招かざる客2
あの…ヨミが言った。
まあ…すぐに我を信用しろとはねえ…
幾ら我でも流石に、少し言いにくいよ?
特に君達には…
知らぬ事とは言えさあ…
仮にも、我は…神なのだが?
それをまあ、散々と…これでもかってくらいに、
結構な罵詈雑言を浴びせてさ…
しかも…この、本人の目の前でだよ?
そりゃあ遠慮もなく、好き勝手言ってくれてたしねえ。
でも、まあ…そうか、君達の世界では、
我は…卑怯な大悪党だしな。
これも辛いけど、致し方無いのか…
おい貴様、
…まさか、ノコノコ正面から現れるとは、一体どういうつもりだ?
貴様の事だ、どうせどっかに伏兵でも隠しているんだろ?
おい、幾ら神族だからってな、我らがそう簡単に引くなどとは思わん事だな?
私は特にしつこいぞ…
3人がそれぞれ強く叫ぶ…
ああ、少し待ってくれ給え…
そもそも、我は君等と事を構える意思は無いのだ。
実はその幼き娘の目と耳で、
我は君等を見てきた。
なにせ、我の力の一部が封印になっておるからな。
まあ…大抵、その娘は寝ててさ、
実はそれ程見れた訳でも無かったんだけれど…
え?おま…何?
ずっと、俺等を覗いてたんかよ?
…うえ…テメ、マジでキモいぞ?
なあ…すまんが深淵の主よ、
とにかく落ち着いて、一度、我の話を聞いてはくれんかね?
絶対に君等を騙さんと、
神の、この名に誓うからさ…頼むよ。
そうだ、ほら…そもそも神は、人間に頼み事なんかしないだろ?違うかね?
だから、もう、そこを何とかお願いしますよ、ってやつだ。
「ああ?…判った、じゃあさ…お前…その言葉に、自分の命賭けろよ?」
気付けば俺は、まるで小学生っぽい事を言ってた
自分で言っといてなんだが…ちょっと恥ずい
「…?、そうか…良かった…命でも何でも、取り敢えず君に預けるよ」
そう言って、ヨミは自分の結界を全て解除した。
ミュー、あの金縛り?アイツがしゃべれるようにだけ、ちょっと緩めにとか…出来ないかな?
お?出来るんだ、流石だな…じゃあ早速頼むわ。
おお?!これは、これは、まさかの最上位、第四天位階、 魂縛り かね?流石は眷属、完璧な深淵属性だ…
なんと凄いな、参ったよ…君のキメラには…
そりゃ、かつて多くの神族が次々とまあ…
強者がいとも簡単に、
次から次々と屠られる訳だよ…
我の上の神で有っても、流石にこれは、簡単には解けんのだろうな…
で?この…我のすぐ横に並んだのが、【深淵】なのか。
何かあったら、我はここに入れられると…つまり、二度と再生も無く、完全に消滅って訳だな、
なる程、君の命を賭けるって言葉は、本当に、その通り…
って、事だな、それは恐ろしい、良いぞ。
さあ、これで一旦、我の話を、きちんと聞いて貰うよ、いいかね?
まずは、色々と…自身に掛けられた誤解を解きたいね。
人類の敵の様に言われるがね、そもそも…我は人間が好きなんだよ。争うなんてとんでも無いんだ。
良いかね、なにせ、ズク族は…我の血を引く者達なのだからね。
いや、貴方もアーマの一員なれば、
何故、アーマとズクはこうも大きく揉めておるのかね?
つまりは、どちらも身内って事であろう?
何故ゆえ、これほど迄に揉めているのか、一体どうなっているのだ?
マーヤルさんが問う。
ああ、まあ…そうなんだが、これが複雑でね。
そもそも、我等神は、人間やこの世界の生物には、
…多少の例外は有るが、基本、干渉しない、
そういう 理が、有るからね。
だが…すべてが都合よくこちら…つまり、我等、創造主側に、
全てに都合良く、思い通りには行かないって事だな。
どうしても余計な殺生や、無用の軋轢が生まれる。
特に人間は酷いんだよ、
何かと問題が多くてね。
しかも放っておくとすぐ、勝手に殺し合いを始めたりとかね…
君らも、何かしら心当たりが有るだろう?
それを…何とか上手く誘導して、出来るだけ円滑に地上を回そうと、
その為に、都合よくこちらの使えるコマを、その盤上に置いてみたんだよ。
まあ、最初は勿論、実験の意味合いのが強かったんだがね。
それ故、私以外の、他の神には、全て内緒だったんだ、まあ軽い気持ちだったしさ。
だが数千年も経ったある時、それを知らない上の神…そうヒルメが、
私の血を分けたズクの大半を…
ただの気まぐれで、私の知らぬ所で、勝手に大勢を殺したのさ。
我が数千年掛けて、
苦労に苦労を重ねた…言ってみれば我が子同然のズク族をね…
たかが気まぐれ?
…癇癪で滅っせられたんだよ。
我はもう、生まれて初めて、我を忘れる程怒ってしまってね…
まあ、今のアーマとズクの戦争は、
我が手引きした、ヒルメへの復讐や、ちょっとした嫌がらせだな…
あれだ…
深い関係性で、有れば有るほど、それが一度拗れるともう、簡単では無くなってしまうのだ。
それで…まあ、結果最悪の兄弟喧嘩が始まってしまい、今に至るんだがんね…
我等三柱は…神族に於いては…
少し、特殊でね。
通常、一つの大陸に一柱、神は降臨し…
そこを整えて、生物が住める場所に作り変えるんだが、その役目をある程度果たしたら、その大地に溶け込み、生命の礎になるんだ…
我等三柱は、ある程度役目を果たした後も、何故か消えなかった。
我等を創りし曾祖神が、敢えてそうしたのか?
実は、それさえも解らんのだがね。
兎に角消えもせずに、
しかも三柱がそのまま残ってしまったのだ。
全ては、これが悪い方へ向いてしまった様でね…。
我は、君等が言う大悪党だが、全てはヒルメとサノーの為に行動していた結界で有り、
それについては言い訳等もする気は無い。
だが、自分の意思で生み出し、育てた一族は、何とか守りたい、守ってやりたいのだよ。
それとコレとは違う…ってヤツだな。
だから、あらゆる手を使って、君の深淵の力をこの手に掴まんとしたが、もう諦めた…いや、無理なんだ、
そもそも、それは絶対に無理…だったのさ。
宵闇と深淵では、器も規模も、何もかもが違い過ぎた。
我なりに何とかしようとはしたんだが…
だが…上の神ヒルメなら、恐らくそれが可能なのだ…
あれには 理 をねじ曲げてしまう能力が有ってね、
しかも、今…完全に狂いつつあるその、少し手前なのだよ…
「狂う?…それは何でさ?
何故そこ迄、放っておいたんだよあんた?
…だって兄弟なんだろ?」
ああ…。君らも【呪】を知ってるだろう…。
あれは、自分以外の命の贄を以て発動される、とても強力な魔術…いや呪いそのものだ…
本来、術者はその呪いから除外される術式では有るのだが…
実は過去に、無理な術式で、数十回も失敗していてね、
本来有り得ない話だが…
どうやらその反動が、術者に少しづつ帰って来たようなんだ。
でもまあ、我等は不死で、しかも強い呪いの耐性も有る…
故に、気にも留めず放置していたんだがね…
すると、どうやらその呪いが、少しづつ精神を蝕んでいるようでね…
最早、本人すら気付かぬうちに、
既にかつてのヒルメでは無くなってるのだよ。
あと、我の下の神、サノーは、上の命令には絶対逆らえないんだ。
その上でヒルメは命じたんだ、
ヒルメに逆らった、我、ヨミを殲滅せよと…
元々、下の神は、その武の力で、悪しき存在や、増え過ぎた種族を滅ぼす、圧倒的な力だけを与えられた特殊な神でね、
残念ながら、油断した我は、何食わぬ顔で近づいて来たその下の神に、まんまと消された…いや、消されかけたんだな。
実はこうなる事は、事前に分かっていたのでね、
あっちこっちにバレないように、自分の分体を忍ばせていたんだ。
勿論、本命の分体以外は全て、徹底して調べられ、
挙句、大体全て消されたんだがね。
詳しい事は割愛するが、とある神の造った魔道具と神器に、この分体を忍ばせて、難を逃れたんだよ。
つまり、そもそも君達と闘うだけの能力も、残念ながら、今の我は持ち合わせてさえ居ないのさ。
どうだ、これで、我は君等と争う気が無いって、皆理解してくれたよね?
なので、敵対どころか、こちらと協力出来るのなら、
我は、全力で君達に協力したいくらいさ。
まず、我の望みは…
ヒルメを一回殺し、
後に復活させて、出来れば正気に、本来の姿に戻したいのだ。
次に、出来ればズク族と、同じく我の血を引く一部の魔族を、なんとか助けたい。
そして、我等の 理 を、正しき状態に、元の本来の在るべき形にしたいのだ…
だからそこの彼女?…そう、ヘンリエッタさん…
アナタの意見に、取引には、我も大賛成なのだよ。
我に闘える力が無い以上、最早誰かに頼らねばならないのは必然だろう。
つまり、我ヨミは、君【深淵の破壊神】…と、正式な取引がしたいのだ。
言って見れば、同盟だよ。
え?
ど、同盟だと?
この…噂の大悪党と?
一体、どうすれば良いんだよ?




