暗闇7
俺達は移動を開始した。
幸か不幸か、向かう先が下り方面なのは何気に助かった。
来た直後は手ぶらだったんだけど、
今、ゴッツイ大きなカバンが有るからね。
こっちで、俺の唯一の大事な物だしな。
お持ちいたしましょうか、と言われたけれども、
そのアマジャさんも凄い大荷物背負ってるんのよ、年配やし、気〜遣うわっ。
丁重にお断りしといた。
夕焼けのオレンジが目に染みる…とか思ったのも束の間、
気づけばすっかり、月明かりだけが頼りの、薄暗い闇の中だ。
そこから更に1時間ちょい、えっちらおっちら移動して、ようやく少し開けた場所に出た。
これだけ森が深いのに、獣の声や姿は勿論、虫の声さえも無い、漂う死臭と合わせ、とても不気味だった。
やがて小さな集落に着いた。
ここでも戦闘が有った様で、家ってか、小屋?は、燃やされたり、破壊されている。そしてやっぱり多くの死体と死臭だ。
アマジャさんが背から荷物を降ろし、松明を取り出した。
手を翳し呪文?を唱えると火が着いた。
…うわ、使えるんや魔法…
「生き残りを探したいのですが…」
俺は静かに頷いた。
だが集落は酷い有様で、とても生存者が居るとは…
何て、言える訳がないので、一緒に探した。
転がってる仏さん数体に取り敢えず手を合わせた。
可哀想に、それは小さな子供だった。近くに親らしい死体が無い。迷子か、逃げ損なったのか、或いは捨てられた?…
手を取って脈をみるが、駄目だな。当然息も無いし死後硬直も解けてる。
俺はカバンを開けて、線香の束を取り出し、その一本に火を付けた。
子供の頭の近くの地面に刺して、もう一回手を合わせた。
少し離れた場所に居たアマジャさんが近づいて来た。
「今…何をなされたのでしょうか」
俺は答えた。
「ああ、ちょっとこの子らが不憫でね、線香供えたんだ」
こんなもんくらいで、この子らが浮かばれるとは、到底思えないが、
何時もの仕事のクセ、いや習慣?で、無意識でそれをやってた。
線香の火?勿論俺は100円ライターですけどね。
「それは、死者に供えるものでしょうか? この私めにお見せ頂いても宜しいでしょうか」
え、ああ、良いよ。っと、俺は線香に火を付けて一本渡した。
静かに立ち昇る煙に顔を近づけ、匂いを嗅ぐアマジャさん。
「良い香りがいたします」
死者が天に還る時にね、迷わないように、
この煙が道案内をするんだよ…(ってじいちゃんに聞いた)
「おお、何と慈悲深い…このような、小さき命まで…お救いに…」
急にアマジャさんがポロリと涙を流し小さく呟いた。
あれ?
…そう言えば、神は神でも確か、滅ぼす方だっけ?俺、
キャラ設定ミスった?やったか?
やってもうた、いや待て、落ち着け、俺。
内心結構焦ったが、その時、後ろで何かが倒れて、大きな音がした。
即、俺とアマジャさんが同時にそっちを見た。
誰か居るのか、無事なのか?っと、
慌てて叫びつつ、そこに駆け寄るアマジャさん。
倒れたのは壁と屋根の一部。
支えていた細い柱が燃えて、重さを支えきれなく無った様だ。
で、
それが倒れたお陰で?、
小屋と横の崖の隙間に小さな扉の抜け穴を見つけた。
アマジャさんが探していたのが、これを守る仲間、
ってか、この穴だった様だ。
近くに有った死体は、顔を確認できないくらいに焼けて酷い状態だったので仲間かどうか判らないそうだ。
アマジャさんは握っていた線香を、俺がした様に、
死体の頭の近くの地面に差して、手を合わせた。
そして、扉に手を掛けた。
「神よ、どうぞこちらで御座います」
天井が低いので注意しろよっと、心の中で自分言い聞かせつつ、
先に穴に入ったアマジャさんに続いた。
入口を数メートル進むと、中は小さな倉庫の様で、色々荷物が置かれていた。
カモフラージュかな?知らんけど…
奥の荷物の仕切りの板を動かすと、そこに階段が現れた。
狭く急な階段だ。
唯一の明かりがアマジャさんの松明、彼の背中の荷物のせいで影になる。
余りにも暗いし危ないんで、
俺はカバンからLEDの投光器を取り出しスイッチを入れた。
ピカーーーっと、
LEDの爆光が一気に階段を照らすと、
アマジャさんが大きく目を見開き、口をパクパクさせながら驚いていた。
「ひ、昼の太陽よりも明るい…」
…あ?ヤバっ、
俺、暗い側、ダークサイドな深淵の神だっけ?
明るいのって、NGですっけ?
…不味ったか?必死に言い訳を考えてたら、アマジャさんが言った。
「光が強ければ強い程、対なる暗闇も、また強く深い、
表裏一体…そう言う事で御座いますね…」
「え?…お、おう……え?」
拡大解釈?…乙。
階段踏み外すのが怖かったとか、余計な事言わんで良かった。
長い回り階段が終わり、今度は長い直線の廊下に出た。
そこには風が流れていた。
進むと広間…って程、大きく無い広間に出た。
広間の奥は壁がなく、外が見える。
どうやら崖の途中に貫通して、外と繋がる設計の様だな。
「こちらにお掛けくださいませ」
っと、案内された椅子に腰を降ろした。
座って辺りを見渡す。
その造りは、神殿って言うだけに、イメージ的にちょと教会っぽい。
ただ、豪華な彫刻も絵画も無い、良い言い方でシンプル。
悪く言うと殺風景…そんな場所だ。
アマジャさんは松明で壁の松明に火を付けた。
それで俺はLEDの照明を切った。
炎に揺らめく手彫りの岩肌は、厳かな雰囲気だ。
ここは?
っと、アマジャさんに質問した。
「我らの持つ、幾つかの神殿の一つで御座います、やがて来る暗黒の時代を終わらせる、我らの信じる唯一絶対の神…つまり、貴方様に祈る為の場所に御座います」
元々は違う神を祀る他所様の神殿で、いつしか放棄されてたとので、
<再利用した、と。
「そ、そうか…へえ…」
…素敵な場所ですね〜っとか言わんで良かった。




