招かざる客1
余りの近距離で皆に囲まれてて、
ちょっと…いや、かなりビビった俺。
たまたま、俺の首から上が、別の世界に入ってただけ、
ただ、それだけなのに?
…そんなに珍しいもんかね?
え?…おかしいの?異常事態ですか?そうですか…
コホン、ま、まあ…それはそうと?
ミューさんの得た情報によると、ヨミって奴、今、通常の一割程度の力しか無い様ですね。
で、どうもマーオちゃんに封印した力が欲しい様です。
よって?
近い内に多分、向こうからノコノコやって来るのでは無いかと、
俺は睨んでますね。
一説によると、神族、しかも純血種のヨミって、
我々普通の人間の、なんと10倍の力だぉ?…
などと、言われてるそうですが…
問題は…その残ってる一割の力で、実際我等と、どの程度闘えるの?って事と、
恐らく…ヨミって奴は、自分が弱った状態のまま、
わざわざ真正面から来るような、バカ正直タイプでは無いって事ですよね…。
つまり…奴の卑怯な罠だのなんだの…の?
事前に対応策を用意しておくべきでは無いのか?と、
そう思うんですよ…
ですから、皆さんの意見を、是非お聞きしたいんです…と、
俺は、胡座をかいた膝の上にマーオちゃんを、そして頭の上にミューを乗せて、力説してみた。
まずはアマジャさんが。
現状、神様の【深淵】の入り口部が広がっており、
例えばミュー様が魔法で奴の動きを止めさえ出来れば、あとは神様に【深淵】に引きずり込んで頂けさえすれば、
恐らく神であるヨミであっても…消滅させる事が可能だと思われます。
ただ…奴もそれを知ってますから…恐らくそう簡単には、その姿を晒さないかと…
シレンさんが続く…
ミュー様の魔法はズク族にも問題無く効いていました。
しかも、かなりの広範囲版でしたからね、
ここを中心に、あの…ちょっと向こうの…
そう、あの一番近い岩の辺り位迄が、大体の効力範囲、
馬車を縦に並べて凡そ5台分程度…かと、
つまりは、かなり広い範囲ですね。
例えば、無理にどこか一箇所に誘い込まずとも、上手くミュー様寄りの、
馬車3台分位の範囲の場所に誘導出来れば、
嵌める事も割と容易、全然、可能だと思われますね。
そして、マーヤルさん…
聞く限り、あれは卑怯で狡猾です。
故に恐らく…人質を取って来るのが、一番可能性が高いでしょうな。
まあ、弱き者で…人質としての価値のある、私かエッタ殿辺りが、当然狙われるでしょうな…
さしあたり、私マーヤルが敵の手に有ったならば、どうぞ迷わず切り捨てて下さい。
そもそも、敵に捕らえられると言う段階で、
既に皆のお荷物ですよ、この老い先短い老人の為に、誰かが犠牲に等、決してなってはいけません。
神様、ミュー様は勿論ですが、お前達3人も、私の事は何も気にせず、さっさと見捨てなさい、良いですね…。
覚悟は良いけどさ…
無駄に、空気重くなったじゃんよ…お爺やん?
あ、そうそう、ここは切り替えて…
じゃあ…仮に、敵の大悪党になったつもりで、
親戚さん、ご意見お願いします!
え?…わた…大悪党のつもりで…ですか?
あ、じゃあ…
まずは、物理的に、或いは状況的に、
戦力がバラバラになる様な場所に誘い込みますか…ね。
例えばそう、奴の得意な暗闇…そうですね、狭くて暗い洞窟なんかどうでしょう?罠も仕掛け易いですし。
あとは、神様の優しさに付け込んで、
…さっきの村人の様な人質を取ったりとか…
エギーって結構、卑怯だよね…今直ぐにでも悪党に転職して活躍出来そうだよ。そう言ってシレンさんが笑った。
「五月蝿いわ、シレンよ…」
「所で…」
!!え?
皆驚愕し、一斉に一人の人物を見た。
それがまさかの!?…あの、エッタさんだったからだ。
「その…弱ってる神族のヨミって方と、無理に敵対せずに、むしろ取引きすれば良いんじゃないですか?」
…姫様の封印をといてくれたら、神様もミューさんも、ヨミを殺せるけど、殺さないから…って、約束して、
その代わりに、ヨミさんも、こっちは一切見逃す…とか?
譲歩案で、力の…最悪半分だけは返す代わりに、
今後こっちもヨミさんも、お互いに干渉しない…とか?
内容はもっと詰めて考えた方が良いと思うけれど、何も闘うだけが選択肢では、無いのではないかしら…
それに、狡猾で悪知恵の働くタイプなら特に、今無理に闘って力を奪うとか、きっとしないんじゃ無いですかねえ?…
しかも…こっちが弱るまでずっと付け回されたり、常に狙われるくらいならいっそ…
俺を含め、
みんなの、驚愕の表情が止まらない…
予想外の…なんなら斜め上からの目線、切り口の発言が、
超驚くよね?あの…エッタさんやで?
まさか、まさか、
あのいつもなら、気持ち良さげに、こっくりこっくりと、船を漕いでる、
あの、エッタさんやで?
しかも?…割と良い意見かも?…って、
一瞬思ったし。
仰る事には一理有ります…しかしですね、エッタ殿。
こちらが約束を守っても、アヤツが約束を守る保証が何処にも有りません。
いやむしろそもそも、信用等、決してしてはいけない様な相手ですよ?
マーヤルさんが、少し困った顔で言った。
…そ、そうですな、相手があの…ヨミですからな、仮に向こうが頭を下げたとしても、それを迂闊に信用など、できかねますよ…。親戚さんが続く。
そもそも?いや、今更なんですけど、
…そのヨミって奴、なんでそんなに弱ってるんですか?なんか、大失敗でも、やらかしたんですかね?
その、俺の質問にアマジャさんが答える。
それは…ですね、そもそも、この大戦の大きな原因がアーマとズク族の闘い、それが本来、本筋だった筈…
なのですが…
それ以前に実は、3兄弟の神…ヒルメ、ヨミ、サノーの、
仲間割れこそが、その原因、或いはこの戦争の発端だとの、有力な説が御座いまして…
この3兄弟がそれぞれ揉めに揉め、それが飛び火したと、言われてる様で、
その内輪揉めのせいで、ヨミは消滅し掛けたらしい…と、未確認ながら、一部ではそう言われておるようです。
実際、ある時期からヒルメの陣営に、常に一緒に居たヨミの姿が確認出来なくなっております。
…あ!、、、
へーなる程ね…
で、あんた今、
その兄弟喧嘩に勝つ為に?、
マーオちゃんの中の力が必要なんだな?…
ん?…なぜ今、神様は、あんた…と?
神様は何故、関係のない方向から視線を外さない?
何故だ、もっと強く…この【目】を凝らせ…!
何だ、何か?…一切気配は無いが、まさか…何か居るのか?
エッタ殿以外は、既にこの違和感に気付いた様だが…
あれ?
…アマジャさんにも見えませんか…ほら、あの…?
そう言って、神様は少し離れた岩の向こう側を指さした。
「いやいや、まさか…これだけの多重結界で隠れた、この我の姿が見えるんですか?
それは本当に恐れ入ったな…
おや、そうそう、ご挨拶が遅れてすまない、
初めまして、深き漆黒の闇の主よ?
我が名は、ツク=ヨミだ…」
その声に直ぐ様反応し、
アマジャさん以下3名の戦士が、
俺達の前に飛び出して、本気と書いてマジの戦闘態勢に入った。
ミューも既に俺の前で臨戦態勢だな。
だが…少なくとも、俺の膝の上にいる以上、
残念ながら、簡単にはマーオちゃんに指一歩触れさせんが?
俺はお爺やんとエッタさんを真横に呼び寄せると、
直ぐに【深淵の輪舞曲】を展開した。
おお…まさか、深淵の亀裂を使って?
…そんな芸当も出来るのか…いや困ったね、
それだともう、我は、触れることさえ叶わんよ。
その一言、声の発生源に向かって、親戚さんが、いつもと違うナイフ?
いや…何かが着いた杭を、ものすごい速さで投げた。
投げた杭が地面に突き刺さって、それについてた何か?が光った。
ぼんやりと…薄っすらとだが、
そこに、人型のシルエットが浮かび上がった。




