Return to Myself 3
親戚さんが、持ってる投擲武器をガッツリ構えて、今にも投げそうだったその時、
ミューが、ちょっと前に飛び出して…
上半身?を少し持ち上げて、口から白い、霧状の何かを、大きくゆっくりと吐き出してた。
霧の様なそれは、俺達の少し前で、まるで、壁かスクリーンの様に展開したまま、
その場で?空中に留まっている。
なあミュー…これって、何?危ないヤツ?
ミューは身体を左右に振った…ノーだ。
…ん?じゃあ、黙って見とけって感じか?
上下の動き…イエスだ。
親戚さんはそれでも姿勢を変えず、アマジャさんは、少し立ち位置を変え、改めて、武器を構えた。
ゆっくり入ってきた二人は、初見だったが、
もうどう見ても、アマジャさん達と、似通った顔立ちと服装…間違い無い…
きっと、探してた2人だなって思った。
アレ…でも何だ?
こっちに気がついて無いぞ?見えてないのか?
アマジャさんが二人に声を掛けると…
「だ、誰だ!?何処に居る?」
護衛っぽい人が、何だか仰々しい武器を構えて、そして叫んだ。
どうやら驚いたのは、向こうの二人だったようだ。
どうやらこの霧の壁、なんと、後ろの俺達だけを見えなくする…言うなれば?人間だけ不可視化魔法?ステルスの霧の壁だった。
いや…何気に凄いね、ミューさん?
ミューはぴょんと飛び跳ねて、俺の背中に廻った。
続いて、親戚さんが、
「シレン…私だよ、エギラだ、間違っても、私にその武器は振るなよ…怒るぞ?」
俺が、
あの人達は、どうやら知り合いみたいだぞ、と言うと、
目が光って、ミューはその霧を、なんと一瞬で消し去ってた。
アマジャさんが、二人にゆっくりと歩み寄る。
「マーヤル様、私です、アマジャで御座います」
「おお?なんと、確かに…アマジャだな、久しいなアマジャよ…いや…それはそうと、はてさて、君が一体、何でここに?…そして、君の後ろの人らは?」
「おい、本当にエギーか?本人なら、名前を…真名を言ってみろ?」シレンがそう言っうと…
「良いのか?」親戚さんが一言、そう言った。
…お前、勿論最後までちゃんと聞くんだろうな、おい?…その目がそう言ってる様だ…
「あ、いや…判った、今日は辞めとくわ」そう言って、シレンが笑った。
随分前に出発したのに、俺達より後になったのは、
どうやらあの…俺がぶっ壊した結界が原因だったようで、
突然、結界が壊れてね、ようやく幻覚作用から解放されたよ、いやもうホントに参った、参った…
そう言ってマーヤルさんが俺を見ている。
姿勢を正して、アマジャさんが言う。
【使途】マーヤル、ご報告致します。
我等の後ろに居られます御方こそが…
我等一族が…【アザエル】が、千年の永きに渡って探し続けた、
【深淵の神】様で御座います。
「…え?…………今、なんと…」
マーヤルさんは、数秒固まっていたが、
アマジャさんの至って真面目な顔を見て、更に、黙って頷く親戚さんの顔を見て…遂に悟ったらしい…
直ぐ様、自身の身なりを整え、俺の前に跪いた。
「この私めが、とんだご無礼を致しました…、貴方様…【深淵の破壊神】様にお仕え致します、【使途】マーヤルで御座います、ご無礼をどうか、ひらに、ご容赦頂きたい…」
そして、持ってた杖で隣でボっ立している男の脚を、強くひっぱ叩いた。
おい、シレン、貴様何をしておる、不敬で有るぞ、
「え?…いや…あの?すいません…ええ?…?」
シレンも直ぐに、慌てて使徒さんの横に跪いた。
…は、拝謁、至極恐縮であります。
私めは【旅団】の一員、シレンで御座います。どうか、此度の非礼を、深くお詫び致します。大変申し訳御座いません…
「ああ…大丈夫ですよ、気にしていませんから、どうぞ、お顔を上げて下さい」
「只今、ご紹介にあずけまして…いや預かりました、私、柴 龍太郎と申します。どうぞ宜しく…」
マーヤルさんは大きく目を見開き、そしてその両の目から、涙が溢れた…
「よもや、この老い先短い老人が…まさか…生きてお会い出来るなどとは…
このマーヤル、最早思い残すことも御座い…」いや…ちょっと待って、待って下さい、
思い残して?ね、勝手に死なれたら、流石に俺も困りますよ~?
そうか、この人にとって、【深淵の神】は、特別の特別なんだろうな…
…何か…俺…如きで、メッチャ申し訳無いが…
例えば俺が、街角でアイドルや俳優さんにばったりってやつよりもっと遥かに?…
いや、ずっと、もっと神聖な、
恐らく、奇跡って感じ…なのかな…知らんけど…
おい、シレン…どうした?お前の会いたかった、【深淵の破壊神】様だぞ?
…いや、エギラよ、待ってくれ…これを驚くなって方が、無理だ…ろ?こんなの、余りに突然過ぎて…おかしいだろ?
そうだよ、少し前からずっと、魔道具が変だったから、
…だから、多分、間違い無く…そうなんだろうと、思ってたけど…
だって、いや、こんな事、実際初めてで…
一体全体、どう飲み込めば良いのか…
ははは、落ち着けよ、何も考える必要は無いのだぞ?…、
とにかく凄いのだ、我等の神様は。
良いか、特にカレ…おっと、フフ、お前には、まだ早いな…
そうそう、忘れんうちに先に言っとくが、
我等の神様は、魔蟲…いや神獣を使役なさっている。
しかも…驚くなよ?クモのキメラ種だからな。
ホントに神様に従順でな、
…嘘みたいだが、子守だってするんだぜ?嘘じゃ無いぞ、本当に本当。冗談じゃ無いんだよ、これが。
恐らく、知能は我等人間と、変わらないんだろう。
まあ正直、私はまだ、ちょっと怖いんだが…
言っておくがお前、調子に乗って、剣なんか、絶対に向けるなよ?
まあ、どう間違っても、逆立ちしようが何しようが、
俺達じゃ、どうにもならんだろうがな…
ん?どうしたシレン…
「大丈夫だエギー、私はもう絶対の忠誠を誓う、いや誓ったから…」
勿論神様に、
そして、当然キメラ種様にも…
キメラって…かつて一体で、幾つもの国を滅ぼしてたって言う…あれでしょ?
闘ってどうすんのよ?
私は下僕でも何でも、素直に受け入れるね、絶対に。




