発見5
夜もすっかり更けて、皆も寝静まった頃。
夜の見張りをしていたアマジャさんが、急ぎ部屋の中へ入り…その直後、親戚さんとシレンさんを引き連れ、部屋を出て行った。
殆ど物音を立てる事もなく、まるで忍者の様な忍び足だった。
悪いな〜とは、常に思いつつも、いつもいつも、
つい…お言葉に甘え…まくって、惰眠を貪ってる俺、ですが…
深淵のヒビ割れを高速回転させる技の、カッコいい名前を考えていたから…
実はその時、何となくだが…俺は起きていたのだった。
もしも、これが敵の襲来とか…ならば、
もう早速の、
ローリングサンダーウルトラスーパー深淵バリア(仮)の…
え?か、仮だからね、あくまでも…仮、
いやその、実戦?お試しチャンスなのでは?
そう思って、意識のスイッチを入れ変え、誰も触れないモードになって、
で、俺の腹の上に居たミューをそのまま抱えて、静かにそっと表に出た。
さて、アマジャさんらは何処だ?
暗いけど、ミュー見えるか?
そうか流石だな、うむ、俺が育てたからな、知らんけど…。
よし、なら、案内を頼む。
隠れ家のすぐ近くに、3人は居た。どうやら戦闘では無く、話し合っているようだ。
俺の姿を見て、アマジャさんは、
「騒がしてしまいましたようで、申し訳御座いません…」そう言ったが、
「いやいや、たまたま目が開いてたんですよ?全然大丈夫ですよ。それより一体…?」
どうやら、あの殺人の容疑者(獣人)が目を覚まし、俺に会わせろと騒いでるらしい。
え?まさか…3人で、あの獣人、始末しちゃう感じでした?
「いえいえ…それは流石に、違いますよ」
「ただ、一応、用心の為に、2人を呼んだのですよ」
では、行きましょう!
え?…ダメですか?
だって…もう俺、触れないモードですし、逆に皆さんを守れるかも知れない、新必殺技も…
え?そういう問題では無いと?
しかも、ミューが居れば、あの、目の前の敵の動きを止めるやつ、魔法?、あれも出来るし…
いや…むしろね、実は俺が会って、話したいんですよ。
…え?それは何故かって、
あの獣人…悪党に操られてた訳でしょ?中に居た虫も、ミューが引きずり出したし…
今どんな様子か、ちょっと気になったんです。だって、あんなにボコられて、まだ生きてるだけでも、かなり凄く無いですか?
三人は暫く顔を見合わせて、そして、渋々了承してくれた。
別の木の上の隠れ家に、獣人は居た。
すっかり忘れていたが、そもそもミューの糸で、グルグル巻きだった…
獣人は、俺の顔を見るなり、簀巻きで転がったまま、俺に謝罪を始めた。
あの怪我で、たった数日寝ていただけなのに、随分回復していて、
かなり、びっくりしたが、
グルグル巻きで身体を固定してたのも、複数の骨折には、
実は、本人的にも、その方がかなり良かったらしい…
何でも元々、とっても強い魔力をお持ちだったようで、
身体を支配していた虫が死んで、それに魔力を奪われなくなったおかげで、そこからはもう、全力で回復に努めていたという。
「このような無様な格好で、本当に恐縮なのですが…操られていたとはいえ、先ずは…此度の件に付いて、貴方様に…心から深く、深く謝罪したく…」
「お?…おう」
我な名は、ベルゲ族のシャーナグの息子アーデと申します。貴方様は、【深淵の主様】と、お見受け致します。かつて、我が一族の祖らが、
貴方様の御慈悲を受け、お助け頂き、そして今も生き延びた、その一族の者で御座います。
その我が…身体も意識も奪われたとは言え…まさか一族の大恩を、仇で返して死ぬ等…とても受け入れ難い大失態で御座います。
謝罪の意で、死ぬ事は易いですが…
我は是が非でも、貴方様の為に…貴方様のお力に、成りとう御座います、さもなくば、我は、死んでも死に切れませぬ…
勿論、何を勝手なと…それはそれは、お怒りの事では有りましょうが…どうか…
いずれ、そう遠くないうちに…必ず貴方様の障害になり得るであろう、
あのヨミ神についても、我は色々とお役に立てる情報を、持っております。
我を信用など…出来ぬと…それは、もう当然で御座いましょう…
しかし、よりによって一族に大恩有る主様に対し、
我に弓を引かせたあの憎き者共、あれらは全て、我の、憎き、絶対の敵、仇で有ります。どうか、どう…「判った。良いよ」…か…?
え?今、なんと…
は?
いやいや…ちょっと…神様?…いや…幾ら何でも、流石に…
ええ?
良いんですか?しかも…二つ返事で?
本当に…?
三人は一斉に、俺に突っ込む、…いやまあ、普通そうだよね。
でも…さ、こんな強い人に、影からコソコソ狙われる位ならね、
もういっそ、目の前に置いといたほうが、良くね?
絶句し、固まる三人。
歓喜の表情で、じっとこちらを見つめる獣人さん…
なあミュー、お前はどう思う?
ミューは激しくぴょこぴょこしてる…ん?…OK?ああ、良いんだな。
そうか!…そういやお前も、あの変な虫に操られてたんだもんな、そりゃまあ、ご同輩って訳だな。気持ちも判るよ、ってもんか?
…っと、言う訳で?
えー、この獣人さん、えーっと、確かアーデさん…だっけ?俺とミューが身元保証人…と保証クモになりますんで、
御三人には、どうか御了承して…欲しいんですけど?…どうでしょうか?
ずっと絶句し固まっていたアマジャさんが、ようやく…
もの凄ーく、眉間にシワを寄せながら言った。
「おい、貴様…我らが神様の、その深き御慈悲に、深く深く、感謝しろ。
だがな…我等は簡単には獣人を信用出来ぬ。
故に、その行動をもって、自身で皆の信用を勝ち取れ…、そして万が一…もう一度でも神様に剣を向けてみろ、私が必ず、必ず貴様を殺すぞ…いいか、決して忘れるなよ…」
「うむ、先ずは【深淵の主様】、神様に、
絶対の忠誠を誓う。
そして…あんた達にも今、ここで誓う。我が一族の誇りと名誉に掛けて、そして我が名、アーデの名に掛けて…決して裏切る事など無いと、誓う…」
えー、話は…纏ったね?
じゃあ…朝までもう一回、寝ません?
え?
ああ…もう朝ですか、そうですか…




