季布一諾1
まあ、この世界に来て以来、突然事件が起こり、振り回されるなんて、
こっちはもう慣れっこなのさ…って、
言いたいのに、言えない位の、凄え大事件が起きちゃったよ…
なんと!俺の目の前に、こんな急に?
あの…例の?噂の?
噂の大悪党…ヨミが襲来した…しやがった。
…しかも、さっき話してた、ミューの魔法の範囲にギリ入って無い、微妙な位置に立っていた。
話、聴いてやがったたのか?
ちっ、何故か?…ウンウン頷きながらこっちをみるエッタさんは…
一旦、いや完全にスルーして、
さしあたって…答えを求めて来たヨミに対し、心の準備も含め、全て不十分な俺は、
識者であるマーヤル先生の意見を仰いだ。
そもそも、あのヨミですからな…
迂闊に信用など…如何なものかと…
ただ…言ってる事は矛盾も無く、筋も通っているかと…。
いやいや…これは…流石に、困りましたな。
では…続いて、
心の師匠、アマジャ先生、如何でしょう?
いや、確かに話を聞く限り…は、問題無いように…思いますが、
どうでしょうね…これは…難しい判断が求められるかと…
なる程…では、心の…先輩?
親戚さん、お願いします。
はあ、でも私は…信じませんよ、だって…ヨミですから。
もう、今、動けないんだから、テメエふざけんなって、滅ぼしちゃえば良いじゃないんですかね?
ああ…なる程そっち系ですか…
では次に、
心の…知り合い?
シレンさん、頼みます。
はい!神様かしこまりました。
私は、条件を絞ってむしろ取引は有りだと、そう愚考致します。
さしあたって…お力の元で有る、黒い石の返還、更にマーオ姫の封印の解除と、その力の全てを返還させ、
そして、あの、可哀想な農民に対し、多額の補償を与えて…そうですね、後は…
「おいおい、君?神に対し、遠慮が一切無いよね?…確か取引と言ったんだが…まあ、実に人間らしくて、むしろ、清々しいですよ?…」苦笑いしつつヨミが言った。
…ん何よ?
いや…こっち見ないでくれませんかエッタさん…
では…ミュー、お前どうだ?
取引する、しない?…ぴょこぴょこ?
え?する派なの?へえ、そっか…お前が言うなら…
え?…いやだから、こっち見ないでって…
え?いや、だって、
…あの…エッタさん?
まさか…エッタさんは一歩前に出て、キメ顔で言った。
「決まりですね…」
いや…何が??
俺のツッコミで更に一歩前に出るエッタさん…
「これで、決まりですね!」
聞こえてるし…いや、だから何がっ!?
しかも、なんでドヤ顔なんだよ?
フッ…やれやれだぜ?
…まるでそんなセリフを言いそうな顔の、マーヤル師匠が言う…
「まあ…では、ヨミ殿…まずは貴殿を信じるに値する対価、担保を我等に頂きたいですな。そもそも信用も無い相手との取引云々は、…検討するにも当然、その後の話ですよ…」
「なんと老師よ、この我に…神に担保をよこせとな…」
そもそも、我は既に、人間如きが決して知って良い筈の無い、神族の内輪の事情、 神の理 まで話してたのだぞ?
一体、それがどれ程の高い価値が有ると思ってい…いや、ああ、そうか…
そうだな、確かに、君達は、別に我の信徒では無いな、
我の目の前に居る、深淵のもう一柱の、その信徒であるな…これは失礼した。
そうだな…ふさわしい担保か…
「なら…まずは遺跡に有った黒い、神の石を我等に、いや我等の神に全て返せよ!」
親戚さんがそう言って、ヨミを睨んだ。
ああ…そう出来れば良いんだが、残念ながら、あの石はもう無いよ。嘘じゃ無い。
ご覧の通り、今の我は脆弱だ。急ぎこの身を守る為に、何とかあの、膨大な魔力を我が身に得ようとしたのだが…
如何せん我の…その力を受ける器の形が違い過ぎてね、
元の【深淵】の力を、我の 宵闇 に合う形に…
まあ、大きく削った…と言うのが、多分君達に判る一番近い表現だな…。
我が使える状態に、無理矢理成形した黒い石の力は、
恐らく元の十分の一以下位で…しかも、それでも、その全てを吸収出来なかった。
余りにも、何もかもが違い過ぎたのだろうな…
そして、残ったその力を、万が一にも、ヒルメに奪われてはならなかった…故にね、
それで…急ぎ残った力と、
言ってみれば、魔力の削りカスを、
そこの…、当時一番近い場所に居て、尚且つその血筋に、深淵属性を持っていた幼女に、封印し隠したのだ。
この幼女には、とても弱いが、元々呪言や言霊の素質が有ってね、
深淵の力がそれに使われたら、最悪、大きな被害が出たり、
そうなれば、ヒルメに位置を特定されて、簡単に奪われかねないしね。
ああ、そう…安心してくれ、この幼女は、直接の我の娘では無いよ、
確かに、ほんの僅かには、我の血脈が無い訳では無い様だけど。
おっと、話を戻そうか? なんならその力を、【深淵の主】に、返しても良い。
もう既に、今現在の、その僅かな力で有っても…
恐らくは、全盛期の【深淵の破壊神】には、遥か遠く及ばない力で有っても…
既に我等、神族を屠るには、君には充分過ぎる力が有るのにだ…
その【深淵の主】に、僅かとは言え、あの力を返せば、
もう我等神族でさえも、決して触れられぬ、逆らえぬ、
まさしく、脅威にしかなり得無い、
それこそ絶対の存在になり得るのだ…
しかもだ、その幼女の呪いも解けて、話せる様にもなる。
どうだ、これは中々にして、決して悪い話では無いだろう?
ん?まだどこか不満げだな…本当に、人間の欲は底が知れん…なら…そうだな、我の知り得る、そなたらが知りたい知識を与えてやろう。どうだ、大盤振る舞いでは無いかね?
そうだな…これが我の用意する担保で有り、大きな譲歩で有り、
更に、我からのささやかな贈り物も含むもの、お近づきのしるしだと、そう思ってくれ給え。
どうだね、この取引、まずはこれで行こうじゃ無いか。
さあ、そなたの返答を聞かせてくれ、【深淵の主】よ。




