな事で…まさか自身の失敗で復活させちゃった訳だからね…
ヒルメにしてみたら、そりゃ、怖いし危険だしで、
君を放っておけやしないさ。
しかも、ヒルメ自らは勿論、神族も絶対、君の前には来ないよ?
だって…そもそも絶対に勝てないんだしさ…
下手すりゃ、消されちゃうんだ、怖くて近づけないよ。
あとね、君、
見ただけで凄く凄く怖いからさ…
実は我も、結構、本気の、命懸けの覚悟で、
死ぬ気でここ迄来たんだからね…
「お…おう…」
ところで…
それはそうと…
もうそろそろでは、無いのかね?
…何が?
え、待ってくれ、
あれだよ、見つめてれば、君が無言のまま始まるやつだよ。
え?判らない?
いやだな、食事だよ、食事!
もうね、ずっと気になって気になって、本当に、仕方が無かったんだから…
頼むよ?
…
…へ?
な、なんでなんや?
確か…
コイツ…世界最悪の大悪党…だよな、
…そいつが?
まさか?
…急に馴れ馴れしく、
まるで仲間気取り?になって…
しかも…
俺に?
初対面の、俺に?
晩飯の催促、してるんだが…?
ナニこれ?一体どーゆー事?
…世紀末か?
知らんけど…




