発見1
行きの行程よりも、随分と時間が掛かってしまったが、
すっかりと日も暮れた19時過ぎくらいに、
ようやくギーロさんらの隠れ家まで戻れた。
道中で確保した獲物…食材を降ろし、今夜は俺が作るぜ?って流れになった
…ってか、したった。
そう、ミューと会話できる様になった記念&深淵の神の最後の地発見のお祝いだからね。
獣人達も見守る中、確保したデカいイノシシの解体をしようとして…
そうそう、ところでミュー、お前ってさ、普段何食うの?…肉?…まさか…野菜?
ミューは身体を左右に振ってる…あ、そう、違うのね。
「恐らく、血や、体液を吸うのだと思いますよ…」親戚さんが言った。
…ぴょこぴょこ、イエスだ。
え?そうなの?なる程…じゃあさ…、
このイノシシの血、全部飲んじゃっていいよ。どうせ俺達、血は使わないし、勿論飲まんからさ。
ぴょこぴょこしたミューが、イノシシの上に乗っかって、そして横腹に食い付いた。
…おお!吸ってる?吸ってるな。
どうだ、美味いか?遠慮すんなよ。たーんとお食べ…いや、飲みなさいね。
およそ5分位?で、ミューがイノシシから降りた。
ミューの腹回りがパンパンに膨れ上がってる。
それでは、捌きましょうかね、そう言ってアマジャさんと親戚さんが、二人で器用に解体していく。
「こりゃ凄いですね…体の中には殆ど血が…残ってないみたいですよ」
普通の血抜きでも、ここ迄は無理ですね…
これはもう匠の技かと…もう、これからは、是非とも、血抜きはミュー様にお願いしましょうか。
親戚さんがまるで称賛するようにミューを見ると、
ミューは嬉しそうに、上半身を反らしていた。多分、ドヤ顔的な?ポーズらしいな。ちょこっとかわちいぞ。
そして、
下味を付け、焼き始めた肉には…
喰らえ!伝家の宝刀、必殺カレーパウダー…唸るぜ…
もうね、漂う匂いが既にヤバいね…。
ぐううう…エッタさんの腹が大きく鳴った。
エッタさんは急に、横に居たシレンさんを大きく振り向いて、見つめた。
あの音は…
私じゃないですよ?お腹鳴ったの、コイツだよ…のポーズだな…
あのアマ、罪を…他人になすり付けやがった…恐ろしい。
でも…全員にバレてるんだが?
いい具合に焼けた端っこを、ちょと味見。
うん、素材の鮮度が良いのか、或いは血抜きが良かったのか?
今日はいつもより、肉の味がワンランク上がった気がする…
いつものメンツは、笑顔で、ただウンウン頷きながら食ってて、
あら、マーオちゃんも、いっぱい食べてねー、えらいねー、いーこ、いーこ。
え?
うわ…泣いてる、泣いてるやん、お爺ちゃん?
…まさか、美味すぎて泣いてるのか?
ヤバ、あとがちょっと怖い気がするんだが、
シレンさんも、かなりビックリしてるし。
どうよ、カレー味はさぞ美味かろう?
あ、ほら…獣人さんらの分も有るから、肉食?な、これ食べれる種族は、遠慮せずに食いなよ?
今日はお祝いだからね。
勿論、食後には、コーヒーも出しちゃうよね、もう、今日は大盤振る舞いだぜ!
食後…ずっと俺を拝んでるお爺は…、とりま一旦スルーして、
アマジャさんらと、今後の方針に付いて話し合った。
此方に向かって来るであろう、ミゲヤさんらと、何処かで安全に合流したいと、アマジャさん。
…確かに。そうだよな…ここって、少し道からそれた、
故人の個人…の、秘密の隠れ家だからなあ、
ミゲヤさん、ここ見つけられないかも。
まあ、凡その場所は、ミゲヤは【目】で追えますので、
あとは、こちらが分かり易い場所に居れば、大丈夫だと思います。と、親戚さん。
ただ…、唯一の懸念は、この結界を張ったであろうズク族…いやヨミ本人が、
恐らく、結界が破壊されてる事に気付いていると思われますので、
もしかすると、何らかの報復も…
そうだよな…俺、今、まだこれと言って、そいつらと闘えるだけの能力が、一切無いんですよね…
ヨミってのが、意外と話しの判る良いヤツ…とかなら良いんだけど、
話を聞く限り、間違いなく、とんだクソヤローって感じだしな。
まあ、取り敢えず…ばったりと会ったら、もう出たところ勝負になりそうだ…
ミューも居るし、俺が深淵に入れば、向こうは俺に手出し出来んだろうが…
皆はどうなる?
他が死んで、俺だけ助かるとか…
俺にそれは、もう充分間に合ってる。
でも、ミューはともかく、みんなが【深淵】に入るのは、余りにも危険だ。
あの…カエルの二の舞だけは、御免だしな。
アマジャさん、親戚さん、シレンさんが、地図を広げて、ルートを考えてる。
暇な俺も、もっと考える。考えよう。
でもなあ…俺って、攻撃手段の一つも無いのって…流石に辛いよな…?
せめて最低限、自分の身位は、自分で護れんと…マーオちゃんを護るなんて、絶対無理じゃん。
やっぱ、結界破壊したアレ…なんとか、ものにしたいよな…
よし、腹も膨れたし、実験再開だな。
んと、確か…、あの時…は?…えーー…と、どうしてたっけ?
ヒビ割れに…確か、片足をこー…ん?
お?…そうそう、この感じ、この感じ…で、
えーっと、ヒビ割れのフチ?の硬いところと、自分の足をリンクさせて…回して…動かす、と…
…あ、でけた。よし、一緒に動くぞ…
それを…思いっきり、せーのーで、で振ると…
あ…手応え、いや…足応えが有るぞ!
バキバキバキバキ…
え?、え?え?…うわ…わ?
どおおおおおおんっ、
うおお、ちょっとビビったが、こりゃ凄えな…
結構太い木を、なんと、真ん中でへし折ったんだが?
目一杯、力を入れてたって…感じでは…全然無いんだけどな…何だろ?
でも…
折れちゃったんだが?
これ…足じゃ無くて…手でも、いや、このバットでも…やれんじゃね?
あ、もの凄い形相でアマジャさんが、武器を構えて駆け寄って来る。
「今のは一体?…」
え?…その木ですか?あ、はい、俺がやりましたね…
いやー、なんかね…急に出来ちゃった?…的な?
黒石を吸収して広がった、【深淵】のヒビ割れの、フチの部分の妙な違和感、
…ここ…別に硬いって訳じゃ、無いんだ…でも、
あれ?…最初のヒビ穴のフチは、叩けるくらい、硬かった様な…?
うーん、これは…違うな、この広がったとこ…うーむ、何て言うのかな?…
あ!そうだ…アレだ。
オープンワールドのRPGゲームの…あれ、
マップの端っこの…
まだ先が見えてるのに、そっから前に進めなくなるやつ、
そう!あの…見えない壁、あれみたいだ…
この、変な違和感は、まるで大人の事情…的な?いや…
多分、異世界と【深淵】の都合?在り方…って言うのか、
力の作用と反作用?が、本来の在るべき力の流れが、…そこで
は無視される…?
ひょっとして…このヒビ割れんとこを境に…
力の流れが、絶対的な一方通行になってる…みたいな?ルールが、実は、有るんじゃ…
いや、そもそも有ったんじゃ無いのか?
そうか…
多分、俺は…
その見えない壁側からは、相手に干渉出来るのに…
向こう(相手)側は、それに触れられないし、
その…こっちからの圧力の流れには、
向こうからは一切逆らえないんだ!?
だから?…結界が一方的な外からの圧力に耐えきれず、ぶっ壊れたり…
根っこが固定されてる木が、一方的な力に逆らえず、
それで、途中で折れたんじゃね?
…知らんけど…。
だがしかし、
これは、割と画期的な発見でわ?
他にも、幾つか気付いた点が有ったが…
如何せん、悲しいかな、俺アホなんで、どうにも上手く纏まらん…
俺は、飲みかけの冷めたコーヒーを飲み干して、
アマジャさんにざっくりと、なんとなく?
今の現象?状況と、それに関する、俺なりの解釈を伝え、そして有識者の意見を求めた。




